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坂田 鋼治 院長の独自取材記事

彩り在宅クリニック

(都城市/都城駅)

最終更新日:2023/06/06

坂田鋼治院長 彩り在宅クリニック main

宮崎県都城市で自宅で療養をする患者に24時間365日体制で医療を届ける「彩り在宅クリニック」。大学病院などで循環器内科医として研鑽を積んできた坂田鋼治院長が2022年10月に開業したクリニックだ。標榜科目は、内科と循環器内科、緩和ケア内科。AIが搭載されたエコーなどの医療機器をそろえ、患者の自宅でも質の高い医療の提供をめざす。患者と家族の希望を第一に考え、寄り添い支えている。また三股町のホームクリニックみまたと連携するなど、医療者が働きやすい仕組みの構築にも取り組む。「患者と家族にとって、本当に良い医療を届けたい」と話す坂田院長に在宅医療に携わるきっかけになった出来事や医師としての思いを熱く語ってもらった。

(取材日2023年1月23日)

最後まで患者を支えられる医師でいたい

在宅医療をメインにされていると伺いました。

坂田鋼治院長 彩り在宅クリニック1

都城市と北諸県郡でご自宅で医療を受けたい方の診察をしています。この辺りは訪問看護ステーションはたくさんありスキルも高いのですが、在宅医療を行っている医師が少ないんですね。でも住み慣れた家で過ごしたいという方は多い。都城市は僕の地元でもありますし、自分も何かできないかと思い在宅医療に携わることを決めました。

以前は大学病院などで循環器内科医として手術もされていたのですね。

心臓カテーテル手術など、急性期の患者さんの診察をしていました。命に関わるような症状に対応することが多かったのでやりがいは感じていましたが、高齢で手術を受けることができない患者さんなどにも、最後まで医療を届けたいという気持ちが強くなっていきました。また、ずっと入院をしていた僕の同級生の最後の希望をかなえるために、仲間と支えたことも在宅医療に携わろうと決意したきっかけです。

どのような希望だったのですか。

坂田鋼治院長 彩り在宅クリニック2

お父さんと一緒に結婚式場で写真を撮りたいというものでした。病院もバックアップをしてくれたので何とか無事に撮影を終えました。その後、彼女と話をした時に本当は自宅で最後を過ごしたいと教えてくれました。ちょうど新型コロナウイルス感染症が流行中で、入院をしていると知人と面会がなかなかできない時期でした。ただ都城市には最後まで在宅で診てくれる医師がいないということで入院を続けていました。もちろん、病院でしかできない医療はあります。病院が必要であることは間違いないのですが、どうしても自宅がいいという方もいらっしゃいます。選択肢はたくさんあったほうが患者さんにとってはいい。それで、最後まで支えられる医師になりたいと思うようになったんです。同期の郡山晴喜先生が三股町で在宅医療をされていたので、相談をしたところ、それじゃあ連携して一緒にやっていこうという話になりました。

実際に働かれてどんなことを感じられましたか。

今までと違う知識が必要になるので大変でした。医療制度のみでなく、介護保健の知識が患者さんの生活に直結します。在宅医療に関わるさまざまなルールを詳細に知っておかないといけません。それを勉強するのは、楽しいですが大変です。でも、以前は手術をして症状が良くなれば患者さんとの関係は切れていたのですが、在宅医療はずっと責任を持って診ていくことになります。これから何年も関わっていく患者さんもいらっしゃると思いますので、新たなやりがいを感じています。

温かな彩りを多くの人が持てるように

すてきなクリニック名ですがどのような想いが込められているのでしょうか。

坂田鋼治院長 彩り在宅クリニック3

ありがとうございます。僕の好きな曲からつけました。訪問診療を通してたくさんの人が自分らしい彩りを保てるようにしていきたいという意味を込めています。患者さんはもちろん、そのご家族、そして当クリニックのスタッフも自分らしい彩りを大切にできる環境をつくりたいと思っています。自分は地域に対して素晴らしい仕事をしているという思いをスタッフが持ち、プライベートも充実していれば、気力に満ちて患者さんをよりサポートすることができます。まだまだ試行錯誤を重ねていますが、最終的にはそんなふうにできればいいなと思っています。

スタッフさんは何人いらっしゃるのですか。

看護師が1人、事務員が2人です。うち1人は今は在宅勤務をしています。在宅医療を希望されている患者さんの依頼の電話が病院からくるのですが、その調整などの応対や、その他自宅でできることをしてくれています。どの電話からかけても、当クリニックの電話番号からの発信になる電話環境のシステムを取り入れていますので、クリニック外でも電話応対ができるんです。そのようなシステムを取り入れて、なるべく省けるところは省き、大事なところに時間をかけられるようにしていきたいと思っています。忙しいなかでもどこかを短縮できれば、その分、患者さん一人ひとりにじっくりと関わることができたり、もっと多くの人に訪問診療を届けることができます。そうすると、もっともっと彩りも広がっていくと思うので、患者さんのためにもそうした仕組みを整えていければと思っています。

他に何か取り入れられているシステムはありますか。

坂田鋼治院長 彩り在宅クリニック4

先ほどお話をしました、三股町の同期の郡山先生と連携をして訪問診療を行っているので、カルテを共有できるものにしています。どちらのクリニックの患者さんから連絡があっても、すぐにどういう患者さんでどんな医療が必要か、というのがわかるようになっています。やっぱり医師一人で24時間365日体制を続けるのは大変なんですよね。医師はとてもやりがいのある仕事です。頑張りすぎて、過労で倒れてしまうこともあるくらいです。やりがいがある分、気をつけないといけない。自分達が倒れると患者さんにも迷惑がかかってしまうので、負担を軽くするために連携をしています。夜間や土日の待機を交代で対応しているので、先日は娘のピアノの発表会に行くことができました。

できるだけ近い位置で寄り添い、医療を提供していく

診察の際に心がけていることなどを教えてください。

坂田鋼治院長 彩り在宅クリニック5

大切にしているのは、患者さんの本当の思いです。基本的に医療は生きている時間をなるべく延ばそうとするものです。ただ、つらい治療もあるので、それが患者さんにとって本当にいいことなのかどうかは、ご本人でないとわかりません。だから患者さんとそのご家族とは、何度も何度も話をします。医療にはガイドラインがあり、どういう治療をするのがベストなのかが示されています。この医療のガイドラインをベースにしながらも在宅医療の場合はご本人とご家族の考えが一番のガイドラインだと思っていますので、ご自宅へ伺うたびに「どう思われますか」とお話をします。そんなふうにじっくりと向き合うことができるのが、在宅医療の魅力です。できるだけ家族に近い位置で、かつプロの医療者として、具体的なアドバイスをしていきたいです。ただ、ついつい話をしすぎて長引いてしまうことがあるので、気をつけようと思っています。

向き合うことを大切にされているのですね。

一番には彩りのある人生を過ごしていただくために、残された時間をどのように使っていただくのが良いのかを考えています。患者さんの希望はできるだけかなえてあげたい。だから希望を言われたら、できないことはないだろうという姿勢で対応をします。本音が聞けるよう、できるだけ患者さんに喋っていただくようにしています。ただ、本当はどうしたいのかということを考えていただくために、沈黙も必要だと思っています。すぐに答えが出ない場合もありますので、そういう時は「次回に教えてくださいね」と声をかけて、向き合う姿勢を伝えています。

最後に今後の展望をお聞かせください。

坂田鋼治院長 彩り在宅クリニック6

医療器具の進歩によって、訪問診療でも高度な医療が提供できるようになってきています。例えば当院では、AI技術を用いたタブレット型のエコーを導入しており、心臓超音波検査は病院と同程度の評価が在宅でも可能になりました。患者さんに有益なものは取り入れて、在宅でもより質の高い医療を提供していきたいと思っています。そのためには一緒に働いてくれる医師の力が必要です。僕は心臓内科が専門ですが、各科の専門の医師が集まれば、もっと質も上がりますし領域も広がっていきます。総合病院で勤務をしながら1日だけ在宅医療に関わったりする医師の働き方もありますので、少しでも在宅診療の経験があるという医師が増えれば、自宅で通院できずに困っている患者さんに必要な医療を届けることができます。患者さんとご家族の彩りのある生活をささえるために、より幅広い疾患に質の高い医療を提供できる体制をつくっていきたいと思ってます。

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