早期発見でリスクの軽減をめざす
胃がん予防のためのピロリ菌検査
白土クリニック
(横浜市港南区/上永谷駅)
最終更新日:2023/07/14


- 保険診療
肺がんや大腸がんと並んで罹患数・死亡者数が多いとされている胃がん。ピロリ菌の感染が原因で胃がんを発症するケースは一昔前よりも減ったと聞くが、「ピロリ菌を持っている」状態は一つのリスクであり、胃がん患者の予備軍なのだそう。「白土クリニック」の白土一人院長は、患者だけでなく自身も定期的に胃カメラ検査を実施。日本消化器病学会消化器病専門医としての経験も生かし、胃内視鏡検査などを通して胃がんとピロリ菌の早期発見をめざす。10年後、20年後も今と変わらない暮らしができるよう、胃がんの疑いがある人や過去に胃がんの手術を受けた人、そして家族に胃がんの罹患者がいる人にも検査を呼びかける白土院長。そこで胃がんについての基本的な知識から、同院の検査方法や感染防止のことまでいろいろと話を聞いた。
(取材日2023年7月3日)
目次
胃がん患者の多くはピロリ菌の保有者。健康な人と変わらない生活を送り続けるためにも年に一度の検査を
- Q胃がんについて詳しく教えてください。
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A
▲ピロリ菌を持っていることによるリスクを理解しよう
胃がんの原因には喫煙、塩分が多い食習慣、ピロリ菌の感染が挙げられます。さらに遺伝要因もあるとされているため健康的な生活を送っていても、家族歴がある方は注意が必要ですね。原因の一つであるピロリ菌に関してですが、不思議なことにピロリ菌は幼少期にしかうつりません。今は考えられないかもしれませんが、昔は井戸水などの不衛生な飲み物・食べ物を摂取したり、親が咀嚼したものを口移しでもらったりするのが主な感染経路でした。また、がんの死亡数を部位別に見ると、胃がんは男女ともに上位に入ります。40代以降は発症しやすくなるため、国も40歳からの胃がん検診を推奨しています。
- Qピロリ菌の感染によって胃がんになる原因を教えてください。
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A
▲がんを早期発見早期治療につなげるためにも検査をすることが大切
ピロリ菌に感染しても、全員が胃がんになるわけではありません。しかし、胃がん患者さんの9割以上の体内にはピロリ菌がいるという報告があります。つまり、胃がんになるときにはほぼ必ずピロリ菌が存在しているのです。幼少期に感染したピロリ菌が胃の中で長年悪さをし、40代くらいで慢性胃炎となって表面化し、やがて萎縮性胃炎、胃がんへと発展するのです。胃がんを発症10年後の生存率は約6割といわれていますが、早期発見・早期治療すれば普段どおりに生活することもできるので、医療機関での定期的な検査は非常に重要といえます。
- Qピロリ菌の検査にはどのようなものがありますか?
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A
▲定期的な検診を通してピロリ菌の検査の受診を推奨する
一般的には血中のピロリ菌IgG抗体を確認する血液検査、便に含まれるピロリ菌抗原を調べる便検査、容器に息を吐いて呼気を採取する尿素呼気試験、胃内視鏡検査の4つです。精度はいずれも同程度ですので、検診も利用してどれか一つ受けるだけでも意味があると考えています。ただ家族歴があり、ピロリ菌のいる可能性が高い方の検査結果が陰性だった場合は、2種類以上の検査を行うのが望ましいでしょう。また注意点として、ピロリ菌の検査は必要性を認められたケースのみ保険が適用されます。慢性胃炎や萎縮性胃炎が確認できない段階では自費扱いとなりますので、胃内視鏡検査でピロリ菌と病気の有無を調べるのがスムーズです。
- Q貴院でのピロリ菌検査の特徴を教えてください。
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A
▲患者の負担を軽減するためにさまざまな工夫をしている同院
当院では便検査と胃内視鏡検査でピロリ菌を調べています。胃内視鏡検査ではご希望に応じてうとうととした状態で検査を受けるために麻酔を用いることも可能です。検査ではひだや粘膜の状態を含め、所見の見逃しがないよう注意を払います。患者さんの親や兄弟にピロリ菌の感染者がいる場合はなおさらですね。一方、家族歴がなくてもピロリ菌の感染が発見された場合は、ご家族への検査の呼びかけも行います。兄弟間での感染は起こらなくても、生活環境が同じであれば感染の可能性は高まります。また当院では、ピロリ菌の除去は2次除菌まで対応しており、3次除菌やペニシリンアレルギーの方の治療は大学病院へご紹介も可能です。
- Q自身でできるピロリ菌の感染予防法はありますか?
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A
▲幼少期からピロリ菌感染を対策することが大事
自身の胃の中にピロリ菌がいるかどうかは、検査をしないとわかりません。昔よりも菌の保有率が減ってきているとはいえ、親が同じスプーンで子どもにご飯を食べさせたりすることで、いつの間にか感染しているケースはゼロではないと思います。そのため「乳幼児期にピロリ菌に感染させないこと」が根本的な解決策になりますね。しかし、それは時に親子間のスキンシップを妨げてしまいます。なので大人がピロリ菌に対する意識を持ち、出産の前後に確認・除去しておくのが良いでしょう。おじいちゃんやおばあちゃんにピロリ菌がいるならば子に検査を促し、孫にうつさないようにする。そして同時に、日本人が多く摂取しがちな塩分も控えましょう。