徳本 隆博 院長、篠木 聖徳 先生の独自取材記事
とくもとこもれびクリニック
(吹田市/江坂駅)
最終更新日:2025/04/09

どこからともなくアロマの香りが漂い、思わず深呼吸したくなる。そんな心地良い空間づくりにこだわる「とくもとこもれびクリニック」には、メンタルクリニックとして信頼を寄せる患者が集まる。「精神科だけではなく、実は内科もしっかり診療できるんです」と話すのは、徳本隆博院長。呼吸器内科医の篠木聖徳先生とともに訪問診療に取り組み、内科も含めてトータルで患者をサポートする。診療科の垣根を越えて総合的に診療することにこだわる徳本院長と、訪問診療で日々さまざまな患者に向き合う篠木先生に、同院の訪問診療の特徴や診療への思いを聞いた。
(取材日2025年2月26日)
木漏れ日のような温かい医療の提供をめざして開業
アロマの香りが心地良い、落ち着いた院内ですね。

【徳本院長】こもれびのように、木々の間から漏れる温かい光のような医療をめざしてクリニックをつくりました。当院にいる時間ぐらいはリラックスしてもらいたいと思い、プロジェクターで木漏れ日を投影し、アロマをたいて、皆が心地良く過ごせる空間をめざしました。周りの目を気にせず過ごせるよう、待合室には1人ずつパーティションで区切った座席も用意しています。精神科というカテゴリー上、あまり人に見られたくない方もいらっしゃると思うので、駅に近すぎず、かといって離れすぎず、2階で診療できる立地にもこだわりました。江坂を選んだのは、ビジネス街で若い方が多い一方、もともと住んでいるご高齢の方も多く、たくさんの方の力になれると思ったからです。ありがたいことに患者さんがクチコミで広めてくださり、今では10代半ばから40代の若い方を中心に、多くの方に通院いただいています。
こちらではどんなことを診てもらえるのでしょうか?
【徳本院長】外来では、心療内科と精神科を診療しています。長年、精神科救急に勤めてきた経験から、幻覚妄想状態などの激しい精神症状がある重症の方も含めて対応できる点が強みですね。精神科の患者さんの中には、外出が難しい方もいらっしゃいます。そういった方に対しては、訪問診療も行っています。引きこもりの方や、家庭内暴力に悩む方など、市役所からご相談をいただいて治療に伺うこともありますね。
【篠木先生】訪問診療では、内科も対応しています。徳本院長は泌尿器科から精神科にキャリアチェンジしているので、精神科に加えて一般内科と泌尿器科も診療できるんです。私は呼吸器内科を専門としていますから、内科をメインに、がん患者さんの終末期医療なども担当しています。
メンタルクリニックとしてのこちらの特徴を教えてください。

【徳本院長】できるだけ副作用が少なく依存しにくい薬を使って治療を進めるところが当院の特徴です。精神科の受診を検討される方が一番心配していることは、薬への依存ではないでしょうか。薬に対してマイナスイメージを持っている方も多いため、できるだけ日常生活に支障がないよう、例えば眠気が生じる場合があり生活の負担になるようなお薬は避けるなど、治療薬の選択にこだわっています。薬を使うのが怖いと感じている方には、薬物療法は有用だということをできるだけ丁寧にお伝えするよう意識していますね。患者さんがご自宅で一般的な生活を送れる状態になれるようにお手伝いをするのが、私たちの仕事です。
通院が難しい患者をトータルケアする訪問診療
訪問診療では、内科にも注力しているそうですね。

【徳本院長】患者さんは精神科の病気だけを抱えているわけではないため、精神科では診きれず、科をまたいで受診しなければならない方もいらっしゃるんです。さまざまな科をカバーすることで、通院ができない方に対してトータルな医療を提供したいという思いから、内科訪問診療にも注力しています。私はもともと、幅広い診療を行うホームドクターをめざしていたので、訪問診療では内科も含めてトータルで患者さんをケアしたいと思っています。
【篠木先生】当院はメンタルクリニックのイメージが強いかもしれませんが、私は日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医、日本内科学会総合内科専門医の資格を持っています。内科をしっかりと診療できる医師がいますので、メンタル面だけでなく、内科の悩み事でも頼っていただきたいですね。
内科訪問診療では、どんなことを診てもらえるのでしょうか?
【篠木先生】40代からご高齢の方を中心に、初期から末期までさまざまな症状の患者さんを幅広く診療しています。患者さんやご家族がお困りの症状に一つ一つ対応していくイメージですね。呼吸器管理や、がん患者さんの疼痛コントロールといった緩和ケア、睡眠時無呼吸症候群、抗生剤を使用した治療、リウマチ患者さんの薬剤調整、難病の診断なども行っています。必要に応じて訪問看護ステーションやさまざまな病院と連携しています。私は精神や神経の分野には少し弱いのですが、泌尿器系の疾患は徳本院長にお願いするなど、医師間で協力し合い、補完し合って診察にあたっています。
お二人の連携も重要になってきそうですね。

【篠木先生】そうですね。医療用コミュニケーションツールを積極的に使い、徳本院長はもちろん、提携先とも常に情報共有をしています。医師には言いづらいけど看護師には言いやすいこともあると思うので、電子媒体を活用して意思の疎通を図りながら、患者さんやご家族の意思を常に確認するよう意識しています。
【徳本院長】訪問看護ステーションをつくったのは、医師が動くだけでは十分なサポートが難しいと感じたからです。医師がいない間も患者さんとご家族の生活は続いていきますから、看護ケアが不十分であるとどうしても満足したケアが行えないんです。医師の訪問時以外でも、いつでも日常生活をしっかりと送れるようにトータルでサポートしたい。その思いから、医療と看護の両面で患者さんとご家族に寄り添っていきます。
目標は、どんな患者にも医療を提供できる環境づくり
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?

【篠木先生】症状を聞くのはもちろんですが、「五快」といって、ちゃんとご飯を食べられているか、よく眠れているか、便秘がちじゃないか、下痢気味じゃないか、体重の増減はないか、活動量は落ちていないかを事前に確認することを心がけています。事前に情報収集をし、体の不自由がないかどうかをあらかじめ吸い上げておいて、訪問当日はじっくりとお話をするスタイルを取っています。
【徳本院長】できるだけ患者さんの目を見ながら、言語外の情報を集めて診療するよう心がけています。そのため、下を向いてパソコンをにらみながら行う診療をできるだけ少なくするように、カルテ自動作成システムAIシュライバーを取り入れました。患者さんの訴えとは違う病気が隠れていることも多いので、丁寧にお話を伺い、本当の原因は何なのかを探っていくことも意識していますね。
診療のモットーは何ですか?
【徳本院長】患者さん一人ひとりに合ったオーダーメイドの治療を行うことです。既製服と同じで、画一的な治療ではどこかつらいところが出てきてしまうため、患者さんが心地良く過ごせるようにその方に合った医療を追求しています。そういう意味でも、今後は終末期医療に力を入れていきたいですね。終末期ともなると、せん妄を起こしていたり痛みがひどかったりと、心も体もすごく大変な方が多いんです。ご自宅で最期を迎えたいという方が、できるだけ安らかに最期の時間を迎えられるようにお手伝いしたいと強く思っています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

【徳本院長】在宅では診きれない方も本当の意味でトータルで診ていけるように、北摂で関連施設を増やして、どんなフェーズでも患者さんに対して医療を提供し続けられる環境をつくりたいと思っています。例えば、医療特化型のサービスつき高齢者向け住宅やグループホーム、デイケア施設をつくって、介護も含めて自分たちの手でケアできると良いですね。内科医ももっと充実させて、篠木先生と一緒に外来も始めたいと思っています。外来と訪問診療の双方から総合的な視点で診療できるような形をつくろうと、構想を練っているところです。
【篠木先生】総合内科専門医として、さまざまな診療をもっと奥深く提供していけたらと思っています。何かお困りの症状があれば、一緒に考えて治療法を探っていきますので、まずは一度ご相談ください。