原田 竜也 院長の独自取材記事
メディカルパークベイフロント横浜
(横浜市西区/横浜駅)
最終更新日:2024/06/18
横浜駅東口から徒歩2分の立地で、不妊診療を専門とする「メディカルパークベイフロント横浜」。2023年に院長に就任した原田竜也先生は、東京医科歯科大学出身の日本生殖医学会生殖医療専門医で、数多くの生殖医療に取り組んできた不妊治療に精通する医師だ。同院では、患者の年齢や不妊の原因、患者を取り巻く背景などに配慮して、一人ひとりに合わせたテーラーメイドの治療を心がける。「不妊で悩まれてきた方が笑顔で卒業できるように、スタッフ一丸となってサポートしたいと考えています」と語る原田院長。豊富な経験を生かした診療や、気さくな語り口で多くの患者が頼りにする、そんな原田院長に、同院の特徴や、受けられる治療について聞いた。
(取材日2024年4月9日)
患者の状況や背景に適したテーラーメイドの治療を提供
こちらは不妊治療に特化したクリニックとのことですね。
はい。体外受精を含めた不妊治療の提供をメインに、不妊に関係する婦人科疾患のセカンドオピニオンや、ブライダルチェックにも対応しています。不妊治療では、不妊症・不育症検査、タイミング療法・人工授精といった一般不妊治療から、体外受精・顕微授精による高度生殖医療まで行います。子宮鏡検査や子宮内膜組織の検査により、積極的に着床障害の原因検索とそれに対する治療を行っているのも特徴です。子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの手術を必要とする方には、本院であるメディカルパーク湘南と連携して治療を行います。働いている方も通院しやすいクリニックをめざし、最終受付時間を18時30分としています。17時以降にも患者さんがたくさんいらっしゃいますね。
不妊治療の流れを教えてください。
まずは不妊症の三大因子である排卵因子、男性因子、卵管因子の他に、免疫因子や子宮因子について検査を行います。その後、患者さんの年齢や不妊の原因にもよりますが、タイミング指導、人工授精、体外受精へとステップアップしていきます。一般的には1年以内に体外受精へ進みますが、35歳以上の方や、卵巣機能検査の数値が低い場合には半年以内に体外受精を行うことが多いです。また、通常の体外受精で受精が成立しない場合には顕微授精も行っています。さらに、思うように採卵できない、体外受精を行っても胚(受精卵)がうまく育たないというような場合には、自然周期採卵を含めた刺激方法の変更などを提案することもあります。
どうして生殖医療の道に進まれたのですか。
もともと外科系診療科を志していたのですが、内科、外科も含めてすべて診ることができ、科内で完結できるというところに魅力を感じて産婦人科に進みました。周産期医療や腫瘍の治療にもかなり携わりましたが、母校の東京医科歯科大学では生殖医療に実績があり、私自身、顕微鏡を扱うのが好きで、この分野に向いているのではないかと考えるようになり、約25年にわたり生殖医療を中心に患者さんと向き合ってきました。生殖医療は、人工授精などの一般不妊治療から体外受精・顕微授精という高度生殖医療、さらには腹腔鏡や子宮鏡による低侵襲な手技による手術療法など多岐にわたります。一方で「こうすれば妊娠する」という明確な治療法が存在するわけではありません。そのため、いかに妊娠する確率を上げていけるかが重要であり、患者さんそれぞれにとっての有用性とご負担を考慮した上で適切な医療を提供したいと考えて取り組んできました。
先進の診療技術と多職種によるチーム医療
培養士も在籍していると聞きました。
そうなんです。培養士は患者さんの精子や卵、胚をお預かりし、精液検査・人工授精・体外受精・顕微授精・胚移植などを行います。当院には、経験豊富な培養士が専属で在籍し、培養士が患者さんに体外受精について説明したり、卵子の状態を見極めた上で次回の受精方法などの相談に応じたりしています。また、培養士の協力を得て、受精障害、胚の分割不良などの難治性の不妊症にもアプローチしています。
先進の機器も導入されているそうですね。
卵子は温度による影響を受けやすく、温度が下がってしまうと発育自体にダメージを与えかねません。そこで当院では、作業台(クリーンベンチ)と一体化された新型の培養器を導入し、採卵後すぐに安定した環境下に卵子を格納するための環境を整えました。さらに、受精卵を培養器外に出さずに観察することが可能な、タイムラプスインキュベーターを導入しており、より良い胚発育環境を提供させていただいております。その他、卵子の負荷を極力抑えて卵子に精子を注入するピエゾ素子による顕微授精など、先進の機器や方法を取り入れて妊娠をサポートしています。また、培養室の窓にはミラーフィルムを貼り、待合スペースから中がうっすらと見えるようにしています。培養室は密室で「何をしているのかわからない」というイメージもあるかと思いますが、作業の様子や培養士の顔を「見える化」することで患者さんの安心感につなげています。
診療する上で、どのようなことを大切にされていますか。
生殖医療は、がん治療などとは異なり、命に関わるものではありません。基本的に患者さん自身が、お子さんを望まれているのが前提で行われます。ですから患者さんの気持ちが重要であり、また不妊に至る原因や取り巻く環境に合わせて、一人ひとりに合わせた治療方針を立てていくテーラーメイドの医療が求められます。エビデンスに基づく良質な医療を提供するのはもちろんですが、カップルそれぞれの背景や治療に対する考え方が異なることも踏まえ、それぞれに合った治療を一緒に考えていきたいと思っています。患者さんと接する時にも画一的な対応ではなく、それぞれの患者さんに寄り添ったきめ細かな対応を心がけています。治療の選択にあたっても、医療者側からリードされたいのか、ご自分たちで判断したいのか、それを見極めることも必要なんですね。スタッフにも患者さんそれぞれに心を配った対応に努めてほしいと伝えています。
笑顔の卒業をめざし、患者一人ひとりに寄り添う対応を
ところで、不妊治療が保険適用になったことによる変化はありますか。
保険適用になって、比較的若い方が積極的に不妊治療を受けられるようになりました。治療が受けやすくなったのは良いことですね。ただ、若い世代の人口そのものが減っていますから、極端に増えることはないかなと思います。若い方が早めに不妊治療に取り組まれて、お子さんを持つ機会が増えていけば、少子化問題にも寄与していくかなとは期待しています。課題は保険診療と自由診療の混合診療が認められていないため、先進医療に認められていない治療を受ける場合は、保険適用になる標準医療まで全額自己負担になること。もちろん、私たちも事前にしっかりご説明していますが、より高度な治療を希望される場合は自由診療になることもあるとご理解いただければと思います。
今後の展望について聞かせてください。
まずは、今手がけている一つ一つの治療を充実させていくことと、先進医療を積極的に実施できるように環境などを整備していくことに尽力したいです。例えば、体外受精によって得られた胚の染色体を移植する前に事前に調べる検査である「着床前胚異数性検査(PGT-A)」なども実施できるように、準備を進めているところです。また長年生殖医療に取り組んできた医師として、後進の指導は重要なものだと思っていますし、新たな治療方法の開発も視野に入れています。しっかりとしたエビデンスのある治療方法を構築していくことは容易なことではありませんが、われわれに課せられた役割だと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
子どもを授かりたいという気持ちは同じでも、年齢の要因も含めて不妊の原因はさまざまで、アプローチ方法は多岐にわたります。当院では患者さん一人ひとりに寄り添い、テーラーメイドの生殖医療を提供できるよう努めています。しっかりとしたエビデンスに基づいた医療を心がけ、その方に合わせた治療計画を提案します。できればカップルでの来院が望ましいのですが、まずはお一人でも構いません。不妊治療となるとハードルの高さを感じる方も多いと思いますが、当院には妊娠や不妊に関する医療知識と心理的なサポートなどを学んだ看護師や胚培養士が在籍しており、相談しやすい環境を整えています。多くの患者さんが笑顔で卒業できるように、スタッフ一丸となってサポートさせていただきますので、お子さんを望む方は早めにぜひご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは卵子凍結/卵子1個あたり 3万3000円(上限 16万5000円)、PGT-A/8万円