三島 渉 理事長の独自取材記事
横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック
(横浜市南区/弘明寺駅)
最終更新日:2024/10/11

京浜急行本線弘明寺駅より徒歩3分の「横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック」。理事長の三島渉先生は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)を専門とする医師。県外からも患者が訪れるため通院者の負担を少しでも軽減したいと、2019年8月に駅から近い現在の場所に移転した。静かな口調で、ゆっくりとわかりやすく会話を進める、優しい印象の三島先生だが、「咳についての診断には自信があります。早期発見のためにも、ぜひお越しください」と力強く語り、医療への熱意と患者への思いが伝わってくる。そんな三島先生に、医師をめざしたきっかけから将来の展望まで、詳しく話を聞いた。
(取材日2019年10月9日/情報更新日2024年8月9日)
咳の続く患者もじっくり診察し適した診断と治療へ
クリニックには咳で困っている患者さんが、多く来院されるそうですね。

そうですね。もともとは喘息やCOPDと呼ばれる慢性閉塞性肺疾患を中心とした呼吸器疾患の診療が中心でしたが、最近では咳が長く続いて治まらないという患者さんも多く診ています。おかげさまで近隣だけでなく、電車で県外からお越しになる方もいるので、通いやすいように駅から近い場所に移転しました。診察室も増えたので最大4診が可能になり、より多くの患者さんを診られるようになりました。
喘息やCOPDと診断するために、どのような診察を行うのでしょう。
長年の経験を生かした問診の他、専門的な検査を行います。当院では、呼気中の一酸化炭素の割合を測り喘息患者特有の気管支の炎症を確認する「呼気NO検査」、気管支喘息やCOPDの診断・治療効果の評価のための「モストグラフ検査」などが行えます。こういった検査をすることで、咳の原因となる病気の判明に役立てています。さまざまな検査機器を用意し、原因不明の咳が続き困っている患者さんをどんどん受け入れ、喘息か、COPDか、肺がんかという診断を、迅速かつ正確につけることが大切だと思っています。
喘息やCOPDの治療は、どのように進めるのですか。

現在の医療では、喘息やCOPDが完治する治療法はありません。ですので症状を抑え出にくくすることが治療の目的になります。できるだけ早く治療を始めることで重症化を防ぐのです。ですから、まずは早期発見をすること。そして診断がついた後には、その段階に合わせてお薬をきちんと服用し続けることが重要です。一生付き合っていく病気ですので、患者さんご自身にどういう病気なのかということを理解していただいて、その手助けをしていきたいと考えています。いずれにせよ咳が続いていれば、ご相談いただければと思います。
重症化を防ぐ早期診療に携わるため、開院を決意
先生は、なぜ医師をめざし、呼吸器を専門にしたのでしょうか。

私は、口蓋裂という先天性異常を持って生まれてきたため、乳児期は入退院を繰り返し手術も受けたそうです。私自身も幼稚園に入園する前に入院していた記憶がありますが、そのような中、先生方や看護師さんなど病院のスタッフの皆さんが非常に良くしてくださったことが印象に残っています。ですから医療に対する感謝の気持ちが自然に生まれ、自分が医師としてお返しができるようになりたいと思うようになりました。呼吸器内科を選んだのは、咳の患者さんの数がとても多いのに対し、呼吸器内科を専門とする医師が少なかったからです。なるべく貢献度の高い分野に進みたいと思い、今に至っています。
開院されたのは、どのような理由からですか。経緯も含めて教えてください。
横浜市立大学医学部を卒業後は横浜市立大学附属病院で、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科など、各専門分野について研修を受けました。その後、三浦市立病院や横浜船員保険病院の呼吸器内科に勤務していたのですが、こういった大きい病院では、多くの患者さんが病気が重症化してから受診されます。「もっと軽症の段階から治療ができればよかったのに」と感じることが、しばしばありました。そこで考えたのが「早期からの診療に携われるのは、患者さんが第一段階として訪れる開業医ではないか」ということでした。それが開院を決意した理由です。
診察に際して心がけていることを教えてください。

患者さんやそのご家族に、わかりやすく、しっかりとご説明することです。例えば、治療を始めてしばらくして症状が落ち着いてきたとしても、出された分のお薬は飲み続けてくださいねと言ったり。症状が出なくなったとしても治ったわけではないので、そのようにお伝えしています。高血圧や糖尿病も一緒ですね。症状が出なくても、薬は飲み続けたほうがいい。喘息やCOPD、生活習慣病においては、症状をコントロールすることが重要です。患者さんにそれを理解していただくために、看護師や他のスタッフからもお伝えするようにして、ご自身の意志で薬の服用や生活習慣などを守り、前向きに治療を乗り越えていただけるように努めています。
病気にならないための医療知識をわかりやすく伝えたい
力を入れている治療について、教えていただけますか。

喘息の治療はもちろんですが、治療の一環として喘息をはじめとした慢性疾患の患者さんに、1ヵ月に1回、栄養カウンセリングを行い、アドバイスをしています。具体的には管理栄養士による栄養指導です。呼吸器を専門にしながら栄養に着目したのは、あらゆる病気はその人の生活スタイルや食生活などの生活習慣に問題があって発症すると考えているからです。生活習慣により体に生理的なダメージを引き起こすと、細胞や臓器などの体内システムが本来持っている機能を発揮しにくい状態になり、結果として喘息や生活習慣病の症状として表れやすくなるのです。一般的には知られていませんが、肥満気味の方は喘息がひどくなりやすいともいわれています。ところがそういう方に「痩せてください」と言う医師は、ほとんどいません。当院では、表面化している症状に対する治療だけではなく、体の機能不全や生理的なダメージにもアプローチしていきたいと考えています。
ご自身の健康管理のためには、どのようなことを実践されていますか?
もちろん食生活には気を配っていますよ。食べることが好きなのですが太りやすい体質なので、学生時代よりずいぶん体重が増えた時期もあったんです。そんな頃、栄養学に興味を持ち、学ぶ機会があって、それが当院で行っている栄養カウンセリングにもつながっているのですが、食生活を大いに見直しました。栄養バランスを考え、サプリメントを取るなどしています。健康管理をすることでベストな体重になっただけでなく、長時間働いても疲れにくくなったように感じます。私自身が真剣に食生活に向き合ったからこそ、患者さんのお話にも共感できるのではないかと思っています。
では、これから取り組みたいことや、クリニックの展望をお聞かせください。

喘息の患者さんがとても多いので、今後も喘息の診療には注力していきます。また、先ほど申し上げたとおり、管理栄養士による栄養指導を中心に、食生活改善のアドバイスもさせていただきたいです。喘息は気道に炎症が起こる病気ですが、体に炎症が起こる一因に食生活をはじめとする生活習慣があると考えられますから、栄養学の観点からもお力になれればと思っています。体に良くないものを食べ続けたり、必要な栄養素を十分に摂取できていなかったりすると、免疫機能の低下や体調不良を招くでしょう。その蓄積の結果、喘息や糖尿病のような大きな慢性疾患を発症・悪化させるリスクが高まるのです。日本呼吸器学会呼吸器専門医として、症状を緩和するための治療をすることはもちろん、食事のアドバイスも一緒に行うことで、病気と付き合っていかなければならない患者さんに寄り添っていく所存です。お一人お一人に合ったアドバイスをしますので、ご相談ください。