心血管疾患の悪化、再発予防につなげる
心臓リハビリテーション
上町はまのクリニック
(大阪市中央区/谷町四丁目駅)
最終更新日:2024/02/14


- 保険診療
心血管疾患の悪化の抑制と、再発リスク軽減に有用と期待されている心臓リハビリテーション。しかし、心臓が悪いのに運動してもいいのだろうかと不安に思う人は多いかもしれない。「上町はまのクリニック」の濱野剛院長によると、心臓や体力への不安から安静にしすぎると、筋力やQOLの大幅な低下を招くことにもなりかねないそう。循環器内科や患者を全人的に見る総合診療の研鑽を積み、運動療法にも詳しい濱野院長は、クリニックに心臓リハビリテーション室や疾病予防運動施設を併設して疾病管理や予防にも努める。また、病気や運動に関するイベントを開催し、地域のコミュニティーづくりにも一役買っている。今回は、より良い生活を送るためにはどんな運動療法が必要なのかや、心臓リハビリテーションの具体的な流れについて濱野院長に聞いた。
(取材日2024年1月26日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q心臓リハビリテーションの対象はどのような病気の人ですか?
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A
心臓リハビリテーションは、心血管疾患を持つ方々に対する運動療法および生活習慣病指導を中心とした非薬物的療法です。対象となるのは、急性心筋梗塞・慢性心不全・狭心症などの心疾患の方や心臓手術直後の方、加えて大動脈解離や大動脈瘤大血管手術後などの血管疾患の方です。また、心臓から離れていますが、下肢閉塞性動脈硬化症の方も保険適用でリハビリテーションを受けることができます。心臓リハビリテーションを継続することによって、心血管疾患の悪化の抑制などが期待できることが知られていますが、まだ一般に普及して実施されていません。
- Qリハビリテーションの内容はどのように決めるのでしょうか?
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A
医師が心臓の状態を血液検査や心臓エコーで見極めた後、理学療法士や看護師の指導のもと、どの程度の心肺機能や筋力があるかを測定する心肺運動負荷試験を実施します。患者さんはマスクと心電図計を装着して自転車をこぐだけです。徐々に負荷を上げて「楽にできる」「苦しい」の境目を把握します。測定したデータと体感する苦しさを考慮し、医師の監修のもと一人ひとりの病態や体力に合わせて安全に運動するためのメニューを作成します。当院では、定期的に通院して筋力トレーニングや有酸素運動のプログラムを継続的に実施していただき、心血管疾患に罹患した後の社会復帰や日常生活の改善をめざします。
- Q心臓リハビリテーションの重要性やメリットを教えてください。
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A
心臓リハビリテーションのメリットは、加齢とともに進行する心血管疾患の悪化を抑制することが期待できたり、心不全による再入院のリスク軽減に役立つことです。また、心疾患への不安から運動を控えてばかりいると筋肉が衰え、健康な状態と要介護状態の中間段階とされる「フレイル」と呼ばれる状態になりやすくなります。これは心身両面の衰えを抱えやすいため、体だけが問題となるだけでなく、気分も沈みがちになります。定期的に受診することによって薬の調整や日々の生活へのアドバイスも細かく受けられますので、心疾患の再発予防だけでなく、より良い暮らしのためにも大きな意味があるのではないかと考えています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診・検査
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まずは医学的な評価を行うための問診・検査を受ける。問診ではこれまでの治療歴や症状について詳しく伝える。その後、心臓を含む全身の状態を確認するために、血液検査やエックス線撮影、心臓の超音波検査が行われる。
- 2心肺運動負荷試験を受ける
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心臓リハビリテーションが必要だと診断されたら、心肺運動負荷試験を受ける。理学療法士の立ち会いのもと、検査用マスクを装着し、自転車をこぎながら血圧や心電図、呼気ガスを計測し分析を行う。計測中は徐々に運動強度が上がるが、苦しさが出ればクールダウンする。
- 3検査結果の報告、リハビリテーションメニューの提示
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医師から現在の体の状態や、検査結果に基づいたリハビリテーションメニューについて詳しい説明を聞く。併せて、日常生活における注意点や改善点について、運動だけでなく、食生活についてもアドバイスを受ける。不安や疑問があれば、遠慮せずなんでも気軽に聞こう。
- 4心臓リハビリテーション開始
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1回1時間程度、週1〜2回を目安にリハビリテーションをスタート。期間は150日間が標準だそう。リハビリテーション室で健康状態をチェックし、理学療法士の指導のもと適切な強度の運動を行う。トレーニング時には医師との面談もあり、心身状態の確認を受ける。心臓リハビリテーションは保険が適用される。
- 5再評価
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リハビリテーションの継続によって、筋力や体力が変化したかどうかを確認するために体力・心肺機能の再評価を行う。再評価は今後のリハビリテーションにおける適切な負荷を知るという重要な目的もあり、評価の内容に合わせたメニューの見直しが行われる。また、リハビリテーション期間終了後も、再発予防をめざし、運動習慣を維持するためのサポートが受けられる。