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舘 奈保子 院長の独自取材記事

たち眼科 富山駅前アイクリニック

(富山市/富山駅)

最終更新日:2022/09/28

舘奈保子院長 たち眼科 富山駅前アイクリニック main

富山駅の目の前、CiCビル2階に2021年に開院した「たち眼科 富山駅前アイクリニック」。さまざまな検査機械を導入し、オペ室もあるため、幅広い眼科治療や手術を受けることができる。舘奈保子(たち・なおこ)院長の診療日には、診療開始1時間前から患者が並び、30人ほどの行列ができるなど、信頼の厚さが伺える。患者のつらさに寄り添い、丁寧に話を聞いてくれる優しい笑顔の舘院長に、これまでの歩みやクリニックの診療の特徴、患者への思いなどについて話を聞いた。

(取材日2022年6月22日)

通いやすい立地で、一人ひとりに真摯に向き合う診療を

開院のきっかけをお聞かせください。

舘奈保子院長 たち眼科 富山駅前アイクリニック1

2021年3月まで射水市の真生会富山病院のアイセンター長を務めていました。そして2021年4月、富山駅前に「たち眼科 富山駅前アイクリニック」を開院。開院のきっかけは、車が運転できなくなって真生会富山病院には通いにくいという患者さんの声があったからです。富山駅の目の前のビルという立地により、患者さんが通いやすいだろうと考えました。この場所はもともとクリニックだったので、そこに手術室を併設して一般眼科診療を行っています。

どのような患者さんが多くいらっしゃいますか?

病院時代から通い続けてくださる患者さんもいますが、新しい患者さんが増えましたね。「真生会富山病院は今まで遠くて行けなかった。富山駅なら通いやすい」というお声もいただいています。真生会富山病院の患者さんは、「車の運転ができないと生活できない」と切迫感を持って来院される方が多かったです。当院では、公共交通機関を使う患者さんも多いので、少し患者さんの心持ちは異なる印象です。年代は、子どもから高齢者まで幅広いですが、やはり視力が低下してくる高齢者が最も多いです。

診療において、心がけていることはありますか?

舘奈保子院長 たち眼科 富山駅前アイクリニック2

当院の患者さんは、網膜の病気や緑内障などからくる目の不調をきっかけに来院されます。投薬や手術でサポートすることはもちろんですが、「見えなくなることへの不安や恐怖」を抱えている患者さんの心のケアも大切です。こちらが一方的に話すだけでなく、患者さんのお話にも耳を傾ければ、一人ひとりの診療時間は長くなりがちです。待ち時間の延長も気になりつつ、患者さんが安心して治療に取り組めることを大切にしています。

一生視力を保ってもらうために

力を注いでいる診療について教えてください。

舘奈保子院長 たち眼科 富山駅前アイクリニック3

糖尿病網膜症の診療に力を入れています。これまで、糖尿病を放置して、手遅れで失明してしまう患者さんに多く出会いました。その経験に基づき、一生視力を保っていただけるよう診療を行っています。実は、糖尿病網膜症による失明はいきなり起こるわけではありません。糖尿病とは血糖値が高い状態が続くことです。何年も放置していると、血管の壁が傷んできます。その結果、血管の壁の壊れたところから網膜に出血したりしてきます。それでも、網膜のうちの視力を担当する部分に異常が出る前は無症状です。さらに進行すると、視力を司る大事な部分にも変化が現れて、徐々にあるいは急激に視力が落ちていくのです。

糖尿病網膜症を予防する方法はあるのでしょうか?

まずは健康診断など、内科のチェックを受けることですね。「糖尿病の疑い」の時点から長らく放置すると症状が出てきてしまいます。そのため、「糖尿病の疑い」が出たらすぐに内科へ行って詳しい検査を受けてください。「糖尿病」とはっきりしたら、眼の症状がまったくなくても、内科での糖尿病のケアと合わせて、年1回でいいので眼科の検診を続けましょう。そうすれば、可能な限りリスクを抑えていくことも可能です。検診とは、病気の兆しを未病のうちに発見して、症状が出ないようにするためのチェックです。実際、目の不調の自覚症状が出てからでは、手遅れになってしまうケースが多いので、症状のないうちに定期的に検診を受けることをお勧めします。早期であれば、投薬やレーザー治療などできることはいろいろあります。

その他の診察内容を教えてください。

舘奈保子院長 たち眼科 富山駅前アイクリニック4

白内障は、年齢を重ねれば誰でもなり得る病気です。両眼が同じ程度に見えにくくなると、ご自分が見えていないことに気づかなくて、さらにトラブルを呼ぶ場合があります。例えば、段差が見えず転倒したり、情報が入りにくくなるため認知症が進みやすくなることもあるので、定期的な検査をお勧めしています。白内障の手術では近視や老眼なども一緒に治療を進めることが可能なのでご相談いただけたらと思います。また、視力低下の陰には、網膜前膜などさまざまな網膜の病気が潜んでいることもあるので合わせてチェックをしています。そして、日本人の失明原因の首位の緑内障。緑内障で失った視野を取り戻すことはできず、症状の出る頃はかなり進行しているので、無症状のうちに検査を受けて初期の緑内障をみつけるのが先決です。症状がでないように進行を遅らせる目的で継続的に治療を行います。病状や生活スタイルに応じて治療を続けていただく工夫をしています。

診察体制を強化されるとお聞きしました。

開院以来、多くの患者さんに来院いただいているため、体制強化のため医師を増員することになりました。これまで、院長である私と、コンタクトレンズに関する診療を担う医師のニ診体制でした。今後、一般診療を担う医師を1人迎え、三診体制となります。さらに設備面では、先進の手術システムを導入しました。生涯医師として、自分の体を限界まで診療に使えるようにと、3D顕微鏡なども使っています。

治せる病気による失明をゼロにしたい

眼科医を志した理由は何ですか?

舘奈保子院長 たち眼科 富山駅前アイクリニック5

父が片目を失明していて、見えないことのみならず、さまざまな機会を奪われるつらさ、苦しみを聞いていた経験が大きかったと思います。そうした苦しみを抱える方が少しでも減ればと考えたことが、眼科医を志した理由の1つです。網膜手術を専門に選んだのは、大学病院での研修時代に、緊急性が高く治療が難しい網膜手術の現場を見て、このように治せる医師になりたいと感じたからです。

大学病院で印象に残っていることはありますか?

教科書や論文で学ぶことと、実際に患者さんに教えていただくこと、すベてが印象に残っています。大学病院時代は、難しい症例も多く担当しました。規模が大きく専門的な大学病院でしたから、患者さんの期待も大きいのです。難しい症例を対応すればするほど、より難しいチャレンジを続ける日々でしたね。糖尿病網膜症の治療を手がける中で、手遅れで失明してしまう患者さんに多く出会いました。そこでの経験から、初期治療に注力したいと考えるようになりました。

患者さんとのエピソードを教えてください。

当時60歳くらいの患者さんで、糖尿病網膜症でした。失明の可能性もある手術中に難しい局面に差しかかったんです。私が困っていることに患者さんが気づき、「先生やってください。任せます」と声をかけてくださいました。執刀医がためらっている様子を感じたら、さぞかし不安だったことでしょう。そこでかえって執刀医を押し出す気遣いをしてくださったのです。「絶対助けないといけない」と思いました。その後、その患者さんとは年賀状のやりとりをさせていただくようになり、お亡くなりになるまでお付き合いをしていただきました。私は、私が手術をした患者さん皆さんに手書きのお見舞いはがきを送っています。患者と医師ではなく、「人と人」として向き合いたい思いから、これからも続けていきたいと思っています。

読者へのメッセージをお願いします。

舘奈保子院長 たち眼科 富山駅前アイクリニック6

少しでも「いつもと違う」という違和感を持ったら、すぐに来ていただきたいです。「老眼かな」と思ったら、緑内障がみつかったというケースも多いんですよ。でも、内科などの検診に比べて、眼科検診は受ける方が非常に少ないです。私の著書「40代から高まる失明のリスク」では受診のタイミングなどもご説明していますので、ご覧いただけたらと思います。また、運転免許更新のとき、視力が足りないためにメガネを作ってきてといわれる方も多いようです。40代以後は、運転免許更新のたびに眼科受診をすれば、緑内障、糖尿病網膜症など重大な眼の病気を早めに発見することができます。緑内障検診の受診券を配布されている地域では、是非これを活用してください。眼底検査で視神経の形を見れば、自覚症状がない緑内障の発見にもつなげられます。緑内障で視野を失うと元に戻らないので、ぜひお気軽に検診に来ていただきたいです。

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