五十嵐 視紀夫 院長の独自取材記事
五十嵐クリニック
(城陽市/寺田駅)
最終更新日:2026/04/27
2022年6月に城陽市に開院した「五十嵐クリニック」は、寺田駅西口から徒歩2分ほどの場所にあり、落ち着いた雰囲気で患者を迎えている。院長の五十嵐視紀夫先生は、京田辺市の「五十嵐こころのクリニック」でも20年以上、理事長を務めながら診療を続けているが、新たに城陽市に開院したのは「近くに精神科や心療内科が少なく、城陽から京田辺のクリニックに通っている患者さんが大変そうだったから」と明かす。五十嵐院長は、「患者さんの話に耳を傾け、できるだけ早く、楽になるように。ほめて、認めて、勇気づける」をモットーに、丁寧な診療を心がける。自身の異色の経歴も、今の仕事に役立っていると話す五十嵐院長に、これまでのキャリアや診療の際に心がけていることなどを聞いた。
(取材日2023年2月14日)
京田辺と城陽、2つのクリニックで地域を支えたい
五十嵐クリニックを開院した理由を教えてください。

京田辺市で開院した「五十嵐こころのクリニック」に城陽市から通う患者さんの利便性を考えてのことです。城陽市には精神科・心療内科のクリニックはほとんど見当たりませんでした。城陽から京田辺までは電車で2駅分の距離があり、車で通院できる方は良いのですが、タクシーで通院される方は費用もかさみます。少しでも患者さんの負担を軽減できればと思い、城陽にも開院しました。当クリニックでは、私と女性医師2人の3人体制で診療しています。京都大学の大学院生に来てもらい、心理検査を行うこともあります。20年前、京田辺のクリニックを開院した時は私だけで診ていましたが、次第に患者さんが増え、3年ほどで私一人では対応できなくなってしまいました。中には遠路はるばるいらしゃる方もいて、「今日はもういっぱいです」と断るのが忍びなくて。協力してくれる先生に応援を頼むうちに関わってくれるドクターが増えていき、現在の体制となりました。
精神科のデイケアとの連携も行っていると聞きました。
はい、京田辺市の「五十嵐こころのクリニック」2階にある精神科デイケアと連携しています。デイケアとは、うつ症状のある方や休職中の方を対象に、体操やヨガ、絵を描くなどのプログラムを通して、感情の安定、不安の解消、生活リズムの調整を図り、社会生活能力を回復することを目的としたリハビリテーションです。京都南部でデイケアを提供しているクリニックは数少なく、今後、当クリニックがデイケアへの窓口という役割も担っていくかと思います。
診療の際はどのようなことを心がけていますか?

予約制を取り、初診では30分から40分、じっくりお話をお聞きします。皆さん、いろいろな背景を抱えていらっしゃるので、その経緯を一つずつ話してもらいます。まずは話をよく聞いて、楽になっていただく。「ほめて、認めて、勇気づけ」とは、心理学の先輩の言葉ですが、「大変な状態をよく頑張ってこられましたね、つらい中を生きてこられたんですね」と共感する。その上で励まして、安心して帰っていただく。聞くのが8割、こちらから言うことはポイントだけです。
適切な服薬と運動により回復へ導く
クリニックの特徴や患者層を教えてください。

こぢんまりとしたクリニックですので、患者さんにリラックスしていただきやすい、というのが特徴といえますね。患者さんは20代から70代まで幅広い年齢層の方がおみえになります。男性が4割、女性が6割、といったところでしょうか。ご家族や知人と来られる方もいますし、お一人で来院される方も少なくありません。思春期に特化しているわけではありませんが、当クリニックでは思春期の外来を設けており、中高生の患者さんもいらっしゃいますよ。近鉄京都線の寺田駅より徒歩5分ほどですので、通院にも便利かと思います。予約制のため、お電話でご予約の上、お気軽にお越しください。
どのような症状の方が来院されていますか?
自覚があって来院される方は、うつ症状を訴えることが多く、その9割には睡眠障害があります。疲れて神経が高ぶっているから、体は休みたいのだけれど、夜になると目がさえて眠れない状態になり、朝になっても疲れが取れないという悪循環に陥ります。それから、食欲不振ですね。食べ物が、おいしくない、砂を噛むような感覚だとおっしゃいます。そのほかに、病気だと思っていろいろ調べたけれど、検査では異常が見つからないため、内科医院などから紹介状を持って来院される例もあります。例えば、食欲がなく、急激な体重減少があって、内科医院で血液検査やエックス線検査をして調べてみても、どれも正常の範囲。けれども明らかに食べることができない、というような患者さんもいらっしゃいます。
治療はどのように進めるのでしょうか?

どのような症状であっても、まずはじっくり話を聞いて、経過を見ていきます。次に、適切な服薬と休養が大事です。症状に応じて、抗うつ薬、食欲を出す目的の薬、睡眠導入剤などを処方します。処方に関しては、薬は多すぎないように、なるべく少ない量で、とは思いますが、一方で必要量がないと、スムーズな改善につながらない恐れもあります。それから、当院では運動を推奨しています。少しずつでも動いていただく。手軽なのは歩くことです。最初は5分でいいので歩きましょうと、勧めています。実際に体を動かしている患者さんのほうが、動かしていない患者さんよりも、改善につながりやすい傾向にあると考えています。私も犬を連れて近くの山に登り、リフレッシュしていますよ。
患者の健康と幸せが、医師としての「一灯」
これまでのキャリアについてお聞かせください。

私は農家の生まれで、中学卒業後に工場に集団就職をしました。ベルトコンベアで流れてくる部品を朝から晩まで塗装する仕事を1年した後、高卒資格取得のため、少年自衛隊の教育機関へ入学し、高校に4年、一般部隊に3年在籍しました。その時に、私にとってやりがいのある仕事をしたい、と一念発起し、医学部をめざしました。4年かけて27歳の時に、山形医科大学に入学し、現役生とは9歳、年が違いました。医師としては異色の経歴かと思いますが、自分自身が過去に苦労をして働き、つらい思いもした経験があることが、精神科の診療に携わる上で役に立っていると感じます。
精神科を専門に選ばれたのは、なぜでしょうか?
大学6年の時に、グループで2週間ずついろいろな科を回りました。精神科の入院患者さんに病歴聴取を行った際、とても印象に残る患者さんと出会ったのが大きいでしょうか。全身、包帯姿で顔の一部だけが見えている女性で、過酷な家庭環境を苦にして、あることで大火傷を負ったのですが、治療の過程で皮膚科から精神科へと移って来られた方でした。自身の現状を受け入れられず、事実をゆがめてしまう様子を目の当たりにして、「こういう人のために何かできないか」と、使命感のようなものを感じ、精神科の道へ進みました。
読者へのメッセージをお願いします。

江戸時代の儒学者、佐藤一斎の言葉に、「一灯を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うなかれ、ただ一灯を頼め」というものがあります。私にとっての「ただ一灯」とは、患者さんの健康と幸せです。医師として、これを頼りに日々の診療にあたってきました。頭痛、めまい、吐き気、腹痛、内科の症状がどこに行っても治らないという人や、人から嫌われやすい人、組織でつまはじきにされた人など、いろいろな人がいます。どんな方であっても、治療して元気になっていただけるよう、癒やしてあげられたらと思っています。

