深谷 孝介 院長の独自取材記事
ふかや腎泌尿器科クリニック
(名古屋市緑区/有松駅)
最終更新日:2024/01/25

名鉄名古屋本線・有松駅から10分ほど歩くと、モノトーンの落ち着いた雰囲気の建物が見えてくる。2022年6月に開業した「ふかや腎泌尿器科クリニック」だ。院長の深谷孝介先生は、複数の医療機関で研鑽を積み、藤田医科大学病院では、腎泌尿器外科の医局長を務めた経歴の持ち主。「今までの経験を生かし、できる限り患者さんにとって負担が少ない治療を行いたい」との思いから、先進の医療機器を導入し、日帰りの検査や手術に注力。また、大規模病院との連携も行い、高度な医療へつなげていくことも重視している深谷先生。これまでの経歴や開業にあたっての思いなど、穏やかな口調で語ってくれた。
(取材日2022年9月20日)
泌尿器疾患の日帰り検査・手術に幅広く対応
開業から3ヵ月だそうですね。クリニックの特徴について教えてください。

私は豊明市出身なのですが、学生時代に鳴海町に住んでいましたので、なじみのある地域に開業でき、うれしく思っています。当院の一番の特徴は、前立腺の検査や膀胱がんの手術などを日帰りで受けていただけることです。特に現役世代の方にとって、入院生活を送ることなく日帰りで検査や手術が受けられるというのは、メリットが大きいと感じています。また、機器に関しても経尿道的膀胱腫瘍切除術という膀胱がんの手術で使用をする電気メスや、ハイビジョン対応モニターを装備した内視鏡など先進の医療設備を整えることで、より精度の高い検査や手術につなげています。設備面では、隣の薬局さんと共用で54台分駐車場のご用意がありますので、車でのアクセスも良好です。院内はバリアフリー設計で、多目的トイレもありますので、車いすやベビーカーをご利用の方も快適にお過ごしいただけると思います。
どのような患者さんがいらっしゃいますか?
男女比は7対3で、男性の方が割合としては多いですね。年齢層は、0歳児から90代の方まで幅広い層にお越しいただいています。開業直後は、以前勤めていた藤田医科大学病院で診ていた患者さんが多く来院されていましたが、最近では、地域の方に加えて天白区、名東区、豊明市、東海市や大府市など緑区以外の幅広いエリアからも来ていただけるようになりました。男性患者さんは、排尿障害、健康診断でPSA(前立腺特異抗原)値が高いと指摘されたケースや頻尿、尿路結石を抱えている方が多くを占めます。女性では、健康診断で尿潜血や尿たんぱくを指摘された方、子宮脱や膀胱脱といった骨盤臓器脱の影響で尿が出にくいなどの症状で受診される方が多いです。
検査体制、スタッフ体制について教えてください。

患者さんが訴えたいことが何なのか正しく理解し、先々のことまで見通して診断することが大切です。そのため、ご本人に自覚症状がない場合であっても、超音波検査を定期的に行っています。超音波検査は患者さんの負担感もほとんどないですし、検査がきっかけで病気の発見につながることもありますので、重視しています。また、診察時には毎回、検尿をしていただくのですが、分析装置を使い、普段と変わりはないかを確認しています。スタッフについては、看護師と事務スタッフが3人ずつ在籍しています。よく気がついてくれて、仕事がしやすくありがたいですね。スタッフの中には、泌尿器科での勤務経験がある人もいれば、当院が初めての人も。スタッフ皆に泌尿器に関する知識を身につけてもらいたい、との思いから月に1~2回、私がレクチャーをしています。普段の仕事の意味をより深く理解することで、仕事のやりがいにもつながることを期待しています。
高度な専門性を生かして、患者に適した医療を追求
勤務医時代はどのような治療に携わってこられたのでしょうか。

大学を卒業後は、名古屋記念病院、静岡赤十字病院などで勤務をして、2011年から藤田医科大学病院へ移りました。ちょうどこの頃、同病院では、ロボット手術を導入したんです。ロボット手術は、人の手で行う手術に比べて精度の高い治療が行えるだけではなく、縫合不全や術後の合併症のリスクを低減できるといわれています。今でこそ、さまざまな疾患にも保険適用となっていますが、当時はまだ珍しかったので、数多くの方が来院されました。ロボット手術はその名のとおり、手術を行うのはロボットですが、その機械を扱えるだけの技術が人間に必要になります。私自身、練習を重ねて技術力向上に努め、実際に前立腺がんや膀胱がんなど数多くの手術に携わることができました。現在、当院での日々の診療においても、患者さんにとって最適な治療法は何か考える上で、こういった勤務医時代の経験が役立っていると感じます。
先生が泌尿器科の医師を志したのはなぜですか?
消化器外科の開業医である父の背中を見て育ち、自然と医師の道をめざすようになりました。泌尿器科を志したきっかけは、まず一つに、幅広く手術を行える科であるということ。そしてもう一つは、藤田医科大学在学中に星長清隆先生に教わったことです。星長先生は現在、学校法人藤田学園の理事長を務めていらっしゃいますが、腎臓移植がご専門なんです。患者さんのことを第一に考える方で、熱心に時に厳しくご指導いただいたことが今につながっています。泌尿器科の口頭諮問では、ただカルテを見ているだけではわからない内容を先生から聞かれたこともありました。例えば「担当患者さんの今日の尿の色は?」というような質問で、しっかり患者さんのことを見ていないと答えられないですよね。病気を治すために最善を尽くすこと、努力を惜しまないことが医師として大切であると星長先生から教わりました。先生との出会いで泌尿器科に導かれたと思っています。
医師としてのこれまでを振り返って、患者さんとの印象深いエピソードがあれば、お聞かせください。

患者さんに感謝の言葉をかけていただくとうれしいですし、やりがいを感じますね。一方で、闘病の末残念ながら亡くなってしまう患者さんとも今まで多く接してきました。亡くなった後、ご家族がわざわざ私のところを訪ねて来られて、感謝の気持ちを伝えてくださった時には、胸に迫るものがありました。そしてもうお一人、この方も亡くなられてしまったのですが、大腸がんを患っていて、最初は私の父が手術を担当し、その後尿管がんを発症されて私が大学病院で手術を担当しました。程なく膀胱にも転移してしまい、ロボット手術をしたり、抗がん剤を使ったりして手を尽くしましたが、治して差し上げられなかった。その方のことも強く印象に残っています。
「来て良かった」と思ってもらえるクリニックが目標
先生が診療で大切にされていることは何ですか?

モットーは、患者さん自身が治療に納得をして、「来て良かった」と思えるクリニックであること。そのためには、患者さん本人が、意義や目的をきちんと理解した上で検査や治療を受けていただくことが重要だと考えていますので、検査結果や治療方法などを丁寧に説明を行うことを心がけています。患者さんに対してただ口頭で説明するだけではなく、医療従事者向けの資料をお見せして説明することもあります。
患者さんからお話を聞き出すという点で気を配っていらっしゃることはありますか?
はい。泌尿器科では、EDや尿漏れといったデリケートな内容を患者さんにお話しいただくことも少なくありません。そのため、問診票の質問項目は、さまざまな症状について「はい・いいえ」の2択で質問を設けました。口頭では言いづらいことでも、丸をつけるだけなら、心理的な抵抗感は少ないですよね。「はい」と丸がしてある項目については、こちらから質問することで、聞き漏れ防止に努めるとともに、お話ししやすい雰囲気づくりを心がけています。
今後に向けた抱負をお聞かせください。

開業にあたって、近隣の大学病院や市中病院と連携を取りながら、クリニックとしてできることを精いっぱいしていきたい、という思いがありました。開業して3ヵ月たち、多くの患者さんを診療しながら、必要に応じて大学病院に患者さんをご紹介することもあり、開業当初思い描いていた医療ができるようになってきたな、と感じています。今後は、より多くの方に治療や手術を受けていただけるようにしていきたいですね。早期に発見できれば治る病気も、発見が遅くなると治せなくなってしまうこともあります。気になることがあればお気軽にご相談ください。