川村 益彦 院長の独自取材記事
川村クリニック
(町田市/町田駅)
最終更新日:2026/06/10
1989年、町田駅からバスで約20分の大規模団地の一角に開業した「川村クリニック」。内科全般に加え整形外科も開設し、循環器、呼吸器、腎臓内科などの専門的な診療にも対応。地域に根差したかかりつけ医院として長く親しまれてきた。川村益彦院長は「複数の病気をお持ちの患者さんも、ワンストップで診療できるクリニックをめざしました」と、これまでを振り返る。加えて、早くから在宅医療をスタートさせ、同医療法人内に訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所を設けるなど、さまざまなかたちで地域のニーズに応えている。ベテラン医師と若手医師が協働で診療する中、今後を見据えた診療体制づくりも進めているという益彦院長に、同院の強みや将来の展望、地域医療への想いを聞いた。
(取材日2025年4月1日/再取材日2026年3月3日)
複数の病気を持つ患者にも対応するかかりつけ医
この地で長く診療されているクリニックと伺いました。

地域の皆さんが利用しやすいように、さまざまな症状に対応できるクリニックをめざして1989年に開業しました。内科全般の診療や生活習慣病の管理はもちろん、ご高齢の方にニーズが高い整形外科も開設。在宅医療にも早くから取り組んできました。さらに内科を担当する各医師の専門性を生かして、消化器および肝臓、呼吸器、循環器、腎臓、神経などの専門的な診療も可能です。複数の病気をお持ちの患者さんにも対応できるのは当院の強みだと思います。それに私自身も各専門分野の新たな情報を知る機会になりますし、反対に若手の先生方には当院で診療経験を積んでいただくことで、提供する医療の質の向上も図れます。腎臓内科の川村沙由美先生は私の娘で、大学病院に勤めながら当院でも診療しています。
専門の外来ではどのような症状を診ているのですか?
特定の曜日・時間帯に完全予約制の診療枠を設けて、消化器・肝臓、循環器、腎臓内科、神経内科の専門的な診療を行います。循環器は24時間継続して検査できるホルター心電計も備え、不整脈などの早期発見に役立てています。また、これまで腎臓病には積極的なアプローチが難しかったのですが、腎臓内科の医師がいることで適切な薬を処方しやすくなりました。神経内科ではパーキンソン病などを専門的な観点で診断・治療しています。この他、生活習慣病や腎臓病などの患者さんには、必要に応じて月1回の予約制で管理栄養士による栄養相談も行っていて、食事についての相談にも対応しています。
かかりつけ医としての役割を担っているのですね。

近年は医療の専門分化が進み、血圧はこのクリニック、糖尿病は別のクリニックなどと、病気や症状によって医療機関を替えている方もいるかもしれません。しかしその場合、患者さんの健康状態を全体的に把握している医師がいなくなってしまう可能性があります。かかりつけ医がいれば、どの診療科を受診すべきか迷ったときでも相談できますし、より専門的な治療が必要な場合には適切な医療機関を紹介してもらえます。窓口が一つになることで患者さんの負担も減り、安心して治療を受けられると思います。もしかすると「これは専門ではないので別の医療機関を受診してください」と医療者側から言われた経験がある方もいるかもしれません。かかりつけ医を持つ方がまだ多くない背景には、私たち医療者側の課題もあると感じています。かかりつけ医として、地域の皆さんがどんなことでも気軽に相談できる雰囲気づくりを大切にしていきたいと思っています。
高齢者の在宅療養を支える取り組みにも注力
在宅医療についても教えてください。

当院は、容体の急変時にも24時間対応し臨時往診を行う在宅療養支援診療所です。医療と介護の連携を重視し、同じ医療法人には訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所も設けました。訪問先はこれまで当院に通院されていた患者さんのご自宅が多く、ご家族から在宅医療への切り替えについてご相談いただくほか、患者さんの状態を踏まえて当院からご提案することもあります。また、地域のケアマネジャーさんから在宅医療の依頼をいただくことも少なくありません。訪問診療は一般的にご自宅という安心できる環境の中で診療を行うため、クリニックの外来診療時よりも患者さんやご家族がリラックスしてお話ししてくださることが多く、体調の変化や今後のご希望を把握しやすい点が大きなメリットだと感じています。
町田市全体の医療体制づくりにも携わってこられたそうですね。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで生じる「2025年問題」に備え、町田市と町田市医師会が中心となり、2013年に「町田・安心して暮らせるまちづくりプロジェクト」、通称「町プロ」が立ち上がりました。医療や介護など多職種が連携し、高齢になっても住み慣れた地域で暮らし続けられる町づくりをめざす取り組みで、私は推進協議会の立ち上げ当初から関わっています。市の歯科医師会、薬剤師会、訪問看護ステーション協議会、ケアマネジャー協議会などさまざまな団体が参加し、職種の垣根を越えた情報共有や勉強会を通じて連携を深めてきました。立ち上げ当初と比べて、訪問診療に対応する医療機関や訪問看護事業所も増え、地域の体制づくりは着実に進んできていると感じています。既に2025年が過ぎ、問題が本格化するのはこれからです。これまで積み重ねてきた準備をもとに、地域の医療・福祉を一層充実させていきたいです。
地域医療に取り組む際に心がけていることは?

地域医療は、医師だけで完結するものではありません。当院の看護師や事務スタッフに加え、介護職、訪問看護、行政など多機関・多職種と連携して初めて患者さんを支えることができます。そのため、日頃から地域ケア会議に参加するなど、顔の見える関係づくりに努めています。また「町プロ」では、人生の最終段階にどんな医療を受けたいのかを家族やかかりつけ医などと事前に話し合っておく「アドバンスケアプランニング(ACP)」の普及にも取り組んでいます。縁起でもないと感じるかもしれませんが、いざとなったときに延命治療をしてほしいかを含め、自分の死生観をあらかじめ示しておくことは、残されるご家族が困らないためのプレゼントだと思います。住み慣れた地域で人生の最期まで自分らしく暮らせるよう「ACP」について多くの方に知ってほしいですね。
スタッフとの協働で安心して受診できる体制づくりを
診療時に心がけていることを教えてください。

患者さんのお話を伺いながら、何が気になって来院されたのか、現在どのような状態なのかを丁寧に把握し、視診や触診、検査結果をもとに適切に診断することで、不安を少しでも和らげられるよう心がけています。長く通院されている患者さんも多いため、「最近はいかがですか?」と聞くだけでは会話がすぐ終わってしまうこともあります。「そういえばこんなことが」などと思い出して話していただけるよう、「おいしい物は食べましたか?」「よく眠れていますか?」「どこかに出かけましたか?」など、生活の様子を具体的に質問するようにしています。こうした日常会話から体調の変化に気づき、早めに対応することも、かかりつけ医の大切な役割だと考えています。
スタッフとの連携についてはいかがでしょうか?
看護師や受付スタッフは、まさにあうんの呼吸で診療を支えてくれています。例えば、医師の説明だけでは不十分だと看護師が感じた時には、診察後に改めて患者さんに説明してくれることもあります。また、受付スタッフも待合室に入ってきた患者さんの様子を見て体調が心配だと感じた時には、看護師と相談し、診察の順番を早めるなどの対応をしてくれます。こうしたスタッフ同士の連携とチームワークも、当院の特徴の一つだと思います。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

医療は日々進歩しており、これからの地域医療を支えていくためには若い世代の力も欠かせません。私自身の知識や経験を生かしながら、次の世代へしっかりとバトンを渡していくことが大切だと考えています。当院では、私の代で医療が途切れることのないよう、世代交代を見据えた体制づくりを進めています。2026年度からは新たに糖尿病専門の医師が診療に加わる予定です。また、娘の沙由美先生は、現在は大学病院での診療が中心ですが、今後数年をかけて徐々に当院での診療の比重を高め、将来的にはクリニックを引き継ぐことになっています。これからも安心して受診していただければと思います。

