金 龍門 院長の独自取材記事
きむ歯科口腔外科医院
(大阪市生野区/鶴橋駅)
最終更新日:2025/03/31

鶴橋駅から南東へ徒歩5分、庶民的なにぎわいにあふれる鶴橋本通商店街の一角に「きむ歯科口腔外科医院」がある。親しみやすい笑顔の金龍門(きむ・よんむん)院長は、病院の口腔外科で診療経験を積んだ歯科医師。「これまでの経験を生かして、地域住民の全身の健康に貢献したい」と2022年4月に開業した。院内には歯科用CTを導入し、インプラント手術や親知らずの抜歯もできる診療環境を整備。静脈内鎮静法や笑気麻酔を活用することで、「痛みや怖さから受診を避けてきた人にも、安心して歯科治療を受けてほしい」と話す。また初診時には口腔内全体を検査し、丁寧なカウンセリングを欠かさない。嚥下障害のケアや訪問診療にも力を入れ、口腔から全身の健康をめざす金院長に、同院の特徴や口腔外科ならではの治療について聞いた。
(取材日2025年3月5日)
口腔外科治療や静脈内鎮静法が可能な外来診療
開業から約3年。クリニック名を変更されたそうですね。

当初は地域の高齢化を支えられたらと、訪問診療を軸に歯科診療を行っていました。ですが、患者さんから外来診療を希望する声が徐々に高まったこと、また外科治療が必要な際も大きな病院へご紹介することなく、自分で最後まで診療できればと考えるようになったことから、クリニックを拡大して、名称も口腔外科をメインとした「きむ歯科口腔外科医院」へ変更しました。そもそも開業の理由が医療貢献だったこともあり、当院の役割は「医療の届きにくい方にも、しっかりと質の高い歯科治療を届けること」だと思っています。地域にお住まいの方だけでなく、歯科恐怖症の人や基礎疾患がある人の受け入れを積極的に行っているのも特徴です。院内には生体モニターや酸素吸入の設備があり、総合病院と同水準の環境を追求しました。また虫歯治療はもちろん、口腔外科手術や摂食嚥下の評価・サポートなど、対応するクリニックの少ない診療にも取り組んでいます。
歯科口腔外科では、どのような治療が受けられるのですか?
多いのは、親知らずの抜歯や骨造成を含めたインプラントの治療、また嚢胞(のうほう)の摘出などで、当院では大きな病院で扱うような難症例にも対応しています。検査や治療の際には歯だけでなく口や顎周りの骨格や軟部組織の病気にも注意し、痛みへの配慮も大事にしています。ほかに、口周りの外傷や顎関節症、子どもでは舌小帯切除術など発音のサポートも。さらに勤務医時代には、口腔がんの治療に携わっていたので、口腔がんの早期発見にも力を入れています。今、2人に1人はがんになるともいわれていますが、歯科では口腔がんなど粘膜の診察はあまり行われていません。しかし口腔がんは進行が早く、なるべく早期に治療を始めたい病気でもあります。より精密な検査や治療については専門性の高い病院とも連携していますので、気になる症状があれば、早めの受診が望ましいですね。
治療の痛みや不安に対しては「静脈内鎮静法」が使えるとか。

眠っているような状態で検査を受けてもらうため、静脈にお薬を点滴し鎮静を図るのが「静脈内鎮静法」です。インプラントの手術や、親知らずの抜歯などは、負担軽減が期待できると思いますし、歯科治療が非常に怖いという方でしたら、通常の処置でも利用をお勧めすることがあります。もちろん日帰りでの対応です。また、緊張を和らげるために「笑気麻酔」を使うこともできます。こちらは意識はありつつも、少しぼーっとして治療中の記憶が残りにくくなることが期待できるのが特徴です。歯科治療の痛みや恐怖心に悩む方は実は非常に多いもの。静脈内鎮静法を行う歯科医院で治療をしたいという方のニーズはとても高いと感じています。
カウンセリングは患者が口腔への理解を深める時間
摂食・嚥下障害や、口腔機能低下症についても教えてください。

高齢になると、「食べる幸せ」の比重がとても高くなると感じていますし、同時に「食べられない」ことに悩む方も増えていきます。ただ、食べられない・飲み込めない原因は、人によって大きく異なるので、「何ができていないのか」を、まず正確に調べる必要があります。当院にある嚥下内視鏡では、細いカメラを鼻から喉へ入れ、実際に食べたり飲んだりしている最中の喉の動きを調べることができます。どの部分でトラブルが起きているのかを見極め、評価や適切なリハビリテーション、さらにとろみの程度などの食事形態や食べ方の工夫など、さまざまなサポートへとつなげていきます。
初診時の診療の流れは?
初診の方には基本的に1時間の枠を取り、検査とカウンセリングを必ず行います。検査では口腔内写真やパノラマエックス線画像を撮影し、歯周病の検査も実施。私が画像を確認して、歯の問題点だけでなく、顎の骨格や歯肉に問題はないか、腫瘍を疑うような所見がないかなども注意深くチェックして、カウンセリングを行うスタッフと情報を共有します。カウンセリングでは検査画像を患者さんと一緒に見ながら、お口の中の状態を詳しく説明します。また、「この虫歯を治してほしい」といった患者さんのご希望に加え、詳しい検査や治療をしたほうが良いところがあればそれも含めた治療プランをいくつかご提案して、患者さんに選んでもらいます。
なぜカウンセリングを大事にされるのですか?

口の中の状態は、ご自身ではよくわかりませんよね。また、患者さんが多忙な場合、歯科医院によっては患者さんが希望する部分だけを治療するということもあるでしょう。しかし歯科診療では「検査したからこそわかる口腔内の本当の状態や必要な治療の全体像を、まずは患者さんにきちんとお伝えすべき」だと私は考えています。歯や口腔内のトラブルは、噛み合わせや顎関節、歯肉などさまざまな要素が関連していることが多く、一部分だけ治療しても根本的な問題は解決しにくいのです。どこまで治療を行うかは患者さんが判断することですが、せっかく受診されたのですから、ご自身の口腔の状態や治療の必要性をしっかりと把握する機会にしてほしい、そういう考えでカウンセリングに取り組んでいます。
専門性に基づく多職種連携で「食べる喜び」を守りたい
訪問診療も、引き続き実施されています。

クリニックから半径16kmの範囲で訪問診療を行っています。虫歯の治療や入れ歯の作製、口腔ケアなどのほか、先ほどお話しした摂食・嚥下障害のご相談も多いですよ。嚥下内視鏡の検査はご自宅でもできますし、そのほかの治療も外来診療と同水準で提供できるように努めています。摂食・嚥下障害に関しては、患者さんの在宅療養を担当されている医師や訪問看護師、言語聴覚士などにも検査の様子を見てもらい、食事内容やリハビリの方針を一緒に考えていくことも大切です。「胃ろうで栄養を取っているけれど、週に1回でも口から食べたい」という方もいらっしゃいますので、歯科医師として専門的なサポートを行い、患者さんに喜んでいただきたいと思っています。
今後どんなクリニックをめざしていきたいですか?
「医療の窓口」として地域のお役に立っていければと考えています。一般的にクリニックは病気になってから行くところですが、歯科はほかの診療科と違って、予防のためにも通える場所です。例えば、定期的なメンテナンスを利用して、患者さんの健康状態を聞き取ったり、相談窓口になったりして、ほかのクリニックや病院への診療につなげることができれば、もっと地域の健康寿命を延ばすことができるのではないでしょうか。特に当院の場合、訪問歯科診療から、病診連携や介護連携の経験も豊富です。また、当院のような特性のあるクリニックをほかの地域にも、と考えています。少しでも多くの人が治療で困らない、そういった社会にしていきたいですね。
最後にメッセージをお願いします。

今はたくさんの歯科医院がある時代です。患者さんには、そこをうまく活用してもらえたらと思っています。クリニックの特性を知って、自分に必要な治療があると思ったら、ぜひ当院を頼ってください。治療が終われば、かかりつけのクリニックへ引き継ぐことも可能です。現在、歯科治療が怖い、嘔吐反射が強い、麻酔が作用しづらいといった人も躊躇することなく治療ができればと、静脈内鎮静法による治療も保険診療内で行っています。ほかのクリニックで病気を理由に治療を断られた方も、主治医と相談しながら治療を進めていきますので、ご安心ください。「ここに来て良かった」と思ってもらえるよう、スタッフ一同、親身に寄り添っていきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/30万円程度、骨造成/10万円程度