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小野 陽平 院長の独自取材記事

かごしまIBD消化器内科クリニック

(鹿児島市/天文館通駅)

最終更新日:2022/08/22

小野陽平院長 かごしまIBD消化器内科クリニック main

鹿児島市電・天文館通停留所からすぐ。商業施設やオフィスなどが入る大型複合ビル内4階にある「かごしまIBD消化器内科クリニック」は、2022年4月に開院。炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎とクローン病を専門とした全国的にも数少ないクリニックだ。小野陽平院長は、消化器内科の医師として市内の大学病院はじめ、県内の基幹病院などに15年間勤務。指定難病である炎症性腸疾患(IBD)の患者に長く寄り添いたいという思いを強くし、開業を決意したという。胃・大腸内視鏡検査の経験も豊富で、内科・消化器内科を標榜。「保健室」のような存在になれたらと語る小野院長に、診療内容や患者への思いなどを詳しく聞いた。

(取材日2022年6月7日)

炎症性腸疾患(IBD)の専門クリニック

こちらの特徴について教えてください。

小野陽平院長 かごしまIBD消化器内科クリニック1

消化器内科、特に炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎とクローン病を専門とした、全国でもまだ数が少ない分野を強みとするクリニックです。胃・大腸内視鏡検査も専門としてきたので、高機能の検査機器も導入しています。当院は、天文館通電停すぐの商業施設やオフィスなどが入る大型複合ビル内にあります。一般内科も診療しているので、買い物ついでや仕事の合間にも気軽に受診していただけたら。「天文館の保健室」のような存在になれたらうれしいです。

この地で開業しようと思ったのはなぜですか?

消化器内科医として15年間臨床に携わり、中でもIBD、潰瘍性大腸炎とクローン病を専門としてきました。どちらも若い世代が発症しやすいという特徴があります。原因は完全には解明されておらず根治しないため、指定難病とされています。継続的に診る必要がある病気ですが、開業前は鹿児島大学消化器内科の医局員だったため定期的な異動があり、患者さまと信頼関係を築いても長く診ることができません。患者さまに寄り添いたいという思いが強く、恩師にも相談し、開業を決意しました。入院治療が必要になることもあるため、開放型病院という病診連携のシステムを活用しています。厚生労働省の基準を満たした開放型病院に登録し、患者さまが入院した時には、病院の主治医とともに私も入院診療に参加できるシステムです。開業場所はそうした開放型病院に近いこと、患者さまが通いやすいよう交通の便の良い所にと考えました。

IBDの自覚症状と治療について教えてください。

小野陽平院長 かごしまIBD消化器内科クリニック2

下痢や血便等の便通異常、腹痛、肛門の異常、体重減少など、症状はさまざまですが、いずれも持続的な症状であることが特徴です。一般的な感染性腸炎などは数日から1週間程度で治癒しますが、IBDはこのような症状が長く続きます。現時点でIBDを根治させる内科的治療はなく、重症度に応じた薬剤を使用し、まずは寛解状態になることをめざします。診療ではまず、症状をよく伺うことから始めます。自覚症状や診察所見、血液検査所見などでIBDが疑われる場合には、大腸内視鏡検査を実施します。

腸の病気を疑う目安はありますか?

腹痛や下痢が数週間以上続くときは何らかの腸疾患を疑います。IBDだけではなく、過敏性腸症候群(IBS)やアレルギー疾患、薬剤による腸炎等もありますので、一度ご相談いただければと思います。感染性腸炎でも腹痛や下痢が起こりますが数日以内に収まるのが一般的です。過敏性腸症候群では腹痛や下痢・便秘といった慢性的な便通異常が見られます。それらの状態が長く続きますが、内視鏡検査をしても腸に器質的な異常が見られないのが特徴です。ストレスを感じたり、感染性腸炎の治癒後に発症することがあり、若年者から中高年まで、幅広い世代で発症します。なお、腸の病気ではありませんが、黒色の粘っこい便が出た際は、胃・十二指腸から多量に出血している可能性があります。緊急性がありますのですぐに病院へ行ってください。

15年間、消化器内科医師として県内複数の病院に勤務

患者さんは腸疾患の方が多いですか?

小野陽平院長 かごしまIBD消化器内科クリニック3

潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さまが多く来院されています。一方で、逆流性食道炎や胃潰瘍などの上部消化管疾患や、感染性腸炎や過敏性腸症候群などの患者さま、胃カメラ、大腸カメラの定期検査の患者さまも多いです。消化器内科としては、IBDと一般消化器内科が半々といったところ。当院は原則15歳以上を診療対象としておりますが、IBDやIBSは若年者にも多く14歳以下でも症状によっては診療可能です。小学校高学年から中学生も通院されていますが、状況に応じて小児科へ紹介することもあります。また、風邪や高血圧、糖尿病など一般内科の患者さまもいらっしゃいます。

開業までさまざまな経験を積まれてきたそうですね。

私は志布志市出身で2007年に熊本大学医学部卒業後、いづろ今村病院に勤務。その時の指導担当者が私の恩師で大きな影響を受けました。その後、鹿児島大学の消化器内科に入局し、鹿児島市内のほか、薩摩川内、奄美、指宿など県内の複数の病院に勤務。地方の病院では消化器内科だけでなく一般内科の診療も行い、さまざまな経験をさせていただきました。例えば、鹿児島市内であれば末期のがん患者さまに緩和ケア病棟を紹介できますが、地方には緩和ケア病棟がないところが多いのが現状。極力痛みを軽減し、患者さまらしい生活を送ることができるよう、緩和ケアの専門家ではありませんでしたが勉強会や講習会等にも参加し、知識・技術の習得に努めました。

診療で大切にされていることは?

小野陽平院長 かごしまIBD消化器内科クリニック4

まずは患者さまのお話をしっかり聞くことですね。時間に追われる時もありますが、できるだけ患者さまのお話を遮らずにお伺いするよう心がけ、病気の診断に必要な情報を収集します。高血圧・糖尿病といった生活習慣に関連する疾患は生活スタイルやお仕事などを伺い、例えばエレベーターでなく階段を使うなど日常生活の中で取り入れられるアプローチを探していきます。

スタッフさんについても教えてください。

当院にはIBDの患者さまに多く関わってきた看護師がいます。完治が困難な病気だからこそ病のことをよく理解しているスタッフがいるのは大きな安心感につながるようです。私が患者さまとゆっくりお話できない時も、看護師がじっくりお話を伺うことができます。当院では勉強会を積極的に開き、スタッフの知識の向上、情報共有に努めています。また、当院が登録している開放型病院であるいづろ今村病院とオンラインによるカンファレンスを実施することで、患者さまの入退院前後の情報共有を図っています。

増加するIBD患者が困らないよう恩師と体制強化を

先生が医師をめざしたきっかけは何だったのでしょう。

小野陽平院長 かごしまIBD消化器内科クリニック5

小学2年の文集に「将来なりたいものは医師」とあるのですが、家族に医療従事者がいるわけでもない普通の家庭でしたし、なぜそう書いたのか覚えていないんです。1年の文集は宇宙飛行士でした(笑)。6年生の時に祖父を亡くしたのですが、闘病中祖母が祖父を「孫が医師になるまで頑張ろう」と励ましていて。それが思いを強くしたきっかけかもしれません。

印象に残る患者さんとのエピソードは?

数えきれないくらいありますね。医師になりたての頃診ていたお子さんが社会人になって一人暮らしを始めたり、看護師になる夢をかなえたり、人生を切り開いていく姿を見るのはうれしいものです。患者さまと長く関わる中で、部活や就職、結婚などの悩みに寄り添うことにもやりがいを感じます。歌うことが大好きだったがん患者さまも印象に残っています。病状が進んでも歌う楽しみをかなえられるよう私なりに努めました。最期は自宅でと希望され在宅医に託しましたが、ご自宅が通勤路にあったので時々寄っていました。ある日伺うと、今息を引き取られたと。ご家族から「家で過ごせて良かった」とお言葉をいただいたことは忘れられません。

今後注力していきたいことと、読者へのメッセージをお願いします。

小野陽平院長 かごしまIBD消化器内科クリニック6

IBD専門のクリニックとして、患者さまが自分らしく生きていけるようサポートしていきたいです。患者さまが増える中、恩師も県全体で診療の質を上げなければと危機感を持っており、ともに活動しています。読者の方にお伝えしたいのは、おなかの不調から生活習慣病まで気になる症状があればいつでも気軽にご相談ください、ということ。当院で対応が難しい病気については、必要に応じて専門病院などにご紹介します。本心としては、患者さまが病院にかかるというのはどこかに不調・不具合があるわけですから、来る必要がないほうが良いわけですが、何かあった時に頼りにできる「天文館の保健室」として知っておいていただければと思います。

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