治らないアトピー性皮膚炎
自己注射も選択肢の一つに
王子公園 まつむら皮フ科
(神戸市灘区/王子公園駅)
最終更新日:2024/06/14


- 保険診療
強いかゆみや赤み、湿疹などを引き起こすアトピー性皮膚炎。自分自身や家族がアトピー性皮膚炎に悩まされている人も多いのではないだろうか。乳幼児から成人後まで症状が長引き、生活に支障を来すケースも珍しくないとか。治療ではかねてより主にステロイド外用剤が用いられてきたが、最近では自宅でできる自己注射などの新たな治療薬も登場。患者一人ひとりの症状やライフスタイルに応じて、治療を選択できる時代になった。「学生や社会人などの多忙な患者さんは、通院の負担が少ない自己注射を検討してみても良いのではないでしょうか」と話すのは、「王子公園 まつむら皮フ科」の松村泰宏院長。今回、注射剤を含めたアトピー性皮膚炎の治療について、松村院長に詳しく教えてもらった。
(取材日2024年6月10日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Qアトピー性皮膚炎を放っておくと、どうなりますか?
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A
完全にアトピー性皮膚炎を放置している患者さんはそれほどいません。しかし、お薬がなくなっても受診しないなど、治療の優先順位が下がってしまう患者さんは少なくないですね。特に学生や社会人などの多忙な世代の患者さんは、「この程度の症状ならば大丈夫」と見て見ぬふりをすることもあるようです。ただ、患部をかきつぶせば感染症のリスクは高まりますし、長く炎症が続くと色素沈着が起こりやすくなります。さらに、湿疹が悪化して慢性化すると、同じ治療を行ってもなかなか治らないといった事態に陥ることも。アトピー性皮膚炎は放置したり、自己判断で治療を中断したりするのではなく、医師による定期的な診察が欠かせません。
- Qアトピー性皮膚炎の治療法について教えてください。
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A
主な治療薬として、以前からステロイド外用剤が使用されています。現在はその必要性や適切な使い方が広く知られるようになったため、必要な場合には患者さんからスムーズに受け入れてもらえることが多くなりました。ステロイド外用剤とともに、抗アレルギー薬や免疫抑制薬などを併用するのが一般的ですね。また、最近では生物学的製剤の注射剤やJAK阻害薬の外用剤、内服薬といった新しい薬剤も出てきました。これらの薬剤はアトピー性皮膚炎に対してよりピンポイントに作用が見込めるため、効果や安全面のさらなる向上が期待できます。その他、紫外線療法も行われています。
- Q生物学的製剤の注射剤治療のメリットは何でしょう?
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A
アトピー性皮膚炎の3要素である「炎症・かゆみ・バリアー機能低下」のいずれにも効果が期待できることです。また、2週間に1回の投与となりますが、自宅での自己注射も可能です。多忙で通院が負担になりがちな患者さんにとっては、自宅で注射ができるという点もメリットになるのではないでしょうか。生活への影響を抑えつつ、治療を続けることができますよね。なお、生物学的製剤の注射剤治療の対象となるには、「治療を続けてきたが、十分な効果が得られない」などの条件があります。詳しくは医師にお問い合わせください。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診票に記入の上、医師の診察を受ける
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待合室にて問診票に記入し、診察室へ。医師の診察では、患者が今困っている症状を中心に、治療歴やアレルギーに関連する生活環境などをチェック。アトピー性皮膚炎が疑われる場合、その他の病気の有無などにも注意しながら診断へと進めていく。
- 2アトピー性皮膚炎と診断されたら、治療をスタート
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かゆみや赤み、湿疹など、患者が困っている症状に応じた薬物治療を開始。外用剤の使用においては、適切な塗り方も指導される。また、アトピー性皮膚炎では、薬物治療に加えて、保湿や「汗を拭く」といった清潔の維持などのスキンケアも重要に。そのため、自宅でのスキンケア方法について、丁寧な説明が行われる。
- 3生物学的製剤の使用を検討。初回注射に向けて指導
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塗り薬などの治療を一定期間続けても十分な効果が見込めない場合、生物学的製剤の注射剤治療を検討することに。自己注射を選択する患者には、練習用の注射器を使った打ち方の指導も行われる。初回に院内で投与する2本のうち1本を看護師、もう1本を患者自身で注射する。
- 42回目の指導後、自宅での自己注射へ移行
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注射剤治療は2週間に1回ずつ行うため、1回目の注射から2週間後に受診。再度看護師の指導を受けた上で、患者自身が院内で注射を行う。その後、処方された注射を自宅へ持ち帰り、冷蔵庫で保存。2週間に1回、注射を継続していく。自己注射を希望しない場合は、2週間間隔で医院で注射を受けることになる。
- 5定期的に医師が症状の変化をチェック
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投与開始直後は、月1回程度受診。医師が症状の変化を確認する。同院の場合、早い段階での変化が見込める患者の場合は、最長3ヵ月間隔で受診日を設けているとか。自宅では、保湿などのスキンケアをしっかりと続けておくことも重要だ。