税所 芳史 院長の独自取材記事
さいしょ糖尿病クリニック
(中野区/中野駅)
最終更新日:2025/01/22
2022年1月に開院した「さいしょ糖尿病クリニック」は、専門的な治療と充実の検査体制、便利な立地が特徴のクリニックだ。大学病院で糖尿病に関する多数の診療や研究の実績を持つ税所芳史(さいしょ・よしふみ)院長は、その高い専門性はもちろん、「治療と予防は連続したもの」という信念のもと、一人ひとりの患者に寄り添った診療を行っている。また、長く付き合う必要がある生活習慣病を扱うからこそ、クリニックへの通いやすさも重視している。例えば、診察の際は、威圧感を与えないようあえて白衣を羽織らず、患者が話しやすい雰囲気をつくるなどの工夫をしているという。インタビューでは、クリニックづくりのこだわりや診療スタンス、税所院長自身の健康法や情報発信への思いについて語ってもらった。
(取材日2024年12月12日)
通いやすく、治療を継続しやすいクリニックをめざして
医師を志したのにはどんなきっかけがありましたか?
父方と母方の祖父が開業医で、父も大学に勤務する医師という環境だったので、子どもの頃から漠然と医師になりたいと思っていました。内科を選んだのは2人の祖父と父が内科の医師だったことに加え、患者さんの全身を診たいという思いからです。さらに内科の中でも糖尿病はさまざまな合併症があり、より全身を診ることができる分野なので、専門に選びました。
糖尿病専門のクリニックの開業を決めたのはなぜですか?
糖尿病の治療は長期間にわたり患者さんの状態を確認しながら少しずつ積み上げていくものですから、担当医師が代わる可能性がある大きな医療機関よりもクリニックのほうが、患者さんの状態や変化をしっかりと把握し、より連続性のある治療ができるメリットがあると考えたからです。
実際に開業されてみての印象はいかがでしょうか?
開業からもうすぐ3年たちますが、患者さんにも継続して通院していただけていて、今のところ思い描いたとおりの診療ができていると思います。患者層としては、20~90代までと幅広く、健康診断の結果などを踏まえて来院される患者さんのほか、地域のクリニックや病院から紹介されるケースもあります。地域の病院からも糖尿病のクリニックとして信頼していただけるのは非常にありがたいことだと感じています。
クリニックの特徴について教えてください。
糖尿病に限らず、治療は中断せずに継続することが大切なので、駅に近い便利な立地を選んだり、混雑を分散させるために予約制を採用したりと通いやすさにはこだわっています。また、スマートフォンを持っている方へは健康管理アプリを活用した診療も行っています。看護師や栄養士にも使い方を説明し、血圧や血糖、食事内容のデータを取って、生活に沿ったきめ細かな指導に生かしています。スマートフォンで写真を撮ればそのまま記録が残るので、文字で残したり口頭で説明するよりも情報が正確です。野菜が取れているか、品数はどうかなどもすぐにわかります。数値や食事内容を「見える化」することで患者さんのモチベーションも高まると考えています。
患者がより良い人生を送るためのアドバイスを
検査体制や診療内容について教えてください。
糖尿病内科では、糖尿病のほか、高血圧症や脂質異常症、痛風などの生活習慣病の診療を行っています。当院では検査体制も整っており、糖尿病の診断に有用な血液や尿の検査は迅速に結果が出ます。動脈硬化や骨密度の検査も院内で可能です。特に、血糖は数値の変動が大きく1ヵ月前の結果と今の結果が違ってくるので、その場で結果がわかると患者さんにフィードバックしやすいです。患者さんも現在の生活の結果として振り返りやすいという利点があります。また、超音波やCT、MRIなどは近隣の画像診断専門の施設と、合併症の網膜症に関しては近隣の眼科と連携するなど、当院でできない検査は他の医療機関と連携して対応しています。このほか、一般的な内科の診察や睡眠時無呼吸症候群の簡易検査および治療にも対応しています。
日々、患者さんと接する際に気をつけていることはありますか?
私は治療と予防は連続したものだと考えています。治療のために良いとされることは予防のためにも良く、糖尿病かどうかに関係なくみんなが取り組んだほうが良いことです。一般的に生活を整えたら体調が良くなりますし、体調が良くなれば他の病気の予防につながるかもしれません。その結果として良い人生が送れるのではないかという信念のもと、その人がより良い人生を送るためのアドバイスをするというスタンスで日々の診療にあたっています。そのため、患者さんに過剰な心配や恐れを抱かせず、通いやすい雰囲気をつくることを大切にしていますね。当院の診察室の床はオレンジ色で、あまりクリニックに来たというような感じがせず良い効果を生んでいると思います。また、私は診察中に白衣を着ないのですが、医師という感じがしないので患者さんも構えなくて済みますし、私も医師としてよりも一人の人間としてお話しできると感じています。
栄養の専門スタッフがいるのも特徴ですね。
非常勤ではありますが、管理栄養士が基本的に毎日クリニックにおります。診察と併せて専門性を生かした食事指導や栄養相談をすることで、患者さんもよりご自身の生活に対して理解し、考える時間が増えることが期待できます。健康管理アプリで記録した情報などをもとに、普段の食事の調整などを専門的に担っています。
生活習慣病の予防や改善のためにはどんなことを意識すれば良いのでしょうか?
一般的に「健康的な生活」といわれていますが、睡眠時間をよく取る、日常生活の中で適度に体を動かす、野菜を増やしたバランスの良い食事を取ること。まずはそういう生活スタイルをお勧めします。ただ、仕事の関係などで難しいということもあると思います。そこをいかにその人なりに健康的な生活に近づけていくかというところが大切ですね。
糖尿病に関する知識を広めたい
生活習慣病をご専門とする先生が実践している健康法を教えていただけますか?
クリニックで診療をしていると運動量が減りがちなのですが、「食事も運動も腹八分」をモットーに、毎朝のスロージョギングが長年の習慣になっています。また、ちょっとした筋力トレーニングも取り入れています。物足りないくらいの方が次もまたやろうという気になるので、1回の量を減らすなど調整しています。やりすぎないことが続けるためのコツですね。寝ぼけた頭がすっきりしますし、アイディアが思い浮かぶこともあります。そうしたことを実感すると、ますます続けやすくなりますよ。
クリニックが休みの日はどのように過ごしていますか?
趣味としては本を読んだり、音楽を聴いたりすることが好きです。休日には映画を家族と見に行くこともあります。最近はミュージカルを観に行きましたね。
今後の展望や挑戦したいことについてお聞かせください。
糖尿病に関する知識、特に膵臓のβ細胞の大切さを広めたいですね。血糖値を下げるホルモンのインスリンは、わずか1gのβ細胞で作られます。糖尿病では、β細胞からのインスリン分泌が低下する、あるいは筋肉や肝臓・脂肪など、インスリンが作用する臓器でインスリンへの反応が悪くなって作用しにくくなります。インスリンの分泌低下は体質によることが多いです。一方、インスリンへの反応が悪くなるのは、過食や肥満、運動不足などが原因になり得ます。インスリンが作用しにくいと、インスリンを分泌しようと頑張ったβ細胞は過労死してしまいます。限られたβ細胞を守るためには、生活習慣の改善することです。これからも情報発信を続けていきたいと思っています。
読者の方へのメッセージをお願いします。
血糖はもちろん、そのほかのことでも体調に不安があれば何でもご相談いただきたいです。また、当院はホームページでの情報発信も大切にしており、糖尿病に関して原因や症状、治療法などさまざまな情報を発信しています。当院を受診し、治療を始められた方には治療を継続していただけることを第一に考え、受診して良かったと思っていただけるクリニックづくりをめざしていきたいです。