伊納 浩美 院長の独自取材記事
ひだまりファミリークリニック
(土岐市/土岐市駅)
最終更新日:2026/04/21
土岐市肥田町、県道421号沿いののどかな住宅街に「ひだまりファミリークリニック」はある。地名の肥田にぬくもりを重ねたクリニック名を体現するかのように、木目を基調にした院内には日だまりのような穏やかさが漂う。院長の伊納浩美(いのう・ひろみ)先生は、薬剤師として勤務する中で患者を直接診たいという思いが芽生え、改めて医学部へ進んだ経歴の持ち主だ。高齢者医療に長く携わった経験を生かし、2022年に開業。「医療とはいつも人々の生活のすぐそばになければならない」をモットーに、子どもから高齢者まで家族丸ごと診るかかりつけ医をめざしている。穏やかな笑顔で終始丁寧に語る伊納院長に、開業の経緯や診療への思い、フットケアの取り組みなどについて聞いた。
(取材日2026年3月23日)
薬剤師を経て医師に。「ひだまり」に思いを込めて開業
まずは、先生が医師をめざしたきっかけを教えてください。

高校生の頃、理系が好きだったことや女性として手に職をつけたいという思いから医学部を志しましたが、当時は届かず薬学部に進学しました。卒業後は薬剤師として数年勤務していたのですが、処方箋の変更を見るたびに「なぜこの薬に変わったのだろう」と不思議に思うことがよくあったんです。やはり直接患者さんを診たいという気持ちが強くなっていって。当時はまだチーム医療の考え方が浸透していなかったので、薬剤師が患者さんに深く関わる機会は限られていました。そこで思いきって病院を辞め、調剤薬局でアルバイトをしながら受験勉強をして、改めて医学部に進みました。臨床研修中に精神科で認知症の高齢の方を多く診る中で、内科的な疾患を併せ持つ方が多く、老年医学の重要性に気づきました。高齢の方は少しの薬の変化でも体への影響が大きいこともあり、薬剤師時代の知識が今の診療の土台になっています。
この地域で開業された経緯をお聞かせください。
夫がこの辺りの出身ということもあり、開業はこの土地でと考えていました。夫の家系は代々この地域に暮らしていて、義理の父から「地域の皆さんに貢献できる仕事をしてくれたら」とたびたび声をかけてくれていたんです。その言葉を聞いていると、私もこの土地の方々に少しでもお役に立てればという思いが少しずつ膨らみ、開業を決意しました。クリニック名は所在地の「肥田」にかけた「ひだまり」です。家族や周囲の意見を聞きながら決めたもので、温かさや親しみやすさが伝わればいいなと選びました。ロゴマークは馬が大好きな子どもが描いてくれた絵がもとになっていて、イラストレーターさんに仕上げてもらいました。名前にもロゴマークにも家族のぬくもりが詰まっていて、見る度にうれしくなりますね。
院内の雰囲気や、来院される患者さんについて教えてください。

院内も「ひだまり」をイメージして、木目を基調にグリーンとオレンジをアクセントカラーに配しました。車いすでも入りやすいよう広々としたバリアフリーの設計になっていて、入り口にはひさしがあるので雨の日でも濡れずにお車の乗り降りができます。夜になると周囲が暗い分、看板がステンドグラスのように光ってとてもきれいなんですよ。患者さんはご高齢の方と小さなお子さんが多く、3世代で通ってくださるご家族もいらっしゃいます。この辺りは陶器の産地なので、工場で働く外国籍の方がいらっしゃることもありますね。来院の理由は慢性疾患の管理と風邪や発熱が半々くらいです。一般内科だけでなく老年医学も得意分野なので、高齢の方特有の症状にも対応しています。
丁寧な対話で信頼を深め、足元から健康を支える
日々の診療で心がけていることを教えてください。

患者さんから「先生たちってパソコンを見ていることが多い」と言われることがあるので、極力手を止めて目を合わせてお話を聞くようにしています。じっくりお話を伺うと、たわいもない会話の中から異変に気づくこともありますし、ご家族から「お父さんが最近こうなんだよね」と聞いた一言が次の診療のヒントになることもあります。受付スタッフが「患者さんがこんなことを繰り返し言っていた」といった診察室では見えない様子を教えてくれることもあるので、そうした情報も総合しながら一人ひとりと向き合っています。丁寧に話を聞くぶん待ち時間が長くなることもありますが、流れ作業のような診察はしたくないんです。
お薬について、患者さんとはどのようにお話しされていますか?
薬の数が増えることを嫌がる方は多いので、できる限り合剤を活用して数を増やさない工夫をしています。余分なお薬は出さないのが基本ですし、減らしたいというご希望があれば、どの薬が必要でどれなら調整できるか一緒に相談しながら進めます。薬をたくさん飲みたくない気持ちはとてもよくわかるので、「今の状態にはこの薬が必要ですよ」と丁寧にお伝えし、納得していただくことを大切にしています。実は「飲んでいなかった」と正直に教えてくださる方もいるんです。そういうときも怒ったりはしません。教えていただけないとかえって薬が増えてしまうこともあるので、「飲めなかったら教えてくださいね」とお伝えしています。正直に言える関係があってこそ、その方に合う治療法を一緒に探していけると思います。
クリニックでフットケアを行うようになった背景を教えてください。

他の病院で糖尿病のフットケアの外来を担当していた経験豊富な看護師が入職したことがきっかけです。足の健康の大切さを地域に広めたいという熱意のある看護師で、今フットケアの中心を担っています。ご高齢になると爪が分厚くなったり巻き爪で変形したりして、ご自分では切れなくなる方が少なくありません。どこに相談すればいいかわからず、ご家族も「爪ぐらい」と見過ごしがちですが、巻き爪を放置していたことで膿んでしまって歩行が難しくなることもあります。糖尿病を患うと感覚が鈍くなり傷にも気づきにくくなるため、足を定期的に確認することが大切です。介護施設での訪問ケアも行っています。歩けることは全身の健康につながりますので、若い方も含め気になることがあればご相談ください。
地域とつながり、暮らしのそばで届ける医療
来院が難しい方への対応はどのようにされていますか?

オンライン診療に対応し、来院が難しい方でもきちんと診察できるようにしています。ご高齢の方で使い方がわからない場合も、ご家族の手助けによってオンライン診療につながるケースもありますね。お仕事が忙しくて診療時間内に来院できない若い世代の方にもご活用いただいています。在宅診療にも対応していますので、足腰が弱くなって通えなくなった方でも、治療を途切れさせることなく継続していくことができます。来院という形にこだわらず、いろいろな方法で患者さんとつながれる体制を整えておくことが、かかりつけ医としての大切な役割だと考えています。
開業5年目を迎え、地域とはどのように関わっていますか?
地域行事に参加させていただく機会も増えて、患者さん同士のつながりなどを広く知ることも多くなってきましたね。患者さん同士が待合室でお話しされていて知り合いだったことに気づいたり、「ここに来るとあの人に会えるから楽しみ」とおっしゃる方もいらっしゃったりします。一人暮らしで外出の機会が減ったから「しゃべるのはここに来た時くらいだよ」という方もいて、クリニックが地域の方の交流の場にもなっているのだと感じます。3世代のご家族を診ていく中で地域の人と人のつながりが見えてくるようになり、それが診療にも生きていますね。女性の先生だから話しやすいと言ってくださる方も多く、そうした声をいただくたびに、この地域に根差せて良かったなと実感しています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

ちょっと気になることがあれば、気軽にふらっと寄ってください。お子さんが病院を嫌いにならないよう雰囲気づくりには気を配っていて、帰るときには「バイバイ」と笑顔で手を振ってもらえるようなクリニックでありたいと思っています。風邪のついでに「実はこういうことも気になっていて」と話していただけたらうれしいですし、何でも相談しやすい空気を大切にしています。当院のモットーは「医療とはいつも人々の生活のすぐそばになければならない」です。特別なことがあるから行く場所ではなく、暮らしの延長で気軽に頼れる場所でありたい。これからも地域に根差したかかりつけ医として、皆さんの健康をそばで支え続けていきたいと考えています。

