自覚症状が現れにくい緑内障
早期発見と治療継続が進行抑制の鍵
いなとみ眼科
(札幌市豊平区/南平岸駅)
最終更新日:2022/06/20
- 保険診療
40歳以上の20人に1人が罹患するといわれる緑内障。視神経が障害され、徐々に視野が欠けていく病気で、日本人の失明原因の1位となっている。初期段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断や人間ドックでの眼底検査が早期発見の鍵となる。根本的な治療法はなく、現在行われているのは病気の進行を緩やかにするための治療だが、「いなとみ眼科」の稲富周一郎院長は「早期に治療を開始すれば、生涯1人で不自由なく暮らせる程度の視力を維持することは期待できる」と語る。大学病院で10年以上、緑内障の外来を担当。その豊富な経験を生かし、クリニック開業後も緑内障の専門治療に力を注ぐ稲富院長に、病気の特徴や治療法など、詳しく聞いた。
(取材日2022年5月26日)
目次
40歳を過ぎたら一度は検査を。早期に治療を開始すれば、視野欠損の進行スピードの抑制も期待できる
- Q緑内障とはどのような病気なのでしょうか?
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A
緑内障は、視神経が障害され特徴的な視野異常を起こす病気です。初期には視野の上部、または下部に見えづらい部分が出てきますが、この時点で自覚する人はまれです。病気が進行し、片目の視野が半分以上欠けても、もう片方の視野が良好であれば気づかないケースもあります。年齢が上がるにつれ患者さんの数は増え、また血縁関係に罹患者がいる場合、罹患する確率はそうでない場合の6倍程度ともいわれています。過去には眼圧が高いと緑内障になりやすいといわれましたが、実際のところ眼圧が低い人でもなり得る病気です。また、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、続発性緑内障などさまざまな病型があり、それぞれ治療法が異なります。
- Q受診すべきタイミングを教えてください。
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A
初期には自覚症状が現れにくく、多くは人間ドックや健康診断で行われる眼底検査で発見されます。ご本人が自覚症状を訴えて受診された場合、かなり進行した状態であることがほとんど。定期的に眼底検査を受けるよう心がけ、少しでも異常を感じたら早めに眼科を受診してください。緑内障はまだ治癒する方法がなく、治療では進行を抑制することしか見込めません。しかし治療を早期に開始し、継続していけば、生涯1人で生活するのに困らない程度の視力を維持することは期待できます。なお、眼底検査は散瞳薬の点眼により瞳孔を開いた状態で行うのが基本ですが、緑内障に限れば瞳孔を開かなくても検査可能です。希望する方は医師にご相談ください。
- Qどのような治療を行うのでしょうか?
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A
視神経を圧迫する眼圧を下げ、病気の進行抑制を図ります。眼圧を下げるには、目の中の水分の排出を促し、水分量を調整する機能を高める必要があります。そのため病型に応じて目薬、レーザー、手術による治療を行います。症例の多くは開放隅角緑内障で、水分の出口である隅角が広く排出はできているものの、何らかの原因で眼圧が上がる、または眼圧は正常でも視神経に異常が現れます。この場合、まずは目薬による治療を行います。一方、閉塞隅角緑内障では隅角が狭く水分の排出がうまくいかないため、目の中の大きな水晶体をコンパクトな人工レンズに置き換えるといった手術で水分の流れを促します。このように病型により治療の選択は異なります。
- Q通院のペースはどれくらいですか?
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A
緑内障は治療を継続することが重要で、適切な治療には定期的な受診が欠かせません。緑内障と診断した場合、当院では3ヵ月に1回程度のペースで来院いただいています。毎回、眼圧を測り、治療経過をチェックするほか、視野検査と眼底検査を3ヵ月ごとに交互に行い、その結果をみながら治療法を検討しています。ただし、症状が進んでいる場合にはより短い周期で検査を行い、病気の進行を注意深く診ていく必要があります。また、一度眼底検査を受けて特に異常が認められなかった方は、その後、数年おきに受診しておくとよいでしょう。特に、血縁関係に緑内障の人がいる場合には、3~5年に一度の検査をお勧めします。