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井出 広幸 院長の独自取材記事

大船心療内科

(鎌倉市/大船駅)

最終更新日:2026/10/05

井出広幸院長 大船心療内科 main

大船駅東口から徒歩約5分のビル3階にある「大船心療内科」。ビル1階からエレベーターに乗ると、到着するのは立体駐車場の1フロアだ。整然と車が並ぶ先に、同院の明かりが温かく灯る。まるで隠れ家のようなクリニックとなっている。同院は大船エリアで20年にわたり心療内科診療に携わってきた井出広幸先生が、2022年に開業。デイケアを併設し、薬のみに頼らず心身を支える精神医療を提供する。「私は『トラウマ屋さん』です。心の傷を治療し、生きづらさを除いてその人らしさを取り戻すことが理念です」と井出院長。開業時よりもそうした信念がよりクリアになったと力強く語る。そんな今の大船心療内科の在り方と井出院長の精神科医療に対する思いを聞いた。

(取材日2026年9月2日)

生きづらさを治し、自分らしさを取り戻すために

改めて、2022年に開業された際のお気持ちについてお話しいただけますか。

井出広幸院長 大船心療内科1

私はもともと消化器内科の医師として診療をしてきたのですが、その中で心の問題に起因する症状の存在に気づき、これまで約25年にわたって、身体の不調の診察と並行して、心療内科の分野で心の不調を診察してきました。可能な限りお薬に頼らない方法をお勧めしています。うつ病ならば抗うつ剤、不安に対しては抗不安薬、双極性障害があれば気分安定薬、幻覚・妄想には抗精神病薬などを組み合わせて処方し、副作用を乗り越えながら症状の緩和を図るのが、現在の精神科分野のベーシックな診療方法ですが、異なるアプローチを実践する場として開業したのが当院です。

そこからどのような点が変わられましたか?

開業以来、医師や看護師はもちろん、精神保健福祉士や公認心理師らがそれぞれ専門性を発揮しながら患者さんを支えて実践してきたことで、「生きづらさをケアし、心身の自分らしさを取り戻させるための場」というアイデンティティーがより明確になりました。大きく変わった点といえば、開業当初より併設してきたデイケアのスペースが広くなり、心の調子を崩した会社員限定のリワークデイケアから、すべての方に向き合う形になったことです。主婦も、学生さんも、お子さんも、ひいては根底にある親御さん側の問題なども、とにかくあらゆる方々の生きづらさを診ましょうと整えました。診察と、すべて保険診療で行うデイケアの二本柱です。

どういったタイミングで受診すれば良いのでしょうか?

井出広幸院長 大船心療内科2

毎日普通に過ごしているように振る舞っていても、なんかモヤモヤしていることはありますよね。「自分ってこれでいいのかな?」と迷ったりもする。そんな状態でも、どうぞいらしてください。「よく眠れていますか?」「お仕事には行けますか?」「ご家庭は問題なく成り立っていますか?」などと伺って、お薬を処方したり、安心感を与えたりするのが一般的な精神医療の姿勢です。当院も、病名をつけるところまでは同様です。違うのは、「なぜそうなったのか」というところまで診ていく点。本来の自分の心に傷を負った状態なので、痛みを除くだけにとどまらず、心の傷そのものをケアすることに重きを置いています。そうすることで本来の自分になれると考え、そこから自分の生きたい人生を生きていってほしい。そんな考えでサポートしています。

心の傷に迫る丁寧な診療と保険適応のデイケアの二本柱

実際の診察はどのように進みますか?

井出広幸院長 大船心療内科3

初診は大体40分程度としっかり時間を取ってじっくりお話をします。前提となる問診票をしっかり書いていただくことも大切です。初診ではA4用紙で15枚程度、10〜15分の診療となる2回目でも同じくA4用紙で10枚程度の問診票を書いていただきます。心療内科ではそうしたトラウマにふれないように診療することが一般的だと思いますが、それに起因する症状だけでなく、原因となる心の傷を根本から解決することをめざしていますので、やはり時間はかかります。

その後の診察はどのように展開するのでしょうか?

それぞれの状態に合わせて通院スパンは変わります。診察室では見立て、つまり「あなたは今どんな状態なのか?」「なぜそうなっているのか?」「最終的にはここをめざしていて、今は全行程のどこにいるのか?」をお伝えし、「今後こういうことに取り組んでいくと、こうした変化が現れると思いますよ」という方針を説明・共有し、納得していただきます。また、休職から復職への中間地点、あるいは社会に出る前の練習の場としてデイケアをご案内します。どんな発言も否定されず受け止めてもらえる温かい雰囲気の中で、発表やグループワークの経験を重ねていただく。休職期間が限られる中で「なんとかしたい」と駆け込みでいらっしゃる方も少なくありません。一人ひとりのペースに合わせて、少しずつ社会とのつながりを取り戻していただく場所でありたいと考えています。

デイケアでは具体的にどのようなことを行うのですか?

井出広幸院長 大船心療内科4

スケジュールの例としては、朝9時30分にチェックインして瞑想をしたら、季節に合わせたレクチャー。昼食後にヨガを行い、振り返りと自律訓練の方法を学んで15時30分に終了です。生活の基本である食習慣や睡眠の改善、マインドフルネス、運動、自分の取扱説明書づくりとしてのWRAPなど、内容は毎日変わります。根底にあるのは、病名や症状ではなく、「この人はどんな人なのか」という視点で一人ひとりと向き合う姿勢です。誰の意見も否定せず受け入れる場だからこそ、安心して自己表現の練習ができるのだと思います。変わりたい、良くなりたいという気持ちさえあれば、良くなる力は必ずご本人の中にある。私たちはその力を信じ、後押しすることしかできませんが、それこそが回復への一番の近道だと考えています。

デイケアスタッフはどのような方ですか?

皆それぞれに違ったバックグラウンドを持っています。5人いるスタッフの1人は、もともと病院勤務の助産師で、働きながら学んだ中医学の知識を生かしてくれています。経験に基づき誕生の奇跡、命の尊さを伝えるレクチャーや中医学に基づく生活上のアドバイスを担当してくれています。もう1人は南米ベネズエラ出身で、幼少期に禅の魅力にふれ、米国や日本の大学でマインドフルネスの研究を経て、公認心理師を取得した人物。とても温かい人柄です。彼は日本語に加え、英語やスペイン語、イタリア語も話せますので、将来的には外国籍の方への対応も広げていければと考えています。

生きづらい人の癒やしと成長をサポートする秘密基地

非常に実践的なデイケアなんですね。

井出広幸院長 大船心療内科5

「しっかり食べてよく寝て安心できる」を丁寧に行うだけで状態改善が図れ、癒やしと成長につながっていくと考えています。それをここで体験し、皆さんにも実践していただきたいのです。もちろん患者さんそれぞれの持つ心の傷は違いますし、通われた回数によって治療の段階も異なります。ただ、デイケアでの多くの段階は、この心の傷を受け入れるための基本動作、下地づくりのようなものです。丁寧に心理的柔軟性を鍛え、自分の心をちゃんと自分のものとして機能する状態にできたなら、個々の心の傷に向き合うことができると思っています。その手前の訓練を行うだけでも、状態の改善につながることがあるのです。

地域の生きづらい皆さんを救うための活動も行われているそうですね。

特別なことではありませんが、就労支援施設や高校などで定期的に講演を行い、「生きづらさを感じることは特別なことではない」という啓発活動をしています。また、鎌倉女子大学の臨床心理室と連携を取って、サポートも行っています。

最後にメッセージをお願いします。

井出広幸院長 大船心療内科6

何かしら、「生きづらさ」を感じていらっしゃる方は、どなたでもどうぞいらしてください。当院は、秘密基地のような立地で、人目を気にせず来院いただくことができますし、これまで心療内科や精神科を受診したことのない方でも、臆することなくお越しいただけると思います。また、当院には女性医師を含む4人の医師が在籍しています。話しやすいタイプの医師に出会うこともできるでしょう。もちろん、これまでいくつかの精神医療機関を巡って納得のいく答えが得られなかった患者さんも歓迎します。気軽にスマートフォンから診療予約ができますので、ぜひお越しください。