丸山 麻美 先生の独自取材記事
にじいろこどもとみんなのクリニック
(八王子市/西八王子駅)
最終更新日:2025/06/30

西八王子駅から徒歩3分という好立地に「にじいろこどもとみんなのクリニック」はある。壁一面に虹やキリンが描かれた待合室は明るく楽しい雰囲気。2024年10月から同院の常勤医師として診療を行う小児科医の丸山麻美先生は、宮崎医科大学を卒業後、自治医科大学や同大学附属さいたま医療センターのNICU(新生児集中治療室)などで長年研鑽を積んだ。低体重で生まれた赤ちゃんや、生まれてすぐにサポートが必要な赤ちゃん、命を維持することが厳しい状況にある赤ちゃんたちに寄り添ってきた丸山先生は、「命が生まれ、その命が育っていくことは奇跡です」と語る。子どもたちへの愛情あふれる丸山先生に、保護者もサポートする同院の特徴や、診察の際に心がけていることなどを中心に話を聞いた。
(取材日2025年6月11日)
退院後の子どもたちをケアするため町のクリニックへ
これまでのご経歴と、こちらで診療を行うようになったきっかけを教えてください。

大学を卒業後、自治医科大学の小児科に入局し、6年間の在籍中に小児科医としての基礎をたたき込まれました。その後、同大学附属さいたま医療センターが小児科・周産期科を立ち上げるのに合わせて異動、NICUに約16年在籍しました。NICUでは未熟児や先天的な疾患を持つ赤ちゃんたちを集中治療しますが、時には親御さんに、赤ちゃんの病気について厳しい事実を伝えなければならないときもあります。NICUにいた赤ちゃんは、治療を終えて何とか帰宅できるようになっても、往診医や訪問看護師たちのケアが必要な場合があります。しかしNICUの医師は、治療してきた赤ちゃんのその後が気になっても近くでサポートできません。お母さんにとって赤ちゃんの疾患は大変なショックで、精神的に不安定になるケースも多く経験してきました。そんな退院後の赤ちゃんやお母さんたちの助けになりたいと思い、地域のクリニックで診療を行うことを決めました。
NICUでのご経験は、現在の診療にどう生かされていますか?
NICUは命を助けることが前提の赤ちゃんが対象なのに対し、クリニックの小児科は普段健康な子どもたちが何かあったら来るところなので性質は異なります。しかし、クリニックに来るお子さんの中にも、NICUの卒業生が多くいらっしゃいます。NICUでどのような治療を受けてきたか、入院中どんな気持ちでわが子を見ていたのかがよくわかります。NICUでの多彩な疾患の治療経験とともに親御さんの気持ちに共感できることが強みとなっていると思います。
駅の北口に分院がありますがどのように連携していますか?

私も週に1度は北口院に診察に行きますし、北口院の塚原正之院長もこちらで診察を行っています。患者さんの情報は両院で共有しているため、例えば、当院が予約でいっぱいのときには患者さんは北口院に行くことも可能です。当院と北口院はともに小児科の診療科目が多岐にわたり、お子さんに困ったことが起こったときの窓口の役目を務めています。何かあればまず当院にお越しいただき、こちらで解決できない疾患の場合には必要に応じた病院をご紹介しています。
思わぬケガの際にも、窓口となれるクリニックをめざす
多い主訴は何でしょうか? 救急的な対応もされているそうですね。

一番多いのは風邪ですね。そのほかにはケガ、やけど、イボの治療、犬に噛まれた、自転車で転んだなど子どもならではのさまざまな訴えがあります。例えば、自転車のケガが大したことなくても、そのケガで口の周りを擦ったため痛がって水や食事をとりたがらないなどということが子どもには起こるため、ケガ以外のケアも必要なのです。生後2ヵ月の赤ちゃんが猫に引っかかれたけれど皮膚科では診てもらえず、当院にいらした例もありました。そのようないざという時の救急対応ができる医院でありたいと思っています。また当院は小児科のクリニックには珍しく、超音波診断装置を備えているのですが、これは痛くない検査ができるためお子さんを診療する際にとても役立っています。
お母さん方の悩みも広く受けつけているそうですね。
月齢による乳幼児健診を実施しているのですが、その時に親御さんの悩みを聞き出すように努めています。始めの頃の悩みは、ミルクを飲むと吐いてしまう、おむつかぶれが良くならないなど、そのうちにドライヤーはいつ頃から使ったらいいのか、日焼け止めは使った方が良いのかなどと、お子さんの成長に合わせ保護者の悩みも変化していくものです。子育て広場のようなものに参加したり、保健センターに相談に行ったりなどの手段もありますが、当院を受診された時には、なんでも聞いて安心していただきたいですね。育児用品についても、現在は哺乳瓶の種類も豊富ですし、おむつのサイズもいろいろとあるため選択に悩むこともあるでしょう。私も時々育児用品売り場をのぞき、今はこういうものがあるのかと情報を仕入れ、親御さんの悩みに対応できるように備えています。
お子さんを診察する際、心がけていることは何ですか?

子どもたちが怖がらないことを一番に心がけています。聴診器を当てる時など、膝をついて子どもの目線に合わせて診察するようにしています。また、常に笑顔でいることも心がけています。大きな人形を抱えてきた子にその人形を褒めると、また褒めてもらおうと次は違う人形を抱えてきたりして、子どもはかわいいですよ。私は娘がいるのですが彼女に教えてもらいながら、子どもたちの好きなキャラクターを学んでいます。診察の際に好きなキャラクターの話をすると、子どもたちも急に話しだして診察がスムーズに進むことが多いのです。また、診察時にお子さんが泣きだすと看護師がすぐに泣き止ませに来てくれたり、受付は笑顔で子どもたちに対応してくれたりと、スタッフたちの働きにはとても助けられています。
子どもという命が元気に育っていくためのサポートを
心に残るエピソードをお聞かせください。

NICUで、赤ちゃんたちを看取った経験が何よりも心に残っています。短い命であれ、お母さんたちは本当に赤ちゃんを愛していました。そのような姿を見てきて、子どもは愛されて育つものであり、どの子にも愛情を注ぐべきだと実感しました。私もNICUの医師という立場で、そんな赤ちゃんたちにわが子のように接してきました。今当院で日々子どもたちを見て、よくぞここまで育ってくれたという思いで胸がいっぱいになります。命が生まれ、その命が元気に育っていくことは奇跡でしかありません。そんな奇跡がつながって子どもたちは今ここにいるのだという思いで診察に向き合っています。
ご趣味や休日の過ごし方について教えてください。
以前はスポーツをいろいろとやっていましたが、現在は格闘技観戦が趣味ですね。それが高じて休日は総合格闘技の試合のリングドクターをやっています。最前列で見守りながら観戦できるメリットもあります(笑)。アマチュア大会は大人だけでなく小学生も参加しています。キックボクシングやムエタイなどさまざまな格闘技を習っている子どもは多いですね。子どもたちが安全にスポーツを楽しめるよう応援しています。リングドクターの主な仕事は、安全に試合を見守ることとケガの応急手当ですね。また数ヵ月に1度、自治医科大学附属さいたま医療センターで、新生児蘇生講習会の指導に行っています。新生児蘇生とは生まれたばかりの赤ちゃんの命を救うための技術をより多くの方に伝えるもので、その講習会は世界中で行われています。新生児に関する仕事と新生児への想いを忘れないようにこれからも続けていきたいと思っています。
今後の展望と、読者へのメッセージをお聞かせください。

クリニックに来てくれた子どもたちにこれからも愛情を持って接していきたいと思っています。お母さんたちには育児書に載っていない細かい悩みも気軽に打ち明けていただきたいですね。時々「こんなことで来てしまってすみません」とおっしゃるお母さんもいますが、そのようなお気遣いは無用です。正解がないこともたくさんあるのが子育てですので、お母さんたちと一緒に悩みを共有していきたいですね。ママ友に相談するような感覚でいらしていただけるとうれしいですね。この土地は働く母親が多く皆さん大変かと思いますが、当院は、そのようなお母さんたちやその子どもたちのサポート役であり続けたいと思っています。