井口 貴裕 理事長の独自取材記事
いぐち整形外科
(福岡市西区/姪浜駅)
最終更新日:2025/07/17

姪浜駅から徒歩約16分、明治通りとマリナ通りの間に位置する「いぐち整形外科」。小戸公園に近く自然豊かなエリアで、2021年10月に開業した。グレーを基調としたクリニック内には木目調の家具が配置され、落ち着いた雰囲気の中で診療を受けることができる。日本整形外科学会整形外科専門医である井口貴裕理事長は、急性期病院での手術経験が豊富で、骨折をはじめとした外傷から人工関節置換術まで幅広く対応してきた。その経験を生かし、「手術を受けざるを得ない状況になる前に、手術を未然に防ぐ方法もあるはず」と、これまで以上に患者に寄り添った医療の提供をめざしている。そんな井口理事長にこれまでのキャリアや、クリニックの特徴、今後の展望などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2025年5月27日)
外傷や関節痛、慢性的な肩凝りまで幅広く対応
グレーの色合いで、ある種クリニックらしくない落ち着いた院内ですね。

医療機関は白のイメージが強く、それだと患者さんが緊張してしまったり、恐怖感を感じてしまったりするのではないかと考え、グレーを基調にしたデザインにしています。また所々ナチュラルな木の家具を入れていますが、出身が家具の町である大川市なので、自然の木のぬくもりを取り入れたかったんです。休日には子どもたちとキャンプに行ったり、海に出かけたり自然とふれあうことも好きですからね。待合室には大きな窓を配置し、明るい雰囲気がつくれるように工夫しています。整形外科の診療では患者さんの体の動きを見ることもあるので、診療室・リハビリテーション室も広く取っています。そのおかげもあって、クリニック全体が開放的なイメージになっているのではないかと思います。
姪浜で開業に至った理由について教えてください。
姪浜や小戸の辺りは自宅から比較的近く、小戸公園にも子どもを連れてよく遊びに来ていました。その頃からこのエリアの雰囲気や太陽の光の心地良さを感じていた、というのが大きな理由でしょうか。また小戸には整形外科のクリニックが足りておらず、地域の皆さんにも貢献できるのではないかと思いました。運動不足から体の痛みなどを訴える方もいますが、普段から少し意識して運動することを始めてみてはいかがでしょうか。もちろんジョギングやウォーキングを週3回程度できれば理想的ですが、ゼロと1ではまったく違います。週1回からでも良いので、できる範囲から運動することをお勧めします。
現在はどのような症状を訴える患者さんが多いのでしょうか?

このエリアは住宅が多いので、小さなお子さんから高齢者までさまざまな世代の方がいらっしゃいます。整形外科は腰痛や関節痛などを訴えるご高齢の患者さんが多い印象もあるかと思いますが、意外と働き盛りの世代が多いですね。主訴としては腰痛や肩の痛みが多いでしょうか。あとはお子さんの骨折などの外傷、学生からはスポーツによる痛みやケガといった相談があります。野球肘やいわゆる成長痛のオスグッド病など。一方、肩凝りや首の凝りなどでクリニックを受診して良いのかと思う方もいらっしゃるかと思いますが、慢性的な痛みがあるということは体の硬さや姿勢の悪さなど何かしらの原因があります。そういった困り事についても解消をめざしていきたいと思いますので、症状があれば気軽にご相談ください。
手術を未然に防ぐ診療をめざして開業を決意
先生は長らく急性期医療に携わってきたそうですね。

大学を卒業後、九州大学病院の整形外科に入局し、さまざまな関連病院を回りましたが、2011年から約10年間浜の町病院に勤めました。急性期病院なので基本的には手術に携わり、中でも加齢に伴って軟骨がすり減った変形性関節症に対する、膝関節や股関節の人工関節置換術を多く担当してきました。その他肩関節の関節鏡視下手術にも多数取り組みました。外傷担当のチーフだったので救急の外傷・骨折の手術にも関わってきましたが、手術だけではなく外来も担当し、腰痛や神経痛をはじめとした整形外科領域全般の診療を経験することができました。その経験がクリニックでの診療にも大いに役立っています。
それから開業を決意されたわけですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
手術を中心とした診療にはとてもやりがいを感じていましたが、患者さんと接するのは急性期がメインで、以降は数ヵ月に1回、1年に1回という経過フォローの時だけ。そうした中でもっと患者さんと密に接しながら診療をしたいと思うようになりました。それに手術を避けられない状態になってしまった患者さんたちの姿を見て、未然に防ぐような診療ができればと考え開業を決意しました。だからこそ診療においては主訴だけではなく生活習慣や運動習慣など患者さんの背景も把握し、症状を取り除くことに加え、どこに原因があるのかまで解明するように努めています。例えば膝の軟骨のすり減りが原因の場合、元に戻したり若返らせたりすることはできません。そのため筋力や体の柔軟性を維持し、痛みが出にくい体づくりをめざしていきます。
スタッフの皆さんの笑顔も非常にすてきですね。

当クリニックには事務や看護師、理学療法士など約20人がいますが、スタッフには恵まれていると思いますよ。部署間の連携もスムーズですし、非常に助かっています。看護師も理学療法士も、それぞれ専門的な仕事に取り組んでいますが、オーバーラップしている部分は出てきます。そういうところについてはお互いに協力し合うため、積極的にコミュニケーションを図るようにしています。患者さんに対しては話しやすい雰囲気をつくるということも大切ですが、人生の先輩方も多いので言葉遣いなど基本的な礼儀はしっかりと守るように伝えています。受付であっても問診票を渡して終わりではなく、そばに行ってしっかりとお話しするなど、患者さんに寄り添える素晴らしいスタッフたちだと感じています。
歩きにくい、痛みがある。そんなときは気軽に相談を
リハビリが充実しているのも特徴の一つですね。

理学療法士が7人在籍しているので、担当制でリハビリを実施しています。担当制のほうが患者さんの変化を見逃しにくく、また良くなっている・悪くなっているという経過も細かく見えてきますから。例えば産後ケアであれば女性スタッフが担うなど、スタッフそれぞれの強みを生かして担当を割り振っています。それにリハビリはクリニックに通えば終わりというものではありません。家にいる時間でも簡単な運動ができるように指導するようにしています。機器面では足底腱膜炎や外側上顆炎などの炎症を抑えるための拡散型圧力波治療器を新たに導入し、充実を図っています。
骨粗しょう症の治療にも注力しているそうですね。
高齢の方が骨折で診療にいらっしゃった場合、骨粗しょう症であるケースは多いです。いまだに骨粗しょう症の治療率は低く、骨折してから発覚するということが多い病気で、中には早く評価をして治療していれば骨折を防げたのではというケースもたくさんあると思っています。高齢になってからの骨折は寝たきりにもつながってしまいますし、特に閉経後の女性は骨粗しょう症が進行していることがあるので、一度は検査をしたほうが良いでしょう。自覚症状がないので難しい面もありますが、身長が2センチ程度低くなったと感じたらそれは一つのサインかもしれません。予防のためにはバランスの良い食事が大切です。骨のためにいいからとカルシウムばかり摂取するのではなく、吸収を促すビタミンDも意識して取りましょう。食事で補いにくい栄養素なので、サプリメントも活用してみてください。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

予防にも力を入れていきたいので、今後は健康教室などを開催して、地域の方たちに運動の大切さを伝えながら、ケガや痛みを未然に防ぐための取り組みを進めていきたいと思っています。特にスポーツ障害は体が硬いなどの理由で起きることが多いので、故障する前の取り組みもやってみたいですね。また肩凝りや腰痛などで悩んでいる方も多いと思いますが、やはり運動不足も一つの原因。リラックスした状態で体を動かすことが重要です。運動する時間がないという方は通勤の際に一駅歩くという方法も良いですが、できるだけ意識して運動する時間を確保してみましょう。また、座っている状態は腰に負担をかけるので、長時間同じ姿勢を取らないなど、ちょっとした心がけも大切です。整形外科は痛みとしびれ、歩行など運動機能の異常に対応する診療科。歩きにくい、痛みがあるといった際にはぜひご相談ください。