永井 正志 院長の独自取材記事
ながいキッズクリニック
(宝塚市/宝塚駅)
最終更新日:2024/09/24
宝塚市川面、御殿山筋沿いにある「ながいキッズクリニック」は2021年10月に開院した小児科クリニック。兵庫県立こども病院など多くの病院で、小児科医として経験豊富な永井正志院長が、遠方の病院まで通う子どもが多かったこの地域の小児医療に取り組みたいと、出身地である宝塚で開院した。子どもの幅広い疾患に対応しており、中でも診療経験が豊富な低身長症、思春期早発症については、成長発達に特化した診療枠を設け、専門的な検査や治療ができる体制を整えている。小児科医になるために医師の道へ進んだという永井院長に、診療内容や子どもの病気について、じっくりと話を聞いた。
(取材日2021年11月13日/情報更新日2024年9月12日)
地域の小児医療に取り組むため、出身地の宝塚で開院
2021年10月に開院されました。なぜこの街での開院を選ばれたのでしょうか。
出身地は西宮市ですが、曽祖父の家がこのクリニックから徒歩5分の場所にあり、なじみのある地域でした。これまで神戸大学医学部附属病院、加古川西市民病院(現・加古川中央市民病院)、六甲アイランド甲南病院、兵庫県立こども病院などで小児科医として勤務してきましたが、宝塚市のこの地域は住人に比べ小児科が少なく、西宮市や神戸市など遠くまで通院されている子どもさんも多かったんですね。僕が専門的に診ていた低身長症は、自宅で注射や投薬をして治療しますが、受診のために、子どもさんだけでなく、親御さんも仕事を休んだり遅刻したりしなければならないケースが多く、負担がとても大きいんです。遠くまで通院する子どもさんやご家族に対し、なんとかできないかという思いが強かったんです。
どのような患者さんが来られていますか?
この地域は小児科が少なかったこともあり、近隣のお子さんが大半ですが成長発達の外来などは伊丹や川西からも来ていただいてます。多くの患者さんに来ていただいているので、予約制など待ち時間をできる限り短くするように努めていますが、まだまだ改善していかなければと思います。神戸や大阪のような都市部ではないところで小児診療をすることは、医師になった頃からずっと決めていました。地域の小児医療に取り組みたい、お子さんのあらゆる疾患に対応したいと考えて開院したので、風邪や腹痛など小児全般をはじめ、予防接種、低身長症、アレルギー疾患、夜尿症など幅広く診療しています。
院内は、親しみやすく温かい雰囲気ですね。
クリニックのマークは、さまざまな個性を複数の色で示す「虹」をコンセプトに決めて、描いていただいたものです。院内の診療スペースをさまざまな色で分け、子どもさんがクリニックを怖がらないように、またわかりやすいようにしています。また、聴覚過敏の子どもさんに配慮し、あえて待合室でテレビや音楽を流していません。院内は完全バリアフリーで、クリニック横に、車9台の駐車場があります。電車やバスで体調が悪い子どもさんを連れてくるのは大変ですし、待合室で待つことが負担や不安になる子もいます。遠方から来られるケースも考えて、広い駐車スペースにしました。
低身長症や思春期早発症の検査や診断をクリニックで
医師になり、小児科に進まれたのはなぜですか?
もともと子どもが好きで、医師になるというより、小児科医になるために医学部に進みました。医学部卒業後、小児科以外でも研修したのですが、大人の場合、ご本人に治療の意志がないと、なかなか治せない病気が多いんです。入院患者さんが退院後に生活習慣などが改善できず、再発、入院されるケースを何度も目の当たりにしてきました。小児科は、診療がスムーズにいかないことも多く、「おなかが痛い」といって胸を押さえることもありますし、症状を聞き出すだけでも容易ではありません。何より治療や予防接種の注射など、医師は子どもから嫌われる職業ですしね(笑)。ただ、嫌われるけれど、子どもの役に立つ立場ですし、親御さんやご家族含めみんなが治したいという気持ちがあり、治療に取り組んでくださいます。医師も同じ志で一生懸命、一緒に治療に取り組める小児科に魅力を感じています。
これまでどのような疾患を多く診られてきましたか?
小児科は総合的な、全身管理が必要な診療科なので、大学病院や総合病院で、神経や筋肉、療育、発達障害、内分泌など、さまざまな小児疾患を担当してきました。その後、兵庫県立こども病院で勤務するようになり、小児内分泌を専門とし、低身長症の子どもさんを多く診療してきました。小児科医の先輩に「大人の場合は、例えば良い結果が見込めない手術や治療だと、断念するケースがある。でも子どもの場合は、副作用や失敗の可能性が大きくても、わずかでも成功の可能性があるなら、親御さんはその手術や治療を希望する。小児科医は、そこでストップをかけることも大切だ」と言われたことがあります。今もそのことを常に念頭に置いて、子どもさんにとって最良の医療になるように診療に取り組んでいます。
成長発達に特化した外来を設け、低身長症や思春期早発症の診療をされていますね。
低身長症、思春期早発症については、当クリニック内で専門的な検査や診断、治療が可能です。低身長の場合多くは家族性や体質性、食事や睡眠不足が原因と考えられますが、中には成長ホルモン分泌不全、甲状腺疾患、遺伝性疾患、臓器や骨の異常が原因となることもあります。これらは幼稚園や保育園、学校の集団健診で発見されることが多いです。一方、親御さんが気づかれるケースが大半なのが思春期早発症です。特徴としては、10歳頃までに男児は陰毛が生えてくる、女児は生理が始まる、乳房が膨らむなどの症状が見られます。思春期が来ると身長の伸びが早く止まってしまいますので、早期発見、早期治療開始がとても大切です。
医師の所見より、家族の所見を信じて原因を探す
患者さんと接する際に、心がけていることはありますか?
何より丁寧に説明すること、できる限り話をし、お話を伺うことです。また医師である自分の所見よりも、親御さんの所見を重要視するようにしています。診察や検査で悪くなかったり、子どもさん自身が元気だったりしても、親御さんが「何かおかしい」という場合は、それを信じてあらためて原因を探すようにしています。例えば、診察で何もなくても、お母さんが「いつもより声が低い」という場合、風邪や喘息などが潜んでいるかもしれません。特に喘息は、夜間や早朝に症状が出やすく、クリニックの診察時間には症状が落ち着いていて、発見しにくいこともあります。いつから、どのようにおかしいか、変化があるかなど記録しておいてもらえると、診断に役立ちます。
子どもの病気や症状は発見や気づくのが遅くなることもあるそうですね。
例えば、甲状腺など内分泌系疾患では倦怠感が特徴ですが、我慢強い子も多く、なかなか症状を訴えないため、学校の先生や親御さんはただ活気がない、やる気がないと受け取ってしまいがちです。帰宅したらすぐ寝る、横になるなど、ご家族が気づくことが多いので、少しでも何かおかしいと思ったら受診してほしいです。以前、勤務医時代に、中学生で陸上部所属の患者さんを担当したことがあるんです。中学生は成長期で、練習を重ねるほどうまくなるはずですが、タイムが悪くなっていったんですね。何かおかしいと受診され、呼吸器の検査を行ったところ、運動時に起こる「運動誘発喘息(アスリート喘息)」だとわかりました。診断時は中学卒業間近で、すでに部活で活躍できる機会を失っていて、早く発見できていればと思いました。
最後に、患者さんやご家族にメッセージをいただけますか?
地域の小児医療を担いたいと思い、この宝塚で開院しました。子どもさんの些細な変化や、軽い体調不良であっても、気になることがある場合はご相談いただければと思います。また思春期早発症、低身長症、夜尿症など、治療が必要かどうか悩まれることもあるかもしれませんが、早期発見が大切な場合もありますので、早めに受診していただきたいです。子どもさんの体調不良は病気ではない、治療しなくてよいケースも多いです。不安を取り除くために、相談だけでも気軽に来院いただければと思います。