永井 正志 院長の独自取材記事
ながいキッズクリニック
(宝塚市/宝塚駅)
最終更新日:2025/08/22

宝塚市川面の御殿山筋沿いにある「ながいキッズクリニック」は、2021年に開業した小児科クリニック。小児科医として多くの病院で経験を積んできた永井正志院長が、「遠方の病院まで通う子どもが多かったこの地域の小児医療に取り組みたい」と、ゆかりのある宝塚の地を選んだ。子どもの幅広い疾患に対応し、中でも診療経験が豊富な低身長症、思春期早発症については、成長発達に特化した診療枠を設け、専門的な検査や治療ができる体制を整えている。小児科医になるために医師の道へ進んだという永井院長に、診療内容や子どもの病気について話を聞くことにした。
(再取材日2025年7月24日)
専門性を生かし、地域に根差した小児医療を実践
こちらでは一般的な小児科やアレルギーの外来に加え、成長発達専門の外来も設けているそうですね。

医師になった頃から、神戸や大阪といった都市部ではなく、地域に根差した小児医療に取り組みたい、子どもの疾患に幅広く対応したいと決めていました。そんな思いから、当院では風邪や腹痛など小児全般の疾患はもちろん、アレルギー疾患、夜尿症、予防接種など幅広く診療しています。小児科は全身の健康状態を総合的に診る診療科です。私はこれまで神戸大学医学部附属病院や総合病院で小児科医として勤務し、多様な分野の診療に携わってきました。その後、兵庫県立こども病院では小児内分泌を専門とし、特に低身長症のお子さんを多く診てきました。そうした経験をもとに、当院では成長発達に特化した外来を設け、低身長症や思春期早発症などに対する専門的な検査・診断・治療ができる体制を整えています。
宝塚市で開業されたきっかけについて教えてください。
宝塚市は今でこそ小児科の数も増えてきましたが、開業当時は住民の数に対して小児科が少なく、わざわざ西宮市や神戸市まで通院されるお子さんが多い状況に胸を痛めていました。特に低身長症など内分泌を専門にしている小児科医は、基本的に大学病院や大きな病院にしかおらず、地域のクリニックで対応できる小児科医は限られています。しかし、大学病院は予約が取りづらく、診察も平日の場合が多いなど、通院へのハードルも高くなりがちです。だからこそ、地域のクリニックであっても専門的な診療を提供することで、患者さんやご家族の負担を少しでも減らしたいと考えました。それがこの地で開業を決めた理由です。また、この場所は祖父の家のすぐそばでもあり、幼い頃からなじみのある地域で小児医療に携われることをとてもうれしく思っています。
どのような患者さんが来院されていますか?

一般診療に関しては、近隣にお住まいのお子さんが大半を占めていますが、成長発達の外来などには、伊丹市や川西市、たつの市など、遠方からお越しの方もいらっしゃいます。低身長症は判定基準が難しく、受診したからといって治療適応にならないケースが多いのですが、それでもお子さんの成長に不安を感じた時に大学病院のような大きな施設ではなく、地域のクリニックである当院なら気軽に相談ができ、平日午後や土曜日にも診療を行っている通いやすさなど、そこに魅力を感じてくださった方々も多いのかなと思います。成長の経過を一緒に見守っていける存在として、信頼していただけるのはとてもありがたいことです。
専門的な検査・診断を身近なクリニックで
低身長症や思春期早発症の診療について詳しく教えてください。

低身長症は多くの場合、体質や家族性、食事・睡眠不足が原因と考えられていますが、中には成長ホルモンの分泌不全や甲状腺疾患、遺伝性疾患などが原因となっていることもあります。そうした背景を見極めながら、当院では専門的な検査を行い、必要に応じて治療へとつなげていきます。一方で思春期早発症は、通常よりも早く、10歳前後の時期に体に思春期の兆候が現れるもので、男児は陰毛が生え始める、女児では乳房のふくらみや初経が始まるなどの症状が見られます。これらの疾患はこれまでは幼稚園や学校などの集団健診で見つかる場合が多かったのですが、最近は保護者の方が日常生活の中で成長の変化に気づき、受診につながるケースが増えています。お子さんの発育に少しでも不安を感じた際には、気軽にご相談いただければと思います。
院内も雰囲気がすてきです。設計などでこだわったことがあれば教えてください。
子どもたちがリラックスして通院できるよう、温かみのある雰囲気づくりを大切にしています。待合室には青やピンクなどカラフルな椅子を配置し、キッズスペースも設けています。また、聴覚過敏のお子さんにも配慮し、あえて待合室ではテレビや音楽を流していません。院内は完全バリアフリーで、診察室は個室にし、プライバシーにも配慮しています。また、クリニック横には9台分の駐車スペースを確保しています。体調の優れないお子さんを連れて、公共交通機関での来院はご家族にとって大きな負担ですし、待合室での待機がつらいお子さんもいます。遠方からも安心して来院いただけるよう、できる限り通いやすい環境を整えました。
新たに検査機器を導入し、診療体制をさらに強化されたそうですね。

2つの先進的な検査機器を導入しました。1つは、感染症の原因を約20分で特定できる同時多項目PCR検査機器。風邪やインフルエンザを含む最大12種類のウイルスを、1回の綿棒検査で同時に検出できます。原因不明の発熱や長引く風邪症状にも迅速に対応でき、お子さんの検査負担を減らせる点もメリットです。もう1つはアレルギー検査機器。指先からわずか1滴の血液で41項目のアレルゲンを調べられ、30分ほどで結果が出ます。アトピーのあるお子さんが離乳食を始める際などアレルギーの不安がある場面でも、静脈採血をせずに済み、神経損傷のリスクなども回避できる安全性の高い検査です。開業当初から「大学病院レベルの診療や検査を地域のクリニックで実現する」ことを目標としてきましたので、今後もこうした先進機器を取り入れながら、質の高い医療を提供していきたいですね。
子どもの小さな声に寄り添える医療提供を
小児科の道を選ばれた理由を教えてください。

もともと子どもが好きで、医師になるというよりも「小児科医になるために医学部に進んだ」といっても良いくらいです。未来ある子どもたちのために何か役に立てることがしたいという思いが、医師をめざした原点です。私たち小児科医は保護者の方の味方でもありますが、何より子どもの代弁者であるべきだと考えています。そのため、時には親御さんに対して厳しいことを言わなければならない場面もありますが、それもすべて、そのお子さんが成長した時に「あの時、こうしてもらえて良かった」と思ってもらえるような診療を心がけているからです。そうした責任の重さも感じながらも、患者さんとそのご家族と同じ志で一生懸命、一緒に治療に取り組める小児科医をめざしています。
診療の際、先生やスタッフの方々も接し方に気を配っているとか。
私が考える理想の小児科医は、自分の思いや不調をうまく言葉にできないお子さんの気持ちに寄り添い、その苦しみや悩みをくみ取った上で、適切な治療を提供できる存在です。だからこそ診療ではお子さんの顔をしっかりと見て、できる限りお話をするよう心がけています。当院では看護師6人、スタッフ6人の体制で診療を行っております。診察時には、保護者の方にじっくりとご説明ができるよう、お子さんのケアをそのスタッフが担当するなどサポート体制を整えています。さらに、離乳食アドバイザーの資格を持つ看護師・スタッフもおり、偏食や食の細さといった栄養面でのお悩みに対しても、きめ細かなアドバイスができるよう力を入れています。
患者さんやご家族へのメッセージをお願いします。

地域の小児医療に貢献したいという思いから、この宝塚で開業しました。お子さんのちょっとした体調の変化や軽い不調であっても、何か気になることがあれば、ぜひ気軽にご相談ください。また、思春期早発症や低身長症、夜尿症などはいずれも早期の発見・対応が大切な場合があり、特に低身長症については、女児は12歳頃、男児は13〜14歳頃になると、身長の伸びの可能性が低くなってしまうため、少しでも不安があれば、早めにご相談いただくことをお勧めします。どんな小さなことでも、お子さんの健やかな成長のために一緒に考え、サポートさせていただきますので安心してご来院ください。