田中 光恵 院長の独自取材記事
エムズクリニック
(練馬区/大泉学園駅)
最終更新日:2026/06/25
大泉学園駅南口近くの住宅街にある「エムズクリニック」。戸建て住宅を改装したアットホームな空間で、子どもの体の不調から発達や心の悩み、子育てに関する相談まで幅広く受けつけている。「小児科を中心に、子どもの体と心をトータルに診ています」と話すのは、院長の田中光恵先生。大学病院や地域の基幹病院の小児科、NICU(新生児集中治療室)などで長年診療に携わってきた経験を持つ。児童精神科の診療では、子どもを「病気」として捉えるのではなく、一人ひとりの特性や成長の過程を丁寧に見つめることを重視。必要に応じて診断や治療を行う一方で、経過観察を基本としながら、家族とともに子どもの成長を支える姿勢を大切にしている。同院の特徴や診療への思いについて、田中院長に話を聞いた。
(取材日2026年5月27日)
アットホームな雰囲気の中で確かな診療をめざす
駅近くですが落ち着いた環境のクリニックですね。

大泉学園駅周辺は、2000年頃からの再開発でいくつも商業施設が建ちましたが、当院はそうした場所から道を1本隔てたエリアにあり、昔ながらの住宅街が残っています。当院も、歯科医院だったテナントを引き継いでおり、あまり手を加えていません。窓の外には緑豊かな庭が広がっていて、診察室からもその様子が見えるんです。診察室も広々としていて、窮屈な感じはしないと思います。お子さんと一緒に来られた保護者から、「先生の話とこの景色に癒やされます」と言っていただいたこともあり、まさにアットホームな雰囲気なのだと思います。不安な気持ちで来院された患者さんに、安らぎを感じていただける雰囲気であれば良いなと思っています。
診療方針についてお聞かせください。
ここを開院するまでは病院の小児科などの勤務でしたが、どこもかなり忙しく、なかなかお子さんや保護者の話をゆっくり聞く時間は取れませんでした。ですから当院では、目に見えている症状のことはもちろん、それ以外のご不安や悩みについても伺って、一人ひとりにしっかりと時間を取って向き合っていきたいと考えています。現代の子育てでは、周囲に頼れる人がおらず、親と子だけで孤独に子育てをするという「孤育て」に陥りがちです。そうなる前に話を伺って、必要なら助言することも当院の大切な役割と考えています。
小児科の診療内容についてお聞かせください。診療ではどんな点に留意されていますか?

発熱、咳、下痢、腹痛といった「よくある」症状が中心ですが、まずは命に関わるような病気が疑われるものはないかを注意深く診て、必要な場合には病院を受診するようご案内します。子どもは自分が置かれた環境にとても大きく影響されますから、目に見える症状のことはもちろん、それ以外の「隠れた」不安や悩みも見落とさないよう、いろいろな可能性を考えて診察にあたっています。例えば、下痢をしているお子さんの治療では、お薬をお出しするだけでなく、親御さんに適切な食事をお伝えするようにしています。あるいは、親御さん自身に余裕がなくなってくると、お子さんは顔には出さなくても心を痛めていて、結果としてお子さんにさまざまな身体症状が出てくるかもしれません。お子さんの症状にアプローチすることだけでなく、お子さんが置かれた環境も含めて良い方向へ進められればベストだと思いますから、包括的な視点を忘れないよう心がけています。
児童精神科も標榜し、困り事に寄り添う
児童精神科も標榜されていますね。どのようなお悩みで来院されるのでしょうか。

20歳未満の方のメンタル面を診療しています。気分の落ち込みや不安感を訴えて来院される方が多く、不登校のお子さんも多くいらっしゃいます。不登校のお子さんは、学校でいじめられた、根も葉もないうわさを流された、勉強や部活を頑張りすぎて燃え尽きてしまったなど、さまざまな悩みを抱えて来院されます。うつ病の診断まではつかないくらいだけれど、困り事があるという方も多いですね。同伴する保護者の方も、「子どもがこんな状態になってしまった、どうすればいいんだろう」という大きな不安を抱えて来院されますので、丁寧に話を聞き、お子さんと保護者の方の双方を受け止める場所になれればと思っています。また、中高生のお子さんで、悩みを話すだけ話しに来て、心を軽くして帰っていくということも実は少なくないんです。目立った症状がなかったとしても、それくらい気軽な気持ちで来ていただきたいですね。
診療をされる上で、大切にされていることはありますか。
私は、子どもを病気のカテゴリーに当てはめて考えるのではなく、その子自身を丁寧に見ていきたいと考えています。発達や行動に心配があっても、子どもは成長する中で変化していくため、すぐに結論が出せるとは限りませんし、時間をかけて関わることで、その子の特性や強みが見えてくる場合もあります。そのため、まずは薬ありきでは考えず、お子さんの様子を見ながら、睡眠や運動、生活リズムを整えることを大切にしています。それでも学校生活や家庭生活に大きな支障があり、お子さん自身が困っている場合には、薬を使うことを検討します。今はいいお薬もありますので、必要な場合は少量から始め、経過を丁寧に確認しながら調整していきます。一度薬を出したら終わりではなく、その後も継続して状態を確認しながら、お子さんにとって何が一番良いかを一緒に考えていきたいと思っています。
最近多い相談はどんなものでしょうか。

最近はADHDや自閉スペクトラム症を心配して受診される方が増えてきています。そのような場合でも、同じようにすぐに診断名をつけず、その子がどんな生活をしているかを見るようにしています。今の子どもたちはスマホやゲームの中で過ごす時間が増えていて、外で思い切り遊んだり、自然に触れたりする機会が少なくなっています。ですから私は、まず十分に眠ること、体を動かすこと、外の空気を吸うことを大切にしてほしいとお話ししています。また、不登校のお子さんにもよくお伝えするのですが、家の中でただ過ごすのではなく、買い物や料理、洗濯など、家族の中で何か役割を持ってほしいんです。自分が家族の役に立っていると感じることは、自信や自立につながりますからね。子どもたちには、病気を治すというよりも、自分で生活できる力を少しずつ身につけてほしい。そのためのお手伝いをするのが、私の役目だと思っています。
子どもの健康や子育ての悩みなど気軽に相談を
先生が医師をめざしたきっかけをお聞かせください。

続けることで経験がキャリアになっていく仕事に就きたいと考え、あれこれ考えた末に医師を志しました。同じ病気でも患者さんごとに症状や治療法は違い、診察する度にこちらに新たな知識が蓄えられていく、いわば「患者さんが教科書」になる仕事なんです。もともと私は一つの道からそれずにコツコツ地道に積み重ねるのが好きなタイプ。診療経験が教科書の厚みを増すような医師の仕事は自分にピッタリだと思いました。もちろん、今もコツコツと積み重ねていますが、これまでの診療経験が患者さんの役に立てているなら、とてもうれしいですね。
開院されるまではどんな経験を積まれましたか?
福島県立医科大学の医学部を卒業後、慶應義塾大学小児科学教室に入局し、大学病院などで経験を積みました。その後、関連病院となる各地の基幹病院の小児科で診療し、国立栃木病院(現・栃木医療センター)ではNICU(新生児集中治療室)に2年間勤務していました。さらに伊勢原協同病院に勤務した後、出産、育児に入り、一児の母として子どもを育てる喜びと大変さの両方を経験しました。その後、産婦人科の専門医院での勤務などを経て、2021年に当院を開院しました。
読者へメッセージをお願いします。

現代の親御さんは本当に頑張っていると思います。私が育った頃には考えられなかった、核家族化、地域コミュニティー希薄化の時代です。自分の親を頼ろうにも遠く離れた場所にいて頼れず、隣の部屋に住んでいる人の名前すら知らないような状況で、子育てしている人も多いのではないでしょうか。エムズクリニックという名前は、私の名前の頭文字でもありますが、MotherのMでもあります。困ったとき、お母さんのように頼れるクリニックでありたいという願いを込めました。お子さんのことで困ったら、お気軽にいらしてくださいね。

