田中 光恵 院長の独自取材記事
エムズクリニック
(練馬区/大泉学園駅)
最終更新日:2025/07/04

大泉学園駅南口近く、落ち着いた雰囲気の住宅街の一角に「エムズクリニック」はある。同院は子どもの全身の健康、精神面のこと、子育てや家族関係での悩みなどに幅広く対応している。「小児科をメインとしながら、体と心をトータルに診るために児童精神科も診療しています」と田中光恵院長。戸建て住宅を改装したクリニックで、アットホームな雰囲気も特徴。ウェブ予約にも対応した予約制を導入して、十分に時間をかけて子どもや保護者の話をじっくりと聞くことを大切にしている。大学病院や地域の基幹病院の小児科などに長く勤務し、NICU(新生児集中治療室)での診療経験も持つ経験豊富な小児科医師である田中院長に、同院の特徴や診療内容について聞いた。
(取材日2024年1月22日/再取材日2025年4月28日)
アットホームな雰囲気の中で確かな診療をめざす
駅近くですが落ち着いた環境のクリニックですね。

大泉学園駅周辺は、2000年頃からの再開発でいくつも商業施設が建ちましたが、当院はそうした場所から道を1本隔てたエリアにあり、昔ながらの住宅街が残っています。当院も、歯医者さんだったテナントを引き継いでおり、あまり手を加えていません。窓の外には緑豊かな庭が広がっていて、診察室からもその様子が見えるんです。診察室も広々としていて、窮屈な感じはしないと思います。お子さんと一緒に来られた保護者の方から、「先生の話とこの景色に癒やされます」と言っていただいたこともあり、まさにアットホームな雰囲気なのだと思います。不安な気持ちで来院された患者さんに、安らぎを感じていただける雰囲気であれば良いなと思っています。
診療方針についてお聞かせください。
ここを開院するまでは病院の小児科などの勤務でしたが、どこもかなり忙しく、なかなかお子さんや保護者の話をゆっくり聞く時間はとれませんでした。ですから当院では、目に見えている症状のことはもちろん、それ以外のご不安や悩みについても伺って、一人ひとりに対ししっかりと時間を取って向き合っていきたいと考えています。現代の子育てでは、周囲に頼れる人がおらず、親と子だけで孤独に子育てをするという「孤育て」に陥りがちです。そうなる前に話を伺って、必要なら助言することも当院の大切な役割と考えています。
小児科での診療ではどんな点に留意されていますか?

子どもは自分が置かれた環境にとても大きく影響されますから、目に見える症状のことはもちろん、それ以外の「隠れた」不安や悩みも見落とさないよう、いろいろな可能性を考えて診察にあたっています。例えば、下痢をしているお子さんの治療では、お薬をお出しするだけでなく、親御さんに適切な食事をお伝えするようにしています。あるいは、親御さん自身に余裕がなくなってくると、お子さんは顔には出さなくても心を痛めていて、結果としてお子さんにさまざまな身体症状が出てくるかもしれません。お子さんの症状にアプローチすることだけでなく、お子さんが置かれた環境も含めて良い方向へ進められればベストだと思いますから、包括的な視点を忘れないよう心がけています。
児童精神科も標榜し、困り事に寄り添う
小児科の診療内容についてお聞かせください。

発熱、咳、下痢、腹痛といった「よくある」症状が中心ですが、まずは命に関わるような病気が疑われるものはないかを注意深く診て、必要な場合には病院を受診するようご案内します。もちろん、「よくある」症状でも本人は大変ですし、親御さんはとても心配します。ですから、現在の症状を和らげることをめざすのに加え、親御さんには、今後考えられる症状の推移もお伝えして、寝かせ方や食事などについても、少しおせっかいなくらいアドバイスしています。そのせいか、患者さんから「親戚のおばさんみたい」と言われたこともあります(笑)。
児童精神科も標榜されていますね。
そうですね。20歳未満の方のメンタル面を診療しています。気分の落ち込みや不安感を訴えて来院される方が多く、不登校になっている方も多くいらっしゃいます。不登校のお子さんは、学校でいじめられた、根も葉もないうわさを流された、勉強や部活を頑張りすぎて燃え尽きてしまったなど、さまざまな悩みを抱えて来院されます。うつ病の診断まではつかないくらいだけれど、困り事があるという方も多いですよね。ほとんどの場合、保護者同伴で来院されますので、ご本人と保護者の方から丁寧に話を聞いた上で、一緒に解決策を考え、必要に応じて薬の処方などを行っています。
具体的には、どのような症状で来院されるのでしょう?

漠然とした不安を持ち続ける不安神経症、家庭では会話ができるのに外で初対面の人などとは話せなくなってしまう場面緘黙症(かんもくしょう)や、あるいは醜形恐怖症で自分の見た目を否定してしまう方、学校での対人トラブルをきっかけとしてずっと気分が落ち込んでいる方などさまざまです。同伴する保護者の方も、「子どもがこんな状態になってしまった、どうすればいいんだろう」という大きな不安を抱えて来院されますので、お子さんと保護者の方の双方を受け止める場所になれればと思っています。また、中高生のお子さんで、悩みを話すだけ話しに来て、心を軽くして帰っていくということも実は少なくないんです。目立った症状がなかったとしても、それくらい気軽な気持ちで来ていただきたいですね。
発熱患者を診る外来も開設されているのですね。
はい。主に新型コロナウイルス感染症、インフルエンザウイルス感染症の抗原定性検査を行っています。風邪症状であれば、子どもに限らず大人でも受診できるようにしているのが特徴です。2022年の上旬、新型コロナウイルス感染症の「第6波」が世間を騒がせていた頃から続けている外来です。当時、発熱したお子さんが連日来院していました。その際、お子さんを連れてくる親御さんも、お子さん同様に発熱したり、咳込んだりしていることが多かったのですが、小児科なので大人は受診できないだろうと思って、我慢している方が多かったんです。そこで発熱の外来を設けて、大人でも受診できるように改善しました。大人一人で受診される方もたくさんいらっしゃって、現在では、お子さんから80代くらいの方まで、幅広い年代の方に来院していただいています。
子どもの健康や子育ての悩みなど気軽に相談を
先生が医師をめざしたきっかけをお聞かせください。

続けることで経験がキャリアになっていく仕事に就きたいと考え、あれこれ考えた末に医師を志しました。同じ病気でも患者さんごとに症状や治療法は違い、診察するたびにこちらに新たな知識が蓄えられていく、いわば「患者さんが教科書」になる仕事なんです。もともと私は一つの道からそれずにコツコツ地道に積み重ねるのが好きなタイプ。診療経験が教科書の厚みを増すような医師の仕事は自分にピッタリだと思いました。もちろん、今もコツコツと積み重ねていますが、これまでの診療経験が患者さんの役に立てているなら、とてもうれしいですね。
開院されるまではどんな経験を積まれましたか?
福島県立医科大学医学部を卒業後、慶應義塾大学小児科学教室に入局し、大学病院などで経験を積みました。その後、関連病院となる各地の基幹病院の小児科で診療し、国立栃木病院(現・栃木医療センター)ではNICU(新生児集中治療室)に2年間勤務していました。さらに伊勢原協同病院に勤務したあと、出産、育児に入り、一児の母として子どもを育てる喜びと大変さの両方を経験しました。その後、産婦人科の専門医院での勤務などを経て、2021年に当院を開院しました。
読者へメッセージをお願いします。

現代の親御さんは本当に頑張っていると思います。私が育った頃には考えられなかった、核家族化、地域コミュニティ希薄化の時代です。自分の親を頼ろうにも遠く離れた場所にいて頼れず、隣の部屋に住んでいる人の名前すら知らないような状況で、子育てしている人も多いのではないでしょうか。エムズクリニックという名前は、私の名前の頭文字でもありますが、MotherのMでもあります。困ったとき、お母さんのように頼れるクリニックでありたいという願いを込めました。お子さんのことで困ったら、お気軽にいらしてくださいね。