金子 完 院長の独自取材記事
金山駅前 心臓と血管のクリニック 金子医院
(名古屋市中区/金山駅)
最終更新日:2023/08/02

金山駅から徒歩2分のアクセス便利な場所に2021年7月に開業した「金山駅前 心臓と血管のクリニック 金子医院」。アメリカンレトロな雰囲気漂う院内には、金子完(かねこ・かん)院長が海外留学などで訪れた世界各地の本や置物がさりげなく飾られ、落ち着いた癒やしの空間になっている。大学病院や市中病院で心臓血管外科医師として心臓手術や大動脈手術など人命に関わる大きな手術に携わってきた金子院長だが、下肢静脈瘤で苦しむ患者にしっかり向き合いたいと開業を決意。医師が一方的に治療を進めるのではなく、患者自身が自分の病気と向き合って治療に取り組む診療をめざす金子院長に、専門の下肢静脈瘤治療や開業への思いについて語ってもらった。
(取材日2021年8月16日)
癒やしの場となるようなクリニックに
まず初めに、医師を志したきっかけをお聞かせください。

父が整形外科の医師でしたので、子どもの頃からその姿を見ていて「人を助ける」という仕事に魅力を感じていました。父だけでなく、母方の曽祖父、祖父も医師なんです。金子医院は曽祖父が1908年に開業し、その後祖父が継ぎました。祖父が亡くなった時、僕はまだ研修医だったため医院を継ぐことができず、その時金子医院は一度閉院することになり、とても心残りだったんです。今回あらためて開業することになり、曽祖父や祖父の思いもしっかりつないでいきたいと思っています。受付にはその思いを受け継いでいく象徴として、初代金子医院の看板を飾ってあるんですが、祖父たちに見守られている感じがして心強いです。
心臓血管外科に進まれたのはどのような経緯からでしょうか?
もともと学生時代に循環器を勉強していて、心臓や血管の分野に魅力を感じていました。実は卒業後、地元の九州で整形外科に入局したのですが、兄が整形外科医師となり父の後を継いでくれたので、僕は好きな道を究めようと母校に戻り心臓外科の道に進むことを決めました。僕は内科向きではないと思うので、外科医師でありながら循環器を診ることができる心臓血管外科の道が合っていたと思います。心臓というのは命に直結した臓器であり、重篤な患者さんの命を手術で救うのが心臓血管外科の仕事です。責任は重いですが、患者さんやご家族から感謝の言葉をいただいた時など、とてもやりがいを感じます。僕が若い頃は、24時間以上かかるような大がかりな手術もあり、そういう手術のダイナミックさに惹かれたというのもありますね。
開業されたばかりのすてきなクリニックですね。院内のコンセプトをお聞かせください。

一般的にクリニックはどうしても殺風景になりがちですが、僕はクリニックを患者さんがくつろげる場所にしたかったんです。アメリカ留学中に感じた雰囲気が好きで、壁紙や家具をアメリカンレトロ調にしました。診察を待つ間、少しでも楽しい時間を過ごしてもらえたらと、僕が留学や仕事で行った世界の国々の本などを展示しています。大学病院などで勤務していた時は、どうしても患者さんをお待たせすることが多かったので、今はなるべく待ち時間がないように配慮していますが、もし待っていただくとしても、本を読みながらゆっくり過ごしてもらえたらと思います。ロビーのピアノは実家にあった古い物を修理しましたが、クリニックの雰囲気にも合っていて気に入っています。新型コロナウイルス感染症の流行が早く落ち着いて、ミニコンサートなどできたらうれしいですね。
下肢静脈瘤に悩む人に適切な診療を提供したい
先生の専門である心臓血管外科とはどのような病気があるのでしょうか?

心臓血管外科というのは命に関わるような手術を必要とする病気が多く、開業以前は、大動脈を修復するカテーテルの手術を専門にしていて、心臓のバイパス手術や弁の手術、大動脈の人工血管修復手術などを行ってきました。クリニックではそのような大きな手術は難しいので、僕たちが診る病気は、一般内科に加え、狭心症や心筋梗塞、高血圧や高脂血症など生活習慣病といわれる循環器系の疾患になりますね。このクリニックの特徴である下肢静脈瘤も、血管分野の一つになります。また、心臓血管外科医として大動脈瘤についても注視していきたいです。この病気は症状がなく一般の方は気づきにくいのですが、おなかや胸の大動脈瘤が腫れて、ある日突然破れて死に至る病気です。超音波やCT検査で発見できるので、今後は大動脈のスクリーニング検査を普及させ、生活習慣の見直しも含め、手術をするまでの適切な管理ができればと思います。
下肢静脈瘤に注力されているということですが、どのような病気か教えてください。
下肢静脈瘤は古くから認知されている病気で、ギリシャ石像にも下肢静脈瘤が彫られているぐらいなんですよ。足の静脈には血液を心臓に戻す役割がありますが、どうしても重力で血液が下がってしまいます。ですから本来はそうならないように逆流防止の弁があるのですが、この弁が機能しなくなってしまうことで血液が足にたまりやすくなり、ボコボコとこぶのように表面が浮き上がった状態になってしまいます。加齢や同じ姿勢で立ち仕事をしている方、妊娠・出産などが原因で発生することが多く、男性よりも女性に多く見られる疾患です。遺伝的要素もあるので、両親に下肢静脈瘤がある方は少し気にかけてみてください。
治療法はどのようなものがあるのでしょうか?

下肢静脈瘤は薬などで治る病気ではなく、加齢とともに徐々に進行し、自然に治癒することは難しいです。ですが、良性疾患であり命に関わるようなことはなく、見つかったらすぐに手術しなくてはいけないということではありません。軽度の患者さんの場合は、弾性ストッキングを着用することで、進行防止や症状の緩和を促します。重症の場合は、日帰り手術をお勧めしています。手術の方法もいくつかあり、患者さんにより病状のタイプや形態が異なるので、希望もお聞きしながらその患者さんに一番適切な手術の方法を考え、治療方針を決定していきます。
医師と患者が一緒に病気に向かい合うことが大切
クリニックの診療方針についてお聞かせください。

僕は、なんでも薬や手術に頼るのではなく、まずは患者さん自身の生活習慣を変えることが大事だと考えています。例えば、心臓のバイパス手術を受けたのにタバコがやめられない方や、減塩せずに高血圧の薬だけを飲み続けている方も多いんです。でも、それではなかなか症状は改善されません。まずは患者さん自身が自分の病気についてきちんと知り向き合っていけるようなサポートをしていきたいと考えています。先ほどお話しした下肢静脈瘤もそうですが、手術の前にまずはウオーキングを頑張るなど生活習慣を見直したり、弾性ストッキングを着用したりと、変えられるところは変えていく。すべてを医師に任せるのではなく、患者さんと医師が一緒に病気を治していくクリニックでありたいと思います。
ところで、以前アメリカに留学されていたとお聞きしました。
藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)に勤務していた当時、恩師にあたる安藤太三教授のもとで、慢性の肺血栓塞栓症の難しい手術について学びました。当時、カルフォルニア大学のサンディエゴ校に、この手術を専門にしている教授がおられ、そのご縁で留学することになったんです。カリフォルニアでの生活は楽しく刺激がありましたね。研究はもちろんですが、自分自身の視野も広がり、価値観や生活スタイルなど人生において参考にしたいと思うことが多くありました。その後、オハイオにも留学し、ここでは、大動脈のカテーテル手術を学ばせていただき、アメリカの先端技術に衝撃を受けました。どちらの生活も、僕にとっては人生の中でかけがえのない時間となりましたね。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

患者さん自身に自分の体や病気についてもっと知っていただけるように、今後もクリニックでセミナーを開いていきたいと考えています。初めにお話ししたように、患者さんが気軽に来院できるクリニックをめざしているので、僕の医学の話を聞くだけでなく、ピアノや楽器を使ったジョイントコンサートのようなかたちで楽しく学べる機会をつくれればと思います。下肢静脈瘤については、今まで行ってきた診療や手術の経験を生かし、患者さんにとってより良い治療の提案をしていきたいと思います。クリニックに来たら即手術ということではないので、まずは気軽に相談に来てください。クリニックに遊びに来たついでに体の心配事を話すというような感じで来院してもらえたらと思います。