宇治 彰人 院長の独自取材記事
宇治眼科
(四日市市/高角駅)
最終更新日:2025/03/14

「宇治眼科」は、内科や皮膚科など5つのクリニックが建つ「四日市メディカルビレッジ」内にある。ナチュラルテイストの外観が目を引く2階建てで、院内は白やベージュをベースにした、明るく温かみのある空間となっている。待合室には給茶機やスマートフォンの充電器も用意されるなど患者への心配りも。宇治彰人院長は、京都大学医学部附属病院はじめ複数の病院で網膜硝子体に関する研究や手術に携わってきたエキスパート。「培った経験を生かして、質の高い、優しい診療を提供し、地域に貢献していきたい」と話す。診療においてはわかりやすい説明を心がけているという宇治院長。取材陣の質問にも言葉を選び、丁寧にゆっくりと答えてくれた。
(取材日2025年2月19日)
これまでの手術経験を生かし、日帰り手術に注力
きれいで明るい院内ですね。どんなところにこだわられたのでしょうか?

一番こだわったのは、待合室の吹き抜けです。眼科はどうしても待ち時間が長くなりがちなので、患者さんが少しでもリラックスできるように窓も大きくし、開放的で明るい場にしたいと思いました。天井部にファンがついていますので、空気が循環して感染症対策にもつながっています。2階には手術室と術後に過ごしていただくリカバリールーム、また患者さんが手術中、ご家族にお待ちいただけるホールがあり、いずれも落ち着いた色調でそろえています。車いすの方やご高齢の方でも移動しやすいようにエレベーターを備えています。
先生が医師をめざされたのはなぜですか?
父が眼科の医師でしたので、身近な職業だったというのが大きいです。特にこれといったきっかけはなかったのですが、小学生くらいから将来の仕事として医師を意識し始めたように思います。やっぱり眼科だなと思ったのは、大学生の時。網膜硝子体手術を見学した際、機械で目の中を照らしながら顕微鏡をのぞき込んで手術をする医師の姿が先進的でかっこいいと思ったのです。網膜は脳とひと続きになっていて取り替えることができませんので修復するしかありません。目の中の非常にデリケートな箇所で、はがれている部分を治療したり、出血していたらきれいにしたりと本当に繊細な作業を行います。そういったところも興味深く感じました。病院勤務時代から白内障や緑内障、網膜硝子体の手術など多くの手術に携わり、現在も日帰り手術を行っていますが、手術は毎回とても神経を使います。
臨床に加え、研究にも取り組んでこられたそうですね。

大学院では人工網膜の研究をしていました。網膜が傷んだとき、人工的に作った網膜を下に入れて機能させられないか検討する研究です。今は私が研究していた形とは異なりますが、iPS細胞の技術を用いる網膜に関する研究が進んでいます。また、カリフォルニアの研究所にいた時は、網膜の断層写真の画像研究にも取り組みました。機械を入れず、目にメスを入れることもせずに診断、治療ができないかという研究です。現在も京都大学にて研究や学生の指導に携わっています。講義では、私の専門分野である網膜、ぶどう膜炎の領域を教えたり、豚の目を使った白内障手術の練習を指導したりしています。
先進の設備を整え、より精密で的確な治療をめざす
患者層や診療体制について教えてください。

患者さんはお子さんからご高齢の方まで幅広く、さまざまな眼科疾患に対応しています。お子さんは学校健診で指摘を受けて来られることが多いですね。斜視、弱視、目の神経、角膜、緑内障については各専門の先生に非常勤で担当してもらっており、日帰り手術も可能です。入院しての手術が必要な場合は病院にご紹介しています。それぞれの分野に専門の医師がいることで、幅広く、かつ高いレベルの診療がご提供できると思います。現在は父と二診体制で、できるだけ患者さんをお待たせしないように、また予約のない当日受診の方にも対応できるようにしています。父は経験豊富なベテランゆえ、なかなか気がつきにくい病気への知識もあり、ありがたいですね。2025年4月からは常勤医師が増え3人になる予定です。
最近気になる目の病気について、教えてください。
角膜に起こる、円錐角膜という病気があります。10代~20代の若い方に多く、角膜が薄くなり円錐状に前に出てきてしまう病気です。進行のスピードには個人差がありますが、悪化すると著しい視力低下や角膜の破裂が起こるリスクがあります。初期には眼鏡をかけても見えにくいという症状がでますが、ハードコンタクトレンズをすることで視力は矯正可能です。しかしさらに進行すると、視力が著しく低下し、視力障害の程度によっては角膜移植が必要になることもあります。当院では角膜専門の外来医師に来てもらい、診療を行っています。三重県内で円錐角膜の専門的な診療に対応できるクリニックはまだ少ない状況ですが、患者さんは多くいらっしゃると思いますので、ご相談いただければと思います。
先進の設備を整えられていると伺いました。

当院の手術では白内障手術が最も多いのですが、患者さんの中には乱視をお持ちの方も多くいると考えています。そのため、手術では乱視を矯正することも非常に重要となります。従来は、術中に医師が手で患者さんの目にマークをつけて人工の眼内レンズの角度を調整していましたが、この方法ではわずかにずれてしまうこともあり得ます。当院では、乱視矯正を併用する手術の際に、角膜の形状をより詳細に解析し、度数や位置の調整を行うためのシステムを導入しており、それに合わせたレンズを使用しています。解析データは手術室の顕微鏡に送られますので、医師はガイドに従って手術を行うという流れです。乱視矯正の精度が上がれば、術後の患者さんの満足度も向上すると思います。
来院した患者が安心できる状態までサポート
クリニックの治療方針を教えてください。

当院では、来院してくださった方の症状を最後まで解決することをめざしています。まずは身近で来やすい、眼科の入り口として適切な診断をしていきたいと考えており、患者さんがお困りの症状がどういった原因から来ているのかわからないという状況だけは解決したいですね。入院が必要な場合、涙道など専門性が高い場合は、専門の医師や医療機関を紹介し、お悩みが解決するようにしていきます。市立四日市病院、菰野厚生病院、三重大学医学部附属病院と連携していますので何でもご相談いただければ。地域に根差したクリニックとして、近隣の方の「最初の相談役」になれればうれしいですね。
患者と接する際に大切にされているのはどんなことでしょうか?
一番大切にしているのは、患者さんにわかるようにきちんと説明するということです。医療機関で使われている熟語は、意外と何を指すのかわからない方も多いのです。例えば、「点眼薬」は「目薬を差す」と表現したほうが確実に伝わりますね。「眼底」や「網膜」も、どこの部分を指すのか、どういった働きをしているのかご存じない方がほとんどです。ですから診察室には目の図解を貼り、「ここが網膜です」と指を差して丁寧にお伝えするようにしています。また、現在の状況の説明と対策だけでなく、対策する理由や今後の見通し、どれくらいになれば安心できるかなども併せてお話しするようにしています。手術についても、患者さんを集めて説明会をするという形ではなく、お一人お一人の患者さん、ご家族にじっくりと説明をします。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

現在は白内障や緑内障など日帰り手術が増えています。白内障手術については先進のシステムを導入したこともあり、今後もより安心して受けていただけるよう、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。スタッフも講習などを積極的に受けて日々スキルを高めています。優しい人がそろっているのもありがたいですね。もし日常生活で、視界がぼやける、見え方に違和感を覚えるなどしたら些細なことでも相談していただきたいです。片目ずつ手で覆って見え方を確認すると右目と左目の見え方の違いが比べられるので、気になる方は試してみてください。病気によっては受診のタイミングが遅れると元には戻らないこともあるため、早めの受診をお勧めします。適切な検査、診断で、安心できるところまでサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。