上咽頭の炎症の軽減をめざす
上咽頭擦過療法(Bスポット療法)
山本耳鼻咽喉科
(町田市/町田駅)
最終更新日:2024/07/17
- 保険診療
鼻の奥の喉とつながった部分である上咽頭の痛みや違和感、鼻水が喉に落ちる後鼻漏(こうびろう)などが長く続く場合は、上咽頭が慢性的に炎症を起こしている可能性がある。この症状に対しては積極的な治療が行われないこともあるが、「患者さんのつらい思いをできる限り軽減したい」と語る「山本耳鼻咽喉科」の山本一博院長は、上咽頭擦過療法による治療を提案している。「これは炎症部分に直接薬を塗る方法で、すでに50年以上もの歴史があります」と言う山本院長に、よく見られる症状でありながら原因がはっきりしない上咽頭炎についてと、その治療法について詳しく聞いた。
(取材日2019年12月4日)
目次
性別、年齢を問わずかかる、上咽頭炎の症状の軽減をめざして行う、上咽頭擦過療法
- Q上咽頭炎とはどのような病気ですか?
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A
上咽頭は鼻の奥の喉とつながった部分を指し、そこに痛みや違和感が続くようなら上咽頭炎が疑われます。鼻水が鼻から出ないで、喉に落ちてくる後鼻漏も上咽頭炎ではよく見られます。ただ、副鼻腔炎(蓄膿症)も似た症状を示すため、エックス線検査で鼻の奥に膿などがたまっていないかを確認し、肉眼では見えない上咽頭部分を内視鏡で視認して、炎症かどうか調べるといった検査は欠かせません。この病気は性別、年齢を問わずかかり、個人差はありますが、頭痛、首こり・肩こり、めまいをはじめ多様な全身症状と関連するともいわれます。
- Q上咽頭炎の原因は何でしょうか?
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A
上咽頭炎という病名は炎症が起こった状態を指していて、考えられる原因は多種多様で、詳しくはわかっていません。関連性が指摘される例としては細菌や風邪などのウイルスの感染、ストレスや自律神経の乱れ、生活の変化による心身の疲労、アレルギー性鼻炎などによる鼻閉などが挙げられます。このため治療法としては痛みや違和感を抑えることを目的とした対症療法が中心となっています。
- Q上咽頭炎の治療法について教えてください。
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A
当院で行っているのは上咽頭擦過療法で、Bスポット療法とも呼ばれ、細長い医療用の綿棒を鼻または喉から上咽頭まで差し入れ、炎症を起こしている患部に抗炎症薬を塗るものです。必要に応じて内視鏡も使って患部を確認しながらの治療となる場合もあります。綿棒を入れるときの痛みを軽減するため、鼻に麻酔をした後で治療を行いますが、実際に薬を塗っている時間は5分ほど。麻酔もさほど強くないので、治療後はすぐにお帰りいただけます。1960年代から行われている治療法ですが、近年再注目されている方法です。
- Q治療にかかる期間や費用について教えてください。
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A
患者さんによって違いはありますが、上咽頭の慢性の炎症を抑えることにつなげ、良好な状態へ促すためには15回ほどの通院による治療をお勧めしています。後鼻漏の症状は長引きやすく、10回くらいの治療が必要なことが多いように思います。いったん治療が終わっても、上咽頭炎は自律神経の乱れや生活の変化などで再発することもあるため、当院では1ヵ月に1回くらいの通院をお勧めして、様子を診せていただくようにしています。なおこの治療は健康保険適用で、患者さんのご負担もさほど大きくならないと考えます。
- Q治療の際に注意点などはありますか?
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A
治療の前も後も普段どおりに過ごしていただけますし、食事制限なども特にありません。ただ、治療中に痛みを感じたり、鼻水や痰に血が混じったりする方もおられ、特に炎症が進んだ患者さんほど薬を塗った後にしみるような痛みが大きくなることも考えられますので、治療前にはそういったデメリットもしっかりご説明するよう心がけています。初診の際には上咽頭炎や関連する全身症状について、期待できる作用や治療中の痛みの可能性など、必要な情報をまとめた資料をお渡ししています。それを一度持ち帰って考えていただくなど、患者さんが納得された上で治療を行うよう心がけています。