佐伯 仁 院長の独自取材記事
佐伯医院
(板橋区/大山駅)
最終更新日:2023/05/17

東武東上線・大山駅前のにぎやかなハッピーロード大山商店街を通り抜けて10分の立地にある「佐伯医院」。診察室に入ると院長の佐伯仁(さいき・ひとし)先生がにこやかな表情と落ち着いた声で出迎えてくれる。同院と同じ板橋区にある東京都立豊島病院で長い間循環器内科に勤務した経験と、そのため地域の医療事情に詳しいことが、佐伯院長のかかりつけ医としての強みである。診療では循環器や脳血管の病気の再発予防や発症予防のため、生活習慣病の管理に注力。治療方針を患者に説明し、患者とともにじっくり考えていくことをモットーにしている佐伯先生に、同院開業のきっかけや、診療に訪れる患者のこと、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2023年4月12日)
20代から高齢者まで、訪れる患者はさまざま
クリニックをこちらの場所に開業したきっかけから伺います。

東京医科歯科大学を卒業後、2008年から当院と同じ板橋区にある東京都立豊島病院の循環器内科に勤務しました。2021年に当院を開業するまで勤めましたので、地域の医療事情もわかっていました。また地域的に、循環器専門の医師がいるクリニックが少ないとも感じていましたので、地域に根差した専門的な医療ができればと思ったのがきっかけです。開業する前は高齢者が多い地域という印象があり、ご高齢の患者さんがメインになるかと思っていました。ですが実際開業してみると、20代の若い方にも多く来ていただいています。内科も標榜していますので、さまざまな症状、例えば花粉症で困っている方などもいらっしゃいます。40~50代で血圧や血糖値を健診で指摘されて受診される方も多いですね。
生活習慣病で受診される方も多いのですね。
はい。ただ、そうやって健診の結果を受け、クリニックを受診される方は「しっかり治そう」という思いがあるので、健康に対する意識がもともと高い方が多いです。そのような病気になったばかりの人に対して適切な治療は何か、治療を続けるモチベーションを保つにはどうしたらいいかを考えながら診療を進めていきます。治療方針に対する丁寧な説明と、その治療が必要かどうかをじっくり考えていくことが私のポリシーです。例えば、血圧やコレステロールの目標値についてもガイドラインを用いてわかりやすく説明させていただきますし、他院からの紹介でいらした患者さんについても、薬の量が適切かどうか当院でも再度じっくり吟味します。そのため初診には20~30分かけることもあります。
患者さんお一人お一人を丁寧に診られている印象です。

専門の循環器や、それ以外の生活習慣病も含めいずれの病気もそうですが、再発予防というのが自分なりのテーマです。例えばがん治療はかなり進んでいて、ある程度の治療期間を経ればお薬が必要なくなる状態になることも期待できます。ですが生活習慣病はなかなかお薬をなくすというのは難しいのです。患者さんにとってもそれは大変なことだと思っており、再発予防のために、ある程度患者さんの治療に対するモチベーションを維持していくようなことをやっていきたいと考えたのも、開業の理由の一つです。そのためには栄養士さんに栄養指導をしてもらうことも重要なのですが、幸い板橋区は比較的大きな病院が多く医療資源が豊富なので、以前勤務していた東京都立豊島病院などに紹介してお願いすることもしております。
開業医として、重症化を未然に防ぐための診療を
先生が循環器内科を専門に選んだ理由は何だったのでしょう。

そもそもなぜ医師になったかというと、自分で一生をかけて何かできる仕事を考えた時に思い浮かんだのがこの仕事でした。親戚に医療従事者がいたということもあります。多くの診療科の中で循環器内科を選んだきっかけは、家族が循環器疾患を患ったことも大きいと思います。また私が循環器内科の医局に進んだ時、心臓カテーテル手術が注目されていました。内科医だけれどもそういう外科医的なこともできるところが面白そうだと感じました。現在はもちろんそういった手術は近隣の病院に患者さんを紹介してお願いしていますが、当院でも循環器に関しては、心電図、超音波検査、ホルター心電図など一通りの検査ができる設備を整えています。
循環器の病気で見られる症状にはどのようなものがありますか?
循環器の場合、特徴的な症状は胸の痛みです。ただ胸の痛みといってもさまざまで、狭心症などにかかって胸が痛むという方もいれば、咳で胸の神経を痛めてしまった方や、胃の不具合が原因で痛みを感じている方、心理的な要素のある方も少なくありません。おおよそ半数は心臓や循環器の問題でなく、循環器以外が原因だろうと思います。しかしそれは、調べてみないとわからないことですし、重篤な症状が隠れている可能性もありますから、胸の痛みを感じたら医療機関を受診するようにしてください。
町のかかりつけ医として、どのように循環器疾患に取り組んでいきたいとお考えですか?

大きな病院に救急搬送されたとして、心電図検査を行うまで30分かかるとします。しかし町のクリニックであれば、自宅からも近いでしょうから、ちょっと様子がおかしいと感じた時、すぐに受診して検査を受けることができます。当院の場合は来られて5分後には心電図検査を行うことができますし、万が一心電図検査で異常が見つかった場合も、すぐに病院に紹介して心臓カテーテルなど適切な治療を受けていただくための道筋をつけることができます。命に関わる循環器疾患だからこそ、救急搬送されるほど悪化する前に、なんとか重症化を食い止めたい。そのような思いで日々診療を行っています。
チーム医療の経験が現在の診療に生きている
佐伯先生の診療姿勢に影響を与えたことはなんでしょうか。

豊島病院を含め教育に熱心な病院にいたこともあったのですが、循環器内科の特性上、チームで診療にあたることが多かったです。主治医だけでなく、数人の医師やほかのメディカルスタッフも含めて患者さんについて考えていくことが常でした。私自身も、勤務医としての後期は教える立場になっていました。ですから常に周囲を見て勉強し、また見られる立場でもあったので、それが今も生かされていると感じます。
現在クリニックでスタッフの教育に関わることもあるのですか?
循環器や糖尿病のことに特化して、看護師に勉強会を行うこともあります。糖尿病のことに関していいますと、現在はまだ当院でやっていませんが、今後インスリンでの治療も視野に入れているので、それについて勉強してもらうなどしています。ちなみに糖尿病に関してですが、HbA1cを迅速測定する機器を導入しました。今までは1ヵ月かかっていたヘモグロビン値がおよそ5分でわかるのです。検査結果が出るまでに1ヵ月もかかると、検査前の生活習慣を見直そうにも、なかなか思い出せないのではないのでしょうか。すぐに検査結果がわかるのは、患者さんの治療意欲、モチベーションを維持するために重要なことだと思います。
最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

健康診断で再検査になったり、異常値が見られたりした場合は、お気軽に受診していただければと思います。また、循環器の病気というとなんとなく敷居の高さを感じて受診を躊躇される方もいらっしゃいます。先ほどお話ししましたように当院では循環器に関する一通りの検査ができますし、また近隣の医療機関とも密接に連携していますので、ちょっと相談したいという方でも安心して、ぜひお越しいただければと思います。