妹尾吉訓院長の独自取材記事

せお歯科クリニック　

(広島市安佐北区／中深川駅)

最終更新日：2022/07/08

広島市安佐北区にある大型商業施設の1階に「せお歯科クリニック」がある。明るい院内は、バリアフリーの設計でキッズコーナーも設けられ、滅菌や24時間換気などによる衛生管理も徹底。乳幼児から高齢者まで、誰もが安心して通院できる環境をめざしている。JR中深川駅から徒歩5分の距離にあり、商業施設の駐車場が利用できるため車でのアクセスも良い。同院を開設した妹尾吉訓院長は、広島大学歯学部卒業後、九州歯科大学大学院インプラント科を修了。同大学附属病院や広島県内の歯科クリニックでの勤務を経て2020年に開業。患者との対話を重視し、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療をめざしている。歯科医師をめざしたきっかけから今後の展望まで、いろいろと話を聞いた。

（取材日2022年3月31日）

患者との対話を重視した診療方針
初心を忘れず患者の目線を大切に
一人ひとりの患者にとって最適な治療を

患者との対話を重視した診療方針

歯科医師をめざしたきっかけをお聞かせください。

最初は漠然とですが農業をやってみたいと思い、大学を受けるなら農学部が良いかな、なんて考えてもいました。やがて高校3年になり、いよいよ進路を決めなくてはいけないというときに、親から「人から頼りにされて、感謝される仕事をしてほしい」という話をされました。それが祖父の遺言だったそうです。よく考えればどんな仕事でもだいたいそうなんですが（笑）、その時歯科医師になるのはどうかと勧められたのがきっかけで、この道に進みました。

大学を卒業した後、大学院に進んだのはどのような経緯からですか？

インプラントが普及し始めていた時期でもあり、歯科医師としての将来も考えて、どんな治療法なのか早めに知っておきたいと思い、大学院のインプラント科に進みました。そのためインプラントが自分の専門分野になりますが、特別に患者さんに対して勧めているわけではありません。どんな治療にもメリットとデメリットがあります。自分が勤めていた大学病院にも、クリニックでのインプラント治療がトラブルになった患者さんが少なからず送られてきていて、デメリットの実例も数多く見てきました。そういった経験から、インプラントは避けたほうが良い場合も意外と多いこともわかったので、本当に必要な人に勧めるようにしています。

勤務医時代で印象に残っているのはどんなことですか？

患者さんとの接し方について学んだことが大きいですね。大学病院でもクリニックでも、治療の内容自体は大きく違うわけではありません。それよりも「こうしてほしい」という患者さん自身の要望と、「こうしたほうが良い」という歯科医師としての考えとのバランスをどううまく取るかが大事だと学びました。歯科医師になったばかりの頃は、とにかく治療することに一生懸命でしたが、何人かの先生のもとで働くことで、それぞれ違ったアプローチを学ぶことができ、選択肢の幅が広がりました。それは勤務させていただいた先生方に恵まれていたということでもあり、たいへん感謝しています。そのおかげもあって、患者さんとの対話を重視した姿勢を身につけることができたのだと思っています。

初心を忘れず患者の目線を大切に

この場所で開業した理由をお聞かせください。

開業するにあたって、患者さんとの意思の疎通を図りながら、時間に余裕を持って診療にあたりたいという希望がありました。そのためには、市街の中心部よりも、少し離れた地域のほうが良いのではないかと思いました。勤務医時代は、30分刻みくらいで予約が入っていて、患者さんを次から次へと連続で診て、診療台も常に埋まっているということが多かったのですが、そういった状況で何か想定外なことが起こってしまうと、その後に治療を受けられる患者さんへのきちんとした対応が難しくなってしまうことがあります。そういった状況は避けたいと考え、街中から少し離れたこの場所を選びました。また歯科医師になる前に農業も良いなと思ったのは、あくせくせず自然に囲まれて自分のペースで暮らせそうだと思ったことも理由でした。開業するのにこの場所を選んだのは、そういった気持ちの名残があったのかもしれません。

どのような患者さんが多いですか？

年齢層は幅広く、近くに小学校があるのでお子さんもいらっしゃいますが、やはり年配の方が多めです。当院では、メンテナンスの場合1人あたり1時間取っているので、時間に余裕があり、おしゃべりを楽しみにいらっしゃる方も少なくありません。時には1時間のうち30分くらいお話をして帰られる方もいらっしゃいます。普通はクリニックに通うのが好きだという方はほとんどいらっしゃらず、たいていの方は嫌々来ていると思うので、少しでも楽しく感じて通っていただけるのなら、それで良かったと思います。

最近目立つ症例はありますか？

年配の方が多いからか、歯がグラグラしていたり、すでに何本か抜けてしまっている方が意外と多いですね。歯科が怖くて敬遠していたという方も多かったのですが、そういった方も実際に来てみたら安心してもらえたようでした。私としても歯科が怖いというイメージをなくしたいと思っていて、当院も患者さんが圧迫感を感じないように天井を高くしたり、空間が広く感じられるように設計してもらいました。患者さんとの接し方でも、折にふれて感謝の言葉を口にするようにしています。またスタッフに対しても、初心を忘れず患者さんの目線を大事にするように言っています。私たち歯科クリニック側からすると毎日の治療で当たり前のことでも、患者さん側からすると口の中は自分の目で見て確認することが難しく、どうしても治療に対して不安を感じることはあると思います。そういった患者さんの気持ちを忘れてはいけないと思っています。

一人ひとりの患者にとって最適な治療を

治療方針に特徴や目標はありますか？

忙しい仕事や子育ての合間に来られる方も多いので、例えば今は気になるところだけ治してくれれば良いという方には、そのように治療をするようにしています。いきなり私だけの想う100点満点の治療をめざすのではなく、患者さんとしっかり相談しながら、段階的に治療を進め、結果的にお互い納得した上での、満足のいく治療ができるようにしています。また患者さんからの要望には、できる限り応えるようにしています。良かれと思って自分の意見を押し通しすぎてしまうと、患者さんは歯科を一層嫌いになってしまうかもしれません。患者さんがどのように考えているのか、それに応えられる治療をするにはどうしたら良いか、患者さんの気持ちを大事にするようにしています。

診療において気をつけていることは何ですか？

当たり前のことを当たり前のように治療するということですね。例えば歯科医師になりたての頃、「自費診療を頑張りたい」とか、いろいろ考えると思います。でも保険でも自費でも一番大切なのは、一つ一つの基本をしっかりやるということです。長年積み重ねてきた歯科治療があって、現在の歯科治療の基本ができているので、基本的なことを丁寧に行っていくことを重要視しています。また、例えばマウスピース型装置を使用した矯正など専門外の診療は、自分でやらずに専門とする先生にお任せしたほうが良いと考えています。「10年後にこうなるはずだ」と思っても、本当にそうなるかどうか、自分がその後の結果を見たことがないような処置をすることには抵抗があります。患者さんにとって最適で確実性の高い治療方法を提案・実践できるように心がけています。

今後についての展望と、読者へのメッセージをお願いします。

まだ開業して日が浅いですが、これからも患者さん一人ひとりに合ったオーダーメイドの診療をしていきたいですね。私はわりと人の顔をすぐ覚えるほうなんですが、それに加えてご家族の関係などもできるだけ把握するようにしています。例えばお子さんが治療した後、お母さんが1人でいらしたときには、その前のお子さんの治療の経過がどうだったかお聞きしたりすることもあります。そういった患者さんとの関係性は、今後も大切にしていきたいですね。また当院に限ったことではありませんが、歯の健康を保つには、予防が何より大切です。最近歯科を受診していないという方は、特に問題がなくても、早めに歯医者さんに行ってみることをお勧めします。