稲葉 雄一郎 院長の独自取材記事
いなば耳鼻咽喉科クリニック
(取手市/取手駅)
最終更新日:2025/05/19

取手駅から徒歩1分、駅直結の医療モール3階に「いなば耳鼻咽喉科クリニック」はある。一度は耳鼻咽喉科を離れ、東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センターで救急医療の現場を経験してきたという稲葉雄一郎院長。フランスのフォッシュ病院に留学し、睡眠時無呼吸症候群を学んだ経験も持つ。耳鼻咽喉科に戻った後、めまいや睡眠時無呼吸症候群の診療、鼻内視鏡下副鼻腔手術を中心に臨床経験を積み、2020年に現在の場所に開業した。こだわりの設備と検査体制で、専門性の高い医療とスピーディーな診療の両立をめざす稲葉院長に、医師を志した理由や地域医療への思いについて話を聞いた。
(取材日2021年1月29日/更新日2024年12月26日)
離れて初めて知った耳鼻咽喉科の重要性
先生はなぜ医師を志したのですか?

医師をめざした理由は「なんとなく」というのが正直なところです。父も耳鼻咽喉科の医師で、北陸で開業医をしています。多くの子どもがそうであるように、私も父の働く姿に憧れを抱き「将来は父のようなお医者さんになるのだろう」と漠然と思っていたのです。大学を卒業し晴れて医師になりましたが、大きな志もなかったせいか、耳鼻咽喉科の医師としてどこか不完全燃焼な気持ちだったように思います。転機が訪れたのは医師になって6年目のこと。私はやりがいを見つけるため、東京医科歯科大学医学部附属病院救急救命センターに期間限定で籍を移しました。緊迫した医療の現場で、耳鼻咽喉科医としての意見を他科の医師から度々求められました。耳鼻咽喉科から離れて初めて、それがいかに重要な分野なのかを知ったんです。そこからは耳鼻咽喉科の医師として医療に貢献することが、私の人生の目標となりました。
それからは耳鼻咽喉科で研鑽を積んでこられたのですね。
救命救急の現場に携わる中で、診療科目のかぶっている分野に、私のやりたい医療があるということに気づきました。めまい診療ならば耳鼻咽喉科と神経内科、睡眠時無呼吸症候群ならば耳鼻咽喉科と呼吸器内科。これらは県境のように両科にまたがっています。救命救急における全身管理に携わってきた経験も生かし、このいわば県境にあたる部分を私の専門分野として高めようと決めました。そして高度な技術を必要とする鼻内視鏡下副鼻腔手術。この3つを中心に大学病院や大規模病院で経験を積み、土浦協同病院では耳鼻咽喉科責任者を務め、多数の手術の執刀に加え指導も行ってきました。土浦協同病院は茨城県内でも特に大規模な設備を誇っており、県内外から多くの患者さんが来院されます。軽い鼻炎から命に関わる症例まで幅広く対応しながら、フランス留学を経験し、2020年に開業しました。
フランスのフォッシュ病院への留学で、印象に残っていることは何ですか?

耳鼻咽喉科と歯科の距離の近さです。睡眠時無呼吸症候群の治療ではシーパップ(CPAP)という機器を装着する手法が主流ですが、病態によってはマウスピースで改善をめざせます。フランスでは両科の連携が円滑なので、多くの患者さんがマウスピースで治療されていました。次に驚いたのは、フランスのドクターの服装。ほとんどの人がデニムパンツをはいており、中にはタトゥーとドレッドヘアの人もいました(笑)。それでもプロとしてするべきことをしていれば受け入れてもらえる土壌が素直にすてきだと思いました。さらに、フランス人にとって海といえば大西洋。売っている地図も中心はヨーロッパと大西洋、対岸はアメリカ大陸でした。誰でも自分こそ、自国こそ世界地図の中心であり、見方によって世界の中心は変わるということ、国によって文化や常識は変わり、価値観も多様だということを実感しました。留学はあらゆる意味で私の視野を広げてくれました。
開業にあたってのコンセプトを教えてください。
後期研修時代を過ごした取手に縁あって開業したのですが、「ご縁」の不思議さを感じずにはいられません。当院は医療モール内にありますが、友人との会食がモールのオーナーとのご縁につながるという、ドラマのようなストーリーが。もともと地域医療に貢献したいという思いがあり、以前より開業を視野に入れてキャリアを積んできました。ここは、一日の大部分を過ごすので、自分が居心地が良いと感じる場所を作りたかったんです。医療機関はよく「カフェのような」や「クリニックらしくない」と形容されますが、私はクリニックだからこそ表現できるおしゃれさがあると思っています。未来感があり、技術がある、でも温かい。そういう空間でしょうか。設備から椅子の感触、照明の明るさまでクリニックのあらゆる側面や細部にまでこだわり、快適なクリニックの本質とは何か、を追い求めこれを表現したいと考えていました。
総合病院レベルの設備とクリニックならではの気軽さを
診療内容や医療機器について教えてください。

めまいと睡眠時無呼吸症候群の診療、副鼻腔炎の日帰り手術の3つを柱に、耳鼻咽喉科の症状に幅広く対応しています。私1人で2つの診療室を行き来していますが、動線の工夫によりスピーディーな診療に努めています。あらゆる症例に対応できるよう、赤外線CCDカメラをはじめ医療機器の充実にも力を入れました。中でも手術に用いる4K内視鏡システムや術前診断に用いるコーンビームCTは、高い性能を追求して選定しました。最近はめまいの検査機器で、VOG(ビデオ眼振計)を導入。手術件数がかなり増えたので、2023年の6月に診療エリアを拡大して手術室を増設しました。日帰り手術については、2020年12月~2024年10月で、片目につき1056件の手術を執刀しています。
設備や院内設計にはかなりこだわったんですね。

そのとおりです。これまで高度な医療は総合病院でしか受けられないとされていましたが、今は医療の進歩に伴って大きな建物や入院施設を有さないクリニックでも高度な医療が受けられるようになりました。そして私は、総合病院レベルの高度な医療がクリニックでも受けられるという環境をいち早く作りたかったのです。もし、当院の設備では足りないと判断した場合、患者さんに合った病院をご紹介できるネットワークも持っています。安心してお任せください。
一人で頑張らず医療の力を頼ってほしい
診療の際に心がけていることはありますか?

まずは患者さんの話をしっかり聞くようにしています。患者さんが「痛い」と言った時、それがいわゆる痛みなのか、違和感・異物感・灼熱感などの表現しにくい他の症状なのか、話しやすいよう会話を広げていきます。また耳鼻咽喉科の治療は痛みを伴うこともありますが、できるだけ痛みを感じさせないような治療を心がけています。そして患者さんが納得できる説明を心がけています。今どのような病状なのか、どのように治療していくのか、いつ治る見込みなのか。大丈夫なものは「大丈夫だよ」と言ってあげたいですし、患者さんが困ったらいつでも頼れる場所でありたいですね。ですから不要な検査はしませんし、不安をあおることはしないよう心がけています。
院内レイアウトについても教えてください。
まず目に入る受付後ろのタイルは、カリフォルニアの職人さんによる完全ハンドメイド。一つ一つのひび割れにも味があるんですよ。院内全体はラベンダーとグレーをベースに、木のぬくもりを合わせてナチュラルにまとめました。女性用パウダールームには大きな鏡を配し、ロックつきアコーディオンカーテンで仕切られた授乳室、おむつ交換台や車いす用手すりを完備したトイレもご用意しています。CT撮影室の横にある大きな絵は、東京藝術大学取手校に公募をかけ、採用となった学生さんに描いていただいた作品で、取手の植生をテーマに深みのある色使いです。空に向かって伸びる植物の陰には私の好きな猫が隠れているんですよ。当院にいらした際はぜひチェックしてみてください。
最後に読者へメッセージをお願いします。

現代では情報が氾濫し、医療や薬に不安を感じている方も多いと感じています。ですがクリニックや病院は、皆さんの元気をサポートするためにあるんです。自分一人で頑張らず薬や医療の力を頼ってください。今後の再開発で、取手の街は大きく変わります。取手の中での衣・食・住に加え、医療もますます必要とされるでしょう。地元にいながら納得の医療を提供できるよう、充実の設備と検査体制を整えています。ご縁のあるこの地で地域の皆さんの健康をサポートし、貢献していきたいと思っています。気になることがあればお気軽にご来院ください。