川上 秀一 院長の独自取材記事
吉野東ホームクリニック
(鹿児島市/鹿児島駅)
最終更新日:2021/10/12

2015年開業の「吉野東ホームクリニック」。近隣には吉野東小学校や吉野東中学校があり、古くからの町の風情を残しながらも、再開発で新しい道路が通り、新築の家が立ち並ぶなど、さまざまな世代が暮らすエリアだ。内科・消化器内科を標榜し、外来診療に加え、24時間365日体制で在宅医療にも対応。また、併設する通所リハビリテーションを行うデイケア施設とも連携しながら、医療だけでなく介護分野においても、あらゆる人々がより良い生活を送るためのサポートを実践している。「好きな場所で、自分らしく最期を迎えられたら」と、看取りも積極的に受けている川上秀一院長に、地域医療と介護の連携について話を聞いた。
(取材日2020年10月16日)
医療と介護の連携で地域に安心を提供
こちらのクリニックの歩みについてお聞かせください。

当クリニックの初代院長は、私の友人・桶谷眞先生です。もともとこの地には、県内産木材をふんだんに使った老人ホームを建てる計画がありました。ところが、このエリアには診療所が足りていないということで、新しく診療所も建てることになったわけです。当時の私は同じ医療法人明輝会の内村川上内科(現・明輝会クリニック)の院長で、多くの在宅患者さんを抱えていましたので、大学病院の勤務医時代、肝臓グループで一緒だった長い付き合いの桶谷先生に院長をお願いして開業に至ったわけです。残念ながら、先生が亡くなられ、2019年2月から私が吉野東ホームクリニック院長となりました。この辺りは、子どもの頃から遊んでいた地域です。ゆかりのある場所で医療サービスはもちろん介護サービスとも連携し、地域の皆さまの健康に貢献できればと考えています。
患者さんはどのような年代の方がいらっしゃるのですか?
この地域は古くから住んでおられるお宅も多いので、高齢の患者さんを中心に内科全般を診ています。その一方で、再開発された新しいエリアに若い方が家を建てるケースも多くなっていますので、徐々に来院される若い方も増えていて、高齢者層とお子さん連れのファミリー層に二分化されつつあるのが特徴かもしれません。ホームクリニックという名前は、ご家庭のホームドクター、地域のかかりつけ医に! という思いを込めてつけたもの。病気に関するさまざまな相談を最初に受ける医療機関として、初期検査を行える設備を用意しています。また在宅医療では、こちらもご高齢の方を中心に、患者さんのご自宅を定期的に訪問して診療、看護も行っています。
木がふんだんに使われていて、温かな雰囲気のクリニックですね。

先ほど県内産の木材を使って、とお話ししましたが、当クリニックに併設された通所リハビリテーション「デイケア スマイル」と、その隣にある医療法人明輝会が運営する有料老人ホームは、地域の景観を損なわず、環境に優しい県産木材を使用した「かごしま木づかい推進事業」に賛同した施設となっています。医療を提供する場はさまざまな医療機器があるため、どうしても冷たい雰囲気になりがちですが、木をふんだんに使うことで温かみのある家庭的な雰囲気になっていると思います。特にこの待合室は吹き抜けの開放感と天窓からの自然な採光が気持ちいいですよね。ちょっと病院らしくないところが面白いでしょう? 患者さんにも好評なんですよ。
地域の在宅医療に貢献する、在宅療養支援診療所
医師を志したのはいつ頃、どのようなきっかけだったのでしょう?

医師を志したのは高校生の時です。親族に医療関係者はいませんし、めざすきっかけになるようなかっこいいエピソードもありません。なんとなく医師になりたくなったというのが正直なところでしょうか。ただ、もともと動物が好きで、小さな頃から犬も猫もたくさん飼っていました。大好きな犬が病気で苦しんだ時は、必死で看病するような少年でしたから、医学に興味はあったかもしれませんね。医学といっても外科、内科いろいろありますが、大学で学ぶ中で外科系は体力的に無理だと悟り、自分に一番合っていると思われる内科を専攻することにしたんです。心臓、肺、肝臓、腎臓をはじめ人体のさまざまな器官は、たくみに機能していて、それらの働きは驚くほど精妙に調節されています。そうした生理学的なことに非常に興味を持ち、理解を深めたいと思いました。
これまでのご経歴を教えてください。
1985年に大学を卒業してからは医局に入局し、医局の方針に従って県内のあちこちの病院で勤務医を経験しました。2000年に現在の明輝会クリニックの院長になる前は、宮崎県の高原町の病院で診療していまして、そこで、地域住民の生活に密着した医療を実践する地域医療の良さにふれることができました。ちょうど介護保険の必要性をメディアで盛んに取り上げられていた頃ですね。限られた医療資源の有効活用や、切れ目のない医療・介護の提供はもとより、「患者さんや地域住民の顔の見える医療」に取り組む基本姿勢が定まったように思います。
在宅医療にも注力されていますが、対象となるのはどんな患者さんですか?

国が積極的に在宅医療を推進している今、当クリニックも在宅療養支援診療所として、通院が困難になった患者さんに対し、明輝会クリニックと連携しながら24時間365日、往診体制を確立しています。慢性的な病気の後遺症がある方、末期がんを患っている方などがいらっしゃいますが、後遺症や重度障害などで寝たきりの方だけでなく、ご自宅からの移動に不安のある方や認知症のため外来で待つことが難しい患者さんなど、さまざまな患者さんにご利用いただいています。住み慣れたご自宅やなじみのある地域で療養しながら、できるだけこれまでどおりの日常生活が送れるようフォローするのはもちろん、「最期は自宅で」というご本人やご家族の望みをかなえられるよう、看取りにも対応しています。
予防医学を広めて地域の健康寿命を延ばしたい
多忙な毎日ですが、リフレッシュ法はありますか?

最近またゴルフを再開しました。しばらく遠ざかっていたのですが、コミュニケーションのツールとしても、ゴルフっていいんですよね。明輝会クリニック時代は、病棟と外来を階段で行き来していましたので、こちらに移ってからは運動不足に陥りました。患者さんには「少しずつでいいから歩きなさい」と言っているのに、自分がこれではいかん!と週に1度は自転車通勤をしようと張り切っていたのですが、坂道やカーブの多いエリアなので、スタッフからなかなかOKが出ません。それならと、近所をウォーキングしようとシューズを準備したところです。リフレッシュ法というなら、対話かもしれませんね。クリニックや在宅で診察をしている時の、患者さんやご家族との何げない会話が、情報収集とともに気分を変える大切な時間になっている気がします。
今後の展望についてお聞かせください。
医療法人明輝会の理事長という立場で振り返ると、義父の診療所を引き継いだ後、このクリニックやデイケア・デイサービス、訪問看護ステーションにヘルパーステーション、介護老人保健施設、居宅介護事業所、有料老人ホームなどの施設をつくることができました。次の目標は地域包括ケアシステムの構築だろうと考えています。そして注力したいのが予防医学で地域の人の健康寿命を延ばすこと。まだこれは夢の段階ですが、ここに地域の人が健康に過ごすための学びや体験が自由にできる施設をつくりたいと思っているんです。当クリニックを含めたデイケア、有料老人ホームのあるこの場所に、“生き生きとした村”という意味で「ヴィヴィッド・ヴィレッジ」と名づけているのもそうした思いがあるからなんです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

最初の受付窓口として病気のサインに気づき、適切に対応することがかかりつけ医の役割です、これから起こり得る病気に備える方法をアドバイスしたり、内臓系の病気やがんの早期発見に努め、必要に応じて大学病院や専門性の高い病院へ紹介し、治療が終了したら、その患者さんを地元で診ていくことで地域医療に役立ちたいと思っています。新型コロナウイルス感染症の流行など、時代や環境の変化に対応しながら、頼りにしてもらえるようなクリニックでありたいですね。今後ますます高齢化が進んでいきますので、介護問題に直面する方が増えてくると思います。お困りのことがありましたらなんでも気軽に相談してただけるとうれしいです。患者さんはもちろん、ご家族にも笑顔で過ごしていただけるように、スタッフみんなで真摯に対応させていただきます。