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吉田 崇 院長の独自取材記事

高崎乳腺外科クリニック

(高崎市/井野駅)

最終更新日:2021/11/30

吉田崇院長 高崎乳腺外科クリニック main

2020年9月、高崎市内に開業した「高崎乳腺外科クリニック」。待合室には換気も十分行える大きな窓が3つあり、明るい日が差し込む。院長の吉田崇先生は、群馬大学医学部附属病院をはじめさまざまな基幹病院の乳腺外科で、長年治療に携わった経験を持つ専門家。乳腺外科、内分泌外科を中心に、女性の健康を幅広くサポートしている。現在、乳がん患者は増加傾向にあり、日本人女性の9人に1人の割合で発症するといわれている。治療も複雑化しているため、大学病院とクリニックの地域連携が欠かせないそうだ。数々の大学病院や基幹病院での勤務を経て、開業した吉田院長。その理由には「より患者さんに身近な場所で治療を行いたい」という思いがある。朗らかな語り口の吉田院長に、その思いを詳しく聞いた。

(取材日2021年10月12日)

痛みやしこりなどの不安を身近に相談できるクリニック

この地域で開業された経緯についてお伺いいたします。

吉田崇院長 高崎乳腺外科クリニック1

これまでに、群馬大学医学部附属病院や埼玉県立がんセンター、太田記念病院で乳腺外科の診療に携わってきました。がんの治療法は日進月歩で進んでいますが、大きな病院にかかるためには紹介状も必要で、気軽に足を運ぶことが難しくなっています。ですので、今後について考えたときに「もっと気軽に身近で相談できるクリニックがあれば……」という思いに至りました。それが開業した理由です。心配なことがあればすぐにかかれるようなクリニックが身近にあれば、安心ですしね。立地については、群馬県だと前橋市や太田市、富岡市などには乳腺外科が専門のクリニックがあるのですが、高崎周辺は人口が多いにもかかわらず気軽にかかれるクリニックが見当たりませんでした。そのため、この地域での開業を決めました。

どういった症状で来院される患者さんが多いですか?

乳腺外科だと、痛みで来院される方が多いですね。あとはしこりや出血、不自然な形のくずれが気になり受診される方もいます。痛みの場合は女性ホルモンの影響による胸の張りということも多く、乳がんにつながることは少ないですね。ただ、ちょっとした症状であっても不安は募りますので、気軽にご相談いただくことが大切だと思っています。あとは、市の乳がん検診や人間ドックを受けて、精密検査を勧められたことがきっかけだという患者さんもいらっしゃいます。甲状腺などの内分泌外科だと、ほてりや動悸など更年期障害の症状を気にされて来院される方もいますよ。甲状腺による疾患と更年期障害の症状の中には似ているものもあるため、血液検査などで調べて治療方針を決めています。

予約制を取り入れていると伺いましたが、やはり感染症対策からでしょうか?

吉田崇院長 高崎乳腺外科クリニック2

感染症対策の面ももちろんありますが、乳腺の診療は超音波など少し時間がかかる検査や治療があるため、予約制にしたほうが患者さんをお待たせしないと思ったことも大きな要因です。今は30分に3人というペース配分で診療を行っています。感染症対策では、空気清浄機を導入し、スリッパなどを殺菌できる機器も備えました。換気の面も考慮して、窓も大きめに設計してもらっています。

乳がん治療をきっかけに、幅広い疾患への理解を深める

乳がんの発症率は上がっていると聞きます。治療方針などはどのようにお考えですか?

吉田崇院長 高崎乳腺外科クリニック3

確かに、乳がんの患者さんは増えていますね。日本人女性の割合だと、9人に1人といわれています。20年前だと30人に1人くらいの割合でしたので、増えていますよね。食生活や生活環境の変化などが要因の一つであり、以前に比べて治療も複雑になっています。そのため、今は「地域連携」といって、大きな病院で手術を終えた患者さんのケアを地域のクリニックが行う流れが推進されています。手術後も10年ほどホルモン剤を飲む患者さんもいますので、年に1回は手術を行った病院で検査をして、日常的なケアは私たちのような地域のクリニックが連携して行う流れです。患者さんも完全に病院から離れるわけではないので安心していただけると思います。

ほてりや動悸など更年期の症状を相談に来られる方もいらっしゃるそうですね。

そうですね。一般的に更年期障害の症状は婦人科にかかる方が多いのですが、当院に相談される方も少なくありません。実は乳がん治療の過程には、薬などでホルモンを調整して一時的に更年期障害のような症状をつくることがあります。そうしたときに副作用で食欲不振やだるさが出る方もいるのですが、こうした症状が少しでも和らげばと、漢方やプラセンタ注射を取り入れた治療を行っています。婦人科のように女性ホルモンをテープや薬で補充するという治療は行っていないのですが、当院でも対応できることで患者さんの不調が楽になればと思っています。婦人科の先生には漢方に詳しい方もいらっしゃるので、教えてもらうことも多いです。プラセンタ注射は45歳から59歳までは保険適用なため、続けやすい治療の一つかと思います。

甲状腺疾患ではどのような症状に気をつけるとよいでしょうか?

吉田崇院長 高崎乳腺外科クリニック4

甲状腺疾患は触診することが多いです。ただ、甲状腺がんは他のがんよりも大人しいタイプで、命に関わる危険性もまれです。乳がんの検診と一緒に触診をしてもらうというのが一般的ですね。人間ドックなどでは、オプションで甲状腺の数値を血液検査などで診てもらえます。甲状腺の場合はしこりができるかできないか、ホルモンの働きに影響が出るかどうかが判断基準です。甲状腺ホルモンは代謝に関係しており、バセドウ病のようにたくさん出てしまうと常に運動しているような状態が続いて体が消耗してしまいます。反対に、ホルモンの量が減ってしまう橋本病のような場合だと、太りやすくなったり便秘がちになったりとなんとなく不調が続きやすいです。喉仏の下にあるくぼみを触ってみて、膨れていたりしこりがあったりするときには受診を検討してみるとよいでしょう。

3年間の乳がん研究。早期発見が治療の鍵に

先生が医師をめざしたきっかけを教えてください。

吉田崇院長 高崎乳腺外科クリニック5

幼少期は、火薬の研究者で東大の教授をしていた叔父の影響で、研究職に憧れがありました。その後、中学の時に父が心筋梗塞で倒れたことをきっかけに医師の道へ進みました。専門分野を決める時にも、父の疾患から心臓血管外科を選んだのですが、当時は外科に進むと消化器とか乳腺とか一通りの専門分野について学ぶ機会がありまして……。実際に学んでいくうちに、乳腺と内分泌を専門にする先輩やメンバーとの縁が深まり、今の道に至りました。がん研究は今後の発展がより期待される分野だったことも決め手ですね。その後に進んだ、埼玉県立がんセンター研究所で、乳腺のがん研究を3年行いました。

乳がんの研究も3年間行っていらしたのですね。今後についてはどのようにお考えでしょうか?

アメリカの有名女優の方が発表したように、乳がんの5~8%は遺伝が関係しているといわれています。乳がんの中では割合が少ない事例ではあるのですが、これからはこうした症例が少ない症状の方にも多くの時間を割くことが必要になると思っています。みんな一緒にではなく、遺伝性の乳がんが危惧される場合は、妊娠・出産のことや予防的な手術をするかどうかなどさまざまなことを考慮する必要があるでしょう。一般的な乳がんの患者さんはもちろん、大きな病院とも連携しながら、さまざまな乳がんの患者さんに対応していく時代になるだろうと思っていますね。私たちのような地域のクリニックが患者さんのケアを広くフォローできれば、大きな病院で経験を積む若い医師たちが臨床だけでなく研究や論文に時間をかけるようにもなりますしね。そんな未来がつくれればと思っています。

最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

吉田崇院長 高崎乳腺外科クリニック6

乳がんについては、まずは胸にしこりがあるかどうかが受診の目安です。生理が終わって4~5日頃がセルフチェックに適した時期で、胸に触れてみて硬いしこりやえくぼのようなくぼみがないか、下着に血がついていないかを見てみるとよいでしょう。市の検診などでも推奨されるように、一般的に40歳からは2年に1回は乳がんの定期的な検査の受診をお勧めします。親族に乳がんになった方がいる場合は、30代後半くらいからが検査の目安です。早期発見することが大切ですね。また、甲状腺や更年期障害の症状は気づきにくい症状も多いため、気になることがあれば気軽に受診していただければと思います。

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