松尾 敏 院長の独自取材記事
まつおこどもクリニック
(京都市中京区/二条駅)
最終更新日:2026/06/18
「病気だけを診るのではなく、その子の人生を見てあげたいんです」。穏やかな笑顔でそう語るのは、京都市中京区の二条駅そばで2006年に開院した「まつおこどもクリニック」の松尾敏院長だ。京都府立医科大学を卒業後、大学病院や複数の医療機関で研鑽を積んだ、日本小児科学会小児科専門医である。勤務医時代、慢性疾患の子どもが通院のために学校を休まざるを得ない現実に直面し、より柔軟に患者の生活に寄り添える場を、と考え開院を決意したという。かつて子どもだった患者が大人に、そして親となり子どもを連れて来院するなど、世代を超えて愛される同院には、朗らかなベテラン医師、松尾院長の信念が息づいている。その診療方針や専門分野への情熱、今後の展望について話を聞いた。
(取材日2026年5月15日)
子どもの日常を守りたい、その思いから開院の道へ
まずは、開院に至るまでの経緯をお聞かせください。

勤務医時代、糖尿病をはじめとする慢性疾患のお子さんが、通院のために決まった曜日に学校を休まなければならないという問題に直面しました。高校生ぐらいになると、その曜日を休み続けると単位が取れなくなってしまうんですね。診療の曜日を変えて対応するなどの工夫を試みましたが、組織の体制ではどうしても限界があったのです。そのことから、子どもの日常を守りながら診ていきたい、それなら自分で開院すれば土曜でも平日の夕方でも、その子の生活に合わせた柔軟な時間設定ができると考え、開院を決意しました。生まれ育った京都市中京区の近くで開きたいという気持ちもあり、2006年に二条駅すぐの複合施設内に開院したのです。
医師を志されたきっかけや、小児科を選ばれた理由を教えてください。
父が産婦人科の医師をしていたこともあり、小さい頃から学校の先生や周囲の方々に「医者になるべきだ」と言われて育ちました。そのことから、自分の中でも常に選択肢の一つとしてあったのだと思います。そうして、医学部への進学を決め、京都府立医科大学に入学しました。小児科を専門に選んだのは、臨床実習で各科を回っていたときに、小児科の先生方がとても楽しそうに仕事をされている姿が印象に残ったからです。産婦人科の医師だった父の影響もあり、赤ちゃんが生まれた後にどう育っていくのかという関心もあり、小児科を専門に選びましたね。卒業後は複数の病院で研鑽を積み、どの病院でも不思議と糖尿病のお子さんを診る機会が多かったのです。その経験が、今の専門領域につながっています。
院内の設備や環境づくりでこだわった点はありますか?

私が得意とする分野は糖尿病ですので、血糖コントロールの指標であるヘモグロビンA1cは、開院当初から院内で測定できるようにしています。現在はCRPという炎症の度合いを示す数値を測るための機器も導入しており、受診したその日のうちに結果をお伝えすることが可能です。また、内分泌疾患の診断に有用な骨年齢を確認するための手のエックス線設備や、甲状腺などをチェックするための超音波検査機器も備えています。さらに、隣接するテナントを活用した多目的スペースがあり、糖尿病のお子さんにひと汗かいてもらう運動の場として使っています。以前は肥満のお子さんの運動にも活用していましたし、今後もその時々の状況に合わせて柔軟に生かしていきたいと考えています。
病気だけでなく、その子の人生を見据えた治療を
先生が得意とする糖尿病の診療では、どのようなことを大切にされていますか?

同じ糖尿病でも一人ひとり状態は異なりますから、その子その子に合わせた治療が欠かせません。私が大事にしているのは、病気だけを診るのではなく、その子がどんな生活を送りたいか、将来どうなりたいかまで含めて治療を考えること。病気さえ治れば良いのではなく、社会の中で活躍し、自分自身も満足できる人生を歩んでほしいと思っています。また、患者さんの努力を認めながら、長い目で見守ることを大切にしています。例えば、症状のコントロールに苦労していた子が成長して立派に仕事ができるようになることが、何よりもうれしいことですね。糖尿病のお子さんは20歳を超えても診続けていますので、その歩みを見届けられることが大きなやりがいです。
内分泌代謝の領域についてもお聞かせいただけますか?
内分泌代謝、とりわけ甲状腺に関わる疾患のお子さんは非常に多く来院されます。この領域で難しいのは、病態が途中で変化することがある点です。例えば、甲状腺の機能が低下していた状態が、ある時期を境に亢進へ切り替わるケースもあります。最初の見立てが後から違っていたとわかることもありますから、年齢やその時々の状態に合わせて、注意深く経過を追い続ける必要があるのです。だからこそ、まず適切に診断をつけることが出発点になります。新しい知見は日々更新されますので、先進の医療情報を学び続けながら、その子にとって最善の治療を見極めていきたいと考えています。
診療全体を通して心がけていることを教えてください。

正しく診察し、正しく診断をつけること。これが診療の中で一番大切にしていることです。診断を誤ると、当然その後の治療も適切なものにはなりません。そのために私一人で抱え込むのではなく、スタッフや親御さんにも協力してもらいながら、お子さんが安心して診察を受けられる環境を整えるよう心がけています。院内の雰囲気もできるだけ和めるものにしたいと考えています。ただ、当院は開院から20年近くたち、親御さんの世代も変わりましたから、時代に合わせて柔軟に見直していくことも必要だと感じています。また、勤務医時代には幅広い疾患を経験してきましたので、対応できる範囲はしっかり診療しつつ、ここでは難しいと判断した場合は速やかに信頼できる病院へご紹介するようにしています。
「困ったらおいで」。世代を超えて寄り添い続ける
診療を支えるスタッフの体制について教えてください。

当院には看護師、事務職員に加え、保育士も在籍しています。ベテランのスタッフが多く、いつも同じ顔ぶれでお迎えできる点は、患者さんにとって安心につながると思います。保育士は以前併設していた病児保育の頃から勤めており、お子さんや親御さんへの声かけや問診の対応にもとても慣れています。久しぶりに来院された方にも自然とコミュニケーションを取ってくれるので、助かっていますね。また、週に2回ほど、子どもの心の診療を担当する医師にも来てもらっています。最近は不登校や発達に関するご相談が増えてきましたからね。外に出る機会が少ないお子さんの中には、日光を浴びて作られるビタミンDが不足しているケースも見受けられ、将来の骨の健康への影響が気がかりです。
今後のクリニックの展望についてお聞かせください。
小児科の医師というのは、診ている患者さんよりも自分のほうが年上であることがほとんどです。だからこそ、特に慢性疾患の患者さんを長く診続けるための体制をしっかり整えておきたいと考え、将来を引き継いでくれる医師を迎える準備も進めています。うれしいことに、子どもの頃から通っていた患者さんが大人になり、今度は自分のお子さんを連れて来てくれることが増えました。中には「先生にお願いしたい」と、ご家族そろって通ってくださる方もいます。そうやって2代、3代と安心して任せてもらえるクリニックでありたいというのが、私の願いです。患者さんとの相性もありますが、合う方にはずっと寄り添っていきたい。私自身、生涯現役で医療に携わり続けたいと思っていますから、そのための体制づくりにも力を入れていきたいですね。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

「困ったらおいで」、これが一番伝えたい言葉です。こんなことで受診してもいいのかなとためらう方は多いと思いますが、些細に思える症状の裏に大きな病気が隠れていることが実際にあります。親御さんが「何か気になる」と感じるときには、何かしらの理由があるものなんです。子どもは治癒力が高いですから、大抵の病気は適切に安静にしていれば回復が望めます。ただ、早く対応しないと悪化してしまうことももちろんあるのです。その見極めは私たち専門家でも難しいものですから、ご家庭だけで判断するのはなおさら大変でしょう。だからこそ、ちょっとしたことでも気になったら遠慮なく相談していただきたいと思います。お子さんのことで何か引っかかることがあれば、いつでも頼ってください。

