佐野 裕信 院長の独自取材記事
佐野外科
(名古屋市守山区/新守山駅)
最終更新日:2022/10/03

父である先代の院長が開業してから45年、長きにわたって近隣住民の健康を守り続けている「佐野外科」。佐野裕信院長が、2013年に同院を承継し、外科を中心にした地域のかかりつけ医院として、幅広い年齢層の診療にあたっている。また、ペインクリニック外科を標榜し、長引く痛みや原因がわからない痛みの治療にも注力する。「つらい痛みや苦しみを、なるべくその場で解決する。もしその場で難しい場合は、その解決の道筋を立てる」ことをモットーに、患者の話をじっくり聞き、寄り添った診療を続ける佐野院長。ペインクリニックの治療や診療時に心がけていることなど、じっくり話を聞いた。
(取材日2022年9月7日)
患者の痛みや苦しみに対し、その場で解決をめざす
まず、医師になられたきっかけを教えてください。

わが家は父も兄も外科の医師で、当院も父が開業しました。「父の仕事をする背中を見て自分も医師に」というような格好いいことを言えると良いのですが、どちらかといえば子どもの頃から医師になるものだと思っていたという感じです。医学部に入学してからは、やはり勉強は大変で、覚えることが非常に多く記憶力勝負でした。その半面、中学高校と違って規則に縛られることもなく、大学生活は自由で楽しかったですね。
昭和から長く続くクリニックなんですね。
はい。1977年に父が開業したので、もう45年になりますね。学生の頃は、このクリニックを継ぐと決めていたわけではなかったので、外科ではなく救急医療の道に進んだのですが、父や兄の勧めもあり、2013年に当院を承継しました。開業医院の医師になるというのは、やはり大学病院や総合病院で勤務するのとは少し違うと思います。救急のような分野はクリニックでは求められる機会も少ないので、少しずつ臨床を覚えていきました。初めは麻酔科の医師として勤務し、手術に立ち会ったり当直をしたりと忙しい日々を過ごす中で、さまざまな経験を積みスキルが上がり、それが今につながっていると思います。現在は、地域の方々に対し、外科を中心として身の回りのさまざまな疾患に対応しています。
患者層や主訴、また診療方針について教えてください。

以前は高齢の患者さんが多い印象でしたが、最近はけがをしたお子さんから働き盛りの方たち、高齢の方まで年齢層も幅広いです。主訴も、交通事故のけがや転倒のけがなどさまざまですね。またペインクリニック外科を標榜していますので、痛みに対するさまざまな悩みを抱えた患者さんが来院されます。どんな患者さんに対しても、その痛みや苦しみ、悩みをその場で解決したいという想いを持って診療にあたっています。例えば、クリニックがすごく混んでいる時や、診察終了間近の時間帯でも、道で転んで頭から血が出てしまったり、工場のプレスでけがをされたりなど、急患の患者さんはいらっしゃいます。そういうときでも、喜んでというのはちょっと言葉が違うかもしれませんが、しっかり診察・治療し、その場でそのつらい状況を解決して差し上げるように心がけています。
さまざまな治療を組み合わせ、患者に合った治療を選択
先生がクリニックを承継されたときに、リノベーションをされたんですか?

僕がこの医院を承継した時に、壁紙や床材、扉など外装内装含めすべて新しくしました。実は現在もリニューアル中というか、古くなったり不都合が出たところは新しくし、患者さんにもスタッフにも使いやすいように日々進化しています。同時に、リハビリテーション用のけん引装置も新しく2台導入しました。また、エックス線もデジタル化し、患者さんがエックス線室から診察室に戻られる時には、すでに画像がモニターに映されていて、その場ですぐに説明することができるようになっています。患者さんも、ご自分の状態をすぐに目で見て確認することができ、安心だと思います。一方で、院の方針は父のやり方を踏襲している部分が多いですね。いきなりやり方を全部変えてしまうと、患者さんもスタッフも戸惑うと思いますし、あまり「僕が、僕が」とならないように心がけています(笑)。
ペインクリニック外科を標榜されていらっしゃいますが、どのような症状が該当するのでしょうか?
ペインというのは痛み全般を指しますが、痛みというのは難しいんです。痛いけれど原因がよくわからない、でも痛いという状況が続くことは、患者さんにとってはとてもつらいことだと思います。ですから、なかなか自分の思ったように状況が改善されず、いくつもクリニックを渡り歩いている患者さんも結構いらっしゃるんですね。例えば骨折や打撲のように、明らかに痛みの原因がわかっている疾患は良いのですが、傷やけがなどが完全に治っていても痛みが続いていたり、原因がわからないまま痛みがずっと継続しているというような場合にも対応できるように、ペインクリニックを開設しました。最近は、そういう痛みに対してもさまざまな薬や注射などで軽減することがめざせるようになっています。
具体的には、どのような治療方法なのでしょうか?

当院では、投薬・ブロック注射・血管注射・リハビリテーションなどいろいろ取り入れながら、その患者さんに合う方法を見つけるようにしています。お話を伺うだけで気持ちがすっきりされて痛みの軽減につながるケースもあると思いますので、そういう方はなるべく時間を取ってお話を聞くようにしています。また、帯状疱疹後に残る痛みなどにも対応しています。帯状疱疹が治っても痛みが長く続く方がいらっしゃいますが、そういう方も治療を続けていただくことで、症状の変化が期待できます。痛みはつらいですし、何科にかかれば良いのかわからないという患者さんも多いと思うので、そういう方はペインクリニックで相談されると良いと思います。
五感を働かせ、心身の不調を見極める
先生が診療時に心がけていらっしゃることはありますか?

診療時に常に心がけているのは「しっかり五感を働かせて漏れがないように」ということです。患者さんの心身の不調を漏らさず受け取ることができるように、しっかりと向き合うようにしています。それには鋭敏な視力・聴力が必要で、患者さんの姿や様子、お話から心身の不調をくみ取っていくことが大事です。例えば、患者さんのお話を聞いていると、実は本当の痛みは別のところにあったり、来院された理由の他に気になっていることが2つ3つあったりということがあるんです。そういうことを漏らさず五感を精いっぱい使って見極めるようにしています。これには、長年の経験に基づいたひらめきも重要だと感じています。
ところで、私たちが自分でもできる健康法はありますか?
痛みなどがあると、体を動かすことをついやめてしまいがちですが、運動はとても大事です。患者さんに「運動しましょう」と何回もお話ししますが、やはり日頃運動していない方は、始めるまでのハードルが高いようです。マラソンをするとかジムへ行くというような本格的な運動でなくてもいいんです。お散歩がてらウオーキングをするとか、テレビを見ながらスクワットするとか、少しでも体を動かすことが大事です。軽い運動ならできれば毎日、少し強めの運動なら週に3、4回と、自分で決めて続けられるといいですね。患者さんには「運動は、お金も時間も場所も必要ないんですよ。畳一畳あれば始められます」とお話ししています。運動の大切さは不変ですから、今日から少しずつ始めてみましょう。僕も、皆さんの目標になれるよう、頑張って運動していますよ。
最後に、今後の展望と読者の方へのメッセージをお願いします。

今、診ている患者さんがだんだん高齢になられて、通院されるのが大変になっていくと思います。例えば訪問診療などは一例ですが、それにはマンパワーが必要ですよね。すぐに何かを始めるのは難しいかもしれませんが、高齢の患者さんを生涯しっかり診ていくためにどうするのが良いのかを、今いろいろと考えているところです。僕は「今日、明日をしっかり生きる」という思いを大切にしてますが、遠い将来を見て生きていくのはちょっとつらいなという時でも、明日くらいなら見据えることができると思います。患者さんにも、今日と明日をしっかり生きていくことを目標にしながら、病気とも向き合ってもらえると良いなと思います。僕も、患者さんとしっかり向き合い、できることはすぐ解決し、すぐに解決できないときは解決への道筋を示して差し上げられるように頑張りたいと思います。