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門間 文彦 院長の独自取材記事

みえ在宅医療クリニック

(亀山市/亀山駅)

最終更新日:2020/09/30

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JR亀山駅から徒歩5分。「みえ在宅医療クリニック」はショッピングセンターや文化施設に囲まれた市の中心地に位置する。生まれも育ちも亀山の門間文彦院長は三重大学血液内科で白血病などの治療・研究に尽力してきたが、地元へのさらなる貢献をめざして在宅医療の道へ。いしが在宅ケアクリニックの勤務医を経て2020年7月に同クリニックを開業した。門間院長は医学と哲学を両輪に人間の生と死を見つめ、患者に寄り添い続ける。その背景にある想いを尋ねた。
(取材日2020年8月19日)

在宅医療の分野から地域に貢献する

在宅医療の道に進まれた経緯をお聞かせください。

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病気が治ることがなく、病気とともに生きていかなければならない患者さんに医師としてできることはないかと考え、在宅医療を始めました。取り組んでみると、自分のやりたかったことや価値観とぴったりだったんです。在宅医療の魅力は、安心できる自宅にいながら適切な診療を受けられること。ご家族や支援してくれる人たちとの温かい交流や、普段通りの食事、なじみのある布団での睡眠。入院ではそういったことが難しいですからね。また、24時間365日対応しているので、なんらかの症状やトラブルがあった時にはいつでも連絡できるという、ご家族の安心感にもつながります。かかりつけ医として診療だけではなく、自宅で治療を続けていくためのサポートなど、さまざまな相談ができる場になる。そんな在宅医療に魅力を感じ、この道での開業に至りました。

ここまでの手応えはいかがですか。

地域の皆さんの期待度の高さは肌で感じています。印象的だったのは、亀山の行政や医療センター、社会福祉協議会などの方々にごあいさつするため総合福祉センターに出かけたところ、最初2~3人の予定が30人ぐらいとお会いする事態になって、名刺がなくなるほどに(笑)。そこでまず、非常に期待してくださっていることを感じました。また、いわゆる内覧会にあたる在宅医療相談会を開いたときに、参加者の4割近くが地域の方たちだったんです。在宅医療クリニックの内覧では関連業種の方が中心だと聞いていただけに、この地域の在宅医療への関心の高さが伺えました。超高齢社会の中で自分や家族のことが心配だからこそ、このクリニックに関心や期待を寄せてくださっているのだと思います。

地域医療への想いはお強いですね。

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在宅医療は現状、まだまだ知られていません。先日も、がんの患者さんが「制度の存在を知らなかった」とおっしゃっていました。しかもご自宅にさまざまな職種の方が来るので、「こんなぜいたくな医療を求めていいのか悩んだ」とも。でも実は逆なんです。コストは病院にいるよりかからず、結果、社会への負担も軽くなります。それなのに皆さん知らなくて、通院か入院か、あるいは施設に入るか、そのぐらいしか選択肢がない。家にいられる可能性なんて考えたこともないと思うんです。多職種の方々と協力して在宅医療を一般化することで、家にいることが選択肢になる地域にできればと思っています。それが三重県全域にも広まればいいですよね。興味のある医師は多いと感じていますので、私自身が先頭を走り、その姿を見てもらいたいと考えています。

血液内科と在宅医療の親和性

血液内科からの転向に葛藤はありませんでしたか。

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大学病院で白血病の研究と治療を行ってきました。そうすると年単位で患者さんと付き合うことになり、長い時間を共有し、関係も密接になっていきます。ただ、治っていく時はいいんですが、治らない時、患者さんをケアする社会的システムがあまり十分ではないんです。白血病患者の長期生存率は約半数。出会った患者さんの半分を失います。その過程で何もしてあげられないと感じるようになって。ある患者さんを担当した時、「病院のご飯はまずい。自分の作った米ならもっとうまいのに」と言われたことがあります。気持ちはわかっても、感染症や輸血の問題があって家には帰せません。在宅医療があったら幾分かの時間は家で過ごし、ご自分のお米でご飯も食べられるかもしれない。この地域にも在宅医療があればと思ううち、研修医の頃から親交があった石賀丈士先生からお誘いがあったんです。ただ、大学病院で白血病の責任者を務めていたのでどうすべきか迷いました。

最終決断の理由は?

「家に帰りたい」という患者さんを帰してあげられなかった悔しさが在宅医療の道に転身したきっかけでした。やってみると、患者さんと長く付き合うことには慣れていたので、血液内科と在宅医療との親和性の高さに気づきました。全国でも血液内科出身の在宅医は多く、皆さん患者さんと長く深く付き合いながら地域で活躍しています。私も経験してきたものを、自分の生まれ育った町に還元し、地域の人たちが安心して家で過ごせる環境を創ってみたいと思うようになり、開業することにしました。そういう意味では、いちばん得意なことで開業したのかなと思います。

血液内科でのご経験で生かされてされていることは?

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白血病の治療、骨髄移植は確かに専門性の高い分野で、抗がん剤や放射線治療など、患者さんの負担が小さくない治療を多く経験してきました。そこから患者さんを回復させていくために、きちんとした全身管理をやってきましたので、在宅医療にあたってもその知識や経験がたいへん役立っています。それに在宅医療というのは、治る治療を目的としていない部分も大きく、いろんなところでいろんな治療をしてもらったけれど、もう治療できない状態に至って在宅医療を求める方が多い。だから個々の病気に対する専門性はなくても、これまで受けてきた基本的な治療を踏襲しながら、あとは自宅でどう過ごすか考えていくことが大事なんです。

深い哲学と死生観をもって人間を探求する

常に心がけていることはありますか。

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家族が大きな病気になった時、先生や看護師さんたちに良くしていただきました。困った時に受ける親切は、とてもありがたいもの。ですので、患者さんが困っていることや悩んでいることには親身に対応したいです。それが自分の受けた親切への恩返しになると思っています。また、患者さんとご家族を地域の多職種と「つなぐ」ことは大切にしています。患者さんには、みんなとつながっている安心感を家で暮らす原動力にしてもらえるようサポートしていきたいですね。私自身はドライブしながら患者さんのところに行って、いろんな話をして、いろんな人生にふれて帰ってくる。24時間365日の側面はあっても、夜はソファーに寝転がって映画を見たりしますし、途中で患者さんに呼ばれれば自然と動ける。実は、夜間や休日の往診の時こそ患者さんとの距離が縮まる絶好の機会なんですよ。ある意味楽しんでいるので、オンとオフの切り替えは難しくないですね。

家庭に介入するので神経を使うのでは?

私自身患者さんを深く観察するのが好きで、人間なり、人の背景に興味があるんです。おそらく血液内科で患者さんと長く接するうちに身についたんでしょう。だから患者さんの生活が垣間見えることにも気苦労はありません。むしろ患者さんがどういった人生を送ってきたのか、一端を知ることができて興味深いですし、どう対応していけばいいか、どうしたらご家族が安心して納得できるかも考えたいです。私たちは看取りまでの時間をともに過ごしますが、わずかな時間にもそれまでの人生が反映されます。人は急に行動を変えられないですからね。それが看取り前には色濃く表れます。俳優がいろんな人生を演じることで何かを理解できるように、私たちもいろんな人生を診ることで得られるものがあると思っています。

今後の課題を教えてください。

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地域に在宅医療を根づかせることに尽きますね。そのためには自分たちのキャパシティーを拡大しながら、多職種の人たちとも切磋琢磨してレベルを底上げしていきたい。また地域と関わりを持ち、独居など社会システムの問題に直面することがあれば、そこでも貢献できるかもしれません。最終的には、看取りや死に方への理解を促したいんですよ。現代の日本人は過剰に死を恐れ、その準備をネガティブにとらえがちですが、本当はもっと考えなければいけないんじゃないかと。死は誰しも避けられず、死を遠いものとして深く考えないで済ますのは、生き方も深く考えないことにつながる気がするんです。看取りを考えることによって人生そのものを考えるきっかけになり、社会全体の意識にも変化が生まれるといいですね。

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