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国仲 慎治 院長の独自取材記事

アイビーホームケアクリニック

(浦添市/てだこ浦西駅)

最終更新日:2021/10/12

国仲慎治院長 アイビーホームケアクリニック main

2020年7月1日、浦添市や那覇市、宜野湾市などを対象エリアにする在宅医療の専門クリニック「アイビーホームケアクリニック」が浦西に誕生した。外科の医師として胸部外科や救急医療、がんに関連する遺伝子の研究などさまざまな研鑽を積んできた国仲慎治院長が運営する。多くを経験する中で、最後まで自分らしく生きていくことの大切さを痛感。介護される側の気持ちに寄り添った温かな在宅医療を、看護師である妻と二人三脚で提供しているのだそう。自然な笑顔から優しい人柄が伝わる院長に、今後の展望を中心に語ってもらった。

(取材日2020年8月7日)

病院の医療とは異なる可能性に気づき、在宅医療の道へ

先生が医師をめざしたきっかけや外科を選ばれた理由を教えてください。

国仲慎治院長 アイビーホームケアクリニック1

ドラマチックな理由は特にないのですが、新しいものをつくったり何かを発見したりというのは昔から好きだったので、それが関係しているのかもしれません。沖縄は日差しが強いから車の上にソーラーパネルを載せてソーラーカーみたいにしようなど、いつも想像して楽しんでいるような子どもでした(笑)。研修時代にいろいろな診療科を経験する中で、単純に外科をやりたいなと思って選んだ。そんなシンプルな理由です。

これまでのご経歴は?

大学卒業後は大学病院で一般外科や胸部外科、救急などを経験し、その後は福岡の九州がんセンター呼吸器部に行きました。そこは九州一円から患者さんが集まってきますので症例も多かったし、手術だけでなく抗がん剤など内科的なものも経験をさせてもらいました。そこで働く医師たちは皆、研究にも注力されていて、勉強会もありました。そういう環境の中で研究をしたいなと思い、そこに来られていた九州大学の先生のもとで研究を始めました。その後紹介してもらって熊本大学や慶応義塾大学などでがんに関わる遺伝子の研究をしたといった流れです。

その後なぜ在宅医療の道に進まれたのですか?

国仲慎治院長 アイビーホームケアクリニック2

研究を存分にやって、じゃあどこに戻るかと考ていたときに出会ったのが在宅医療だったんです。在宅医療は病院での医療とはまったく違います。普通の病院の医療を続けていた先生方には在宅医療は入りづらいと思うのですが、僕はある意味病院のスタンダードな医療から離れていたから抵抗がなかったのかもしれません。在宅医療は入ってみたらすごく奥が深いんです。医療的にできることは限られますので、治る病気は病院で治してもらうのですが、治らない病気もあるわけです。そういうのをどうケアしていくかというところも在宅医療の一つの役割だと思っています。

開業前に愛媛県の松山市に行かれたそうですね。

在宅医療を学ぶための医療機関を何ヵ所か見て回ったのですが、その中で選んだのが愛媛県の松山市にあるたんぽぽクリニックでした。そちらは職員も100人くらいいてすごく活気に満ちあふれていたんです。院長は本も書かれるなど情報を周りにも発信されている方で、2年間そこで勉強させてもらいました。僕は在宅医療は初心者だったので、こういう症例があるんだよ、ということをたくさん学ばせていただきましたね。在宅医療は医師だけではできなくて、連携がすごく大事。そこは看護師さんが独自で動く看護ステーションもあるし、介護の人もいる、リハビリ担当もいる。何かあったときのための病床もありました。多くを見ることができて良かったと思っています。

自分らしく自宅で過ごせるようにするためのサポートを

そこで学ばれて開業されたわけですが、なぜこちらに?

国仲慎治院長 アイビーホームケアクリニック3

もともと浦添市は在宅医療が進んでいて、最近は那覇市も充実しつつある状況です。浦添市は在宅医療を担っていた先生方が高齢化して世代交代の時期にきていることと、このエリアに実家があったことからここでの開業を決めました。エリア的には元気な高齢者が多い。まだ寝たきりの人はあまりいないけれど、年齢が進むと、介護が必要になってくることもあるかと思います。緊急対応が必要なケースがあることも考えて、診療エリアは基本的に車で30分圏内。浦添市を中心に、近隣のエリアを想定しています。ただ、ご事情があればエリア外でもご相談いただければと思います。

現在の沖縄の在宅医療はどのような特徴がありますか?

先輩の先生方から話を聞くと、施設への訪問診療が多いと言っていました。松山では施設と自宅が半々。どちらがいいのか客観的に見たときに、やはり自宅にいる患者さんのほうが幸せそうに見えますね。沖縄で施設が多い理由ははっきりわかりませんが、共働き家庭が多いから、そして沖縄の施設が他より安いから、などが考えられるのですが、どうなんでしょうね。都会では高齢単身世帯も多いですし、それでご自宅で介護されている方もおられるわけですから、共働きが多いからというのは違う気もしています。最終的に施設に行くにしても、なるべく長くご自宅で過ごしていける仕組みづくりができればと思っています。何が足りていないのか、どういう状況なのかははっきり言えませんが、医療だけの問題ではない気がしています。

施設や病院でというのと、自宅でというのとでは違うものなのですね。

国仲慎治院長 アイビーホームケアクリニック4

施設や病院では、タバコは吸えませんしお酒は飲めません。食事も決まっています。自宅だと、お酒が大好きなおじいちゃんが死ぬ前に飲んだり、エビフライが大好物のおばあちゃんがひと口味わって穏やかに亡くなったりとか、そういう話がいっぱいあるんです。僕だったら施設や病院ではなくて、ぜひ好きな物を食べて満足して死にたいなと思うので。それができるのが、ご自宅での在宅医療です。食べ物だけではありません。人生のゴールが見えてきている中、制限される場所ではなく自分らしくいられる場所。もちろん治療中なら我慢することも必要ですが、もう残されている時間が見えてきているのなら、糖尿病だろうと何だろうと最後は好きな物を食べて自宅でリラックスして過ごせたらいいですよね。

高齢者だけでなく医療的ケア児の在宅医療にも注力

施設と自宅では大きな違いがあるのですね。先生はどのような役割を果たしていきたいとお考えですか?

国仲慎治院長 アイビーホームケアクリニック5

施設では、体調を崩したりした際に、離れて暮らすご家族、施設の間で意思疎通がうまくいっていないと、治療方針を決めることにすら時間がかかったりするんです。また介護する側にも自宅で見るからこそ家族のつながりを感じることができる。だけど、ご高齢者側は子どもに迷惑をかけるから施設に入れてくれなどと遠慮されるんですよね。その辺りをうまく調整できるようなアドバイスができればいいと思っています。今回、新型コロナウイルス感染症の対策で、施設に会いにも行けない状態になりましたよね。そういうことから自宅で介護する家庭が増えるのではないかと考えています。そうなった場合、地域のさまざまな職種のエキスパートと連携をしながら、地域の在宅医療に貢献できればいいなと思っています。

他にもありますか?

医療的ケア児についても大きな課題があります。松山では小児科の先生が何歳になっても診療を行っています。医療の進歩もあり、重い病状でも多くのお子さんが長く生きられるようになって、成長しています。しかし医療サポート体制がそれに追いついておらず、30代、40代になっても小児科の先生が診ていることが多い。そのため次第に小児科の先生のマンパワーが不足し、診るのが難しくなる場合も出てきています。愛媛県内でも主要な病院の小児科で、一定の年齢を越えた患者さんを続けて診ていけなくなる問題が起きてきています。ご自宅でケアを行い、定期的に病院へ連れていくことができていた親御さんたちも、高齢化によってサポートが難しくなる。成人したときに、小児科の医師から内科の医師へうまくバトンタッチできるように、そういう架け橋になる役割を在宅医療ができればなとも思っています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

国仲慎治院長 アイビーホームケアクリニック6

「自分らしくあるためにご自宅で過ごしていただく」ということを目標にしています。ですので、自宅で過ごすことに困難を感じている人に、まずは気軽に相談してほしいと考えています。困難をうまくサポートしていくためには、医師やケアマネジャー、介護士、看護師などとの連携が必須です。少しずつ輪を広げ、この地域なら安心して自宅で過ごせる、そんな地域にしていきたいなと思っています。

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