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馬場 礼三 院長の独自取材記事

すみれ在宅クリニック

(多治見市/多治見駅)

最終更新日:2025/03/14

馬場礼三院長 すみれ在宅クリニック main

子どもの成長と発達に応じた在宅医療を提供する「すみれ在宅クリニック」。院長の馬場礼三先生は、小児科と小児循環器科のエキスパートとして多数の病院で診療にあたり、2016年7月に同院を開業。現在は、中部大学の教授と在宅医療を提供する医師として、自身の持つ専門性を教育と医療の現場で発揮している。「小児科と小児循環器科の医師であることが強み」と話す馬場院長。子どもが青年、成人に成長後も訪問診療を継続していくことで、患者と家族を支えている。大学時代は陸上、現在はジョギングとスキーを楽しむアクティブな面も。スポーツ医学の知識を生かした診療経験も持つ。開業のきっかけや訪問診療のやりがい、今後の展望などから、馬場院長の情熱と優しさが伝わってきた。

(取材日2025年2月21日)

子どもの成長と発達に応じた在宅医療を提供

訪問診療では、どのような患者さんに対応されていますか?

馬場礼三院長 すみれ在宅クリニック1

現在、患者さんのほとんどが、重症心身障害児です。重症心身障害がある患者さんは、重度の肢体不自由と知的障害が重複し、歩行や呼吸、嚥下、会話などが困難な状態にあります。このような継続的に医療ケアが必要なお子さんを中心に、成人の重症心身障害者、循環器疾患のあるお子さん、脳梗塞の後遺症で医療ケアが必要な大人の患者さんも診療しています。現在は中部大学の教授としてのお仕事が中心で、訪問診療は月曜と金曜、土日、祝日など、大学の仕事が空いている日に行っています。ですが、緊急の往診は対応可能です。ここ多治見市では、古くから訪問診療に対応されているクリニックがありますので、私は土岐市や瑞浪市などにお住まいの方から要望をいただくことが多いですね。

なぜ訪問診療に特化されたのでしょうか? また、開業の経緯を教えてください。

これまで、愛知医科大学の小児科や愛知県コロニー中央病院(現・愛知県医療療育総合センター中央病院)などで、小児循環器科の外来診療に携わっていました。その時に重症心身障害のある患者さんを担当し、日常生活や通院に大変な思いをされている姿を目の当たりにしたのです。通院が困難な患者さんとご家族に対し、「在宅医療を提供すれば、負担を軽減できるのではないか」と考えるようになり、2016年7月に開業しました。私は兵庫県の出身ですが、大学時代から愛知県で過ごし、結婚を機に多治見市で生活するようになりました。開業してからは、多治見市の周辺地域から訪問診療の相談が多く寄せられ、結果的にこの場所で開業して良かったなと感じています。クリニック名に「すみれ」を入れたのは、私が好きな花だからです。名前を考えている時に、ちょうど目の前に咲いていました。なので野に咲くすみれを見ると、うれしくなります。

小児の訪問診療に対するニーズは高まっているのでしょうか? 

馬場礼三院長 すみれ在宅クリニック2

そうですね。近年、新生児医療は進歩している一方、心身に障害のあるお子さんは増えている印象です。小児科の医師は減っていますし、子どもの訪問診療に対応するクリニックも少ないのが現状です。重症心身障害児の場合、人工呼吸や酸素吸入、チューブやカテーテルを使った経管栄養などが必要なケースが多く、病院に通うのは困難です。そのような患者さんの訪問診療をするためには、医師の経験と知識も必要です。私は小児科と小児循環器科を専門に学んできましたので、重症心身障害児の医療ケアに対応できます。また、小児科の医師は乳児から成人まで、幅広い年代の内科診療が可能だと思っています。つまり、お子さんを長期的に診療できるということ。子どもの成長や発達に応じ、長期的に診療できるのが、私の強みだと感じています。

乳児から高齢者まで、幅広く訪問診療のニーズに応える

患者さんのご家族にはどのように寄り添っていますか? 

馬場礼三院長 すみれ在宅クリニック3

患者さんのご家族は、外出もせず一生懸命にケアされていて、大変な思いをされています。私にはお話を聞くことしかできない場面もあります。ですが、それだけで救われたと感じる方もいらっしゃると思っています。以前の勤め先で、40代の患者さんを支える70代後半の親御さんがいらっしゃいました。「この子を一人にしておけない」と不安の言葉や「私が先には行けない」とおっしゃることもありました。これが現実だと思っています。ご家族の不安や、何げない話を聞くことも私の仕事だと思っています。

お子さんの成長につれて、必要な医療ケアは変わってきますか? 

風邪などの体調不良や成長に伴って筋肉が短縮する筋短縮などにより、必要なケアが変わることもありますが、基本的に成長しても訪問診療の内容に大きな変化はありません。適切に薬を処方し、安定した状態を保つことに努めています。一方、ご家族はお子さんの成長とともに、ご自身の体力面に不安を感じることもあるようです。体が大きくなったお子さんを抱えて、車いすからベッドに移動させるのは大変なこと。成人したお子さんの体を毎日抱え、何年もケアを頑張っている親御さんが多数いらっしゃいます。

今後はより幅広く診療される予定だとお聞きしました。

馬場礼三院長 すみれ在宅クリニック4

はい。大学教授としての仕事が落ち着いたら、訪問診療1本にする予定です。お子さんを青年期、成人期も継続して診療するとともに、脳梗塞で半身まひがある方、末期がんで在宅での医療ケアが必要な方、寝たきりの方、ご自など、年齢、症状問わず、可能な限り対応していきたいですね。重症心身障害児の在宅医療ケアを目的に開業しましたが、今後はおそらく高齢者の看取りも多く経験することになると思います。在宅医療のニーズに応えるため、訪問診療により一層力を注ぐつもりです。

「感謝」を力に変え、患者と家族を支える

他の医療機関との連携について教えてください。

馬場礼三院長 すみれ在宅クリニック5

在宅での医療ケアの継続には、病院やかかりつけ医との連携が欠かせません。症状が悪化した際、岐阜県立多治見病院や岐阜県総合医療センター、愛知県医療療育総合センターなどに受け入れをお願いしています。また、患者さんが定期的に通院している病院と連携し、薬の処方や心電図、心臓エコーなどの簡易的な検査はこちらで担当し、患者さんの通院負担の軽減につながればと思っています。訪問診療だけで医療が完結するわけではありません。このように、病院や患者さんのかかりつけ医と連携し、訪問診療を行う医師が適切な医療機関に橋渡しすることも大切です。

どんなときに喜びややりがいを感じますか? 

患者さんのご家族から感謝の言葉をいただいたときに、やりがいを感じますね。私が診療をしているのは、長く付き合っていかなければならない病気でもあります。ご家族からの「ありがとう」には、「気にかけてくれてありがとう」の意味が込められていると思っています。訪問診療の他、電話やメールで状態をお聞きすることもあります。患者さんが風邪などで調子が悪い場合には、いつも以上に気にかけるようにしていますね。直接感謝の言葉をかけられなくても、ご家族の表情から「喜んでくれている」と感じることもあります。自分なりに感謝が感じられれば、それで十分。やりがいにつながっています。

感謝の言葉を診療の支えにされているのですね。

馬場礼三院長 すみれ在宅クリニック6

やりがいや喜びを感じる瞬間がある一方、これまでお子さんとの別れもたくさん経験しました。在宅医療が必要な患者さんは、急変することも少なくありません。少しでも安定した健康状態を保てるように診療することが、私の医師としての仕事です。小児科、小児循環器科の医師だからこそ、乳児から大人の内科診療まで対応ができます。大学教授の仕事が落ち着いたら、訪問診療1本にする予定です。お子さんに関わらず、幅広い年代、症状に対応し、在宅医療のニーズに応えていきたいと考えています。そのためには、医療機器の充実も必要です。今後は医療機器も、今よりも多くそろえていきたいですね。

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