全国のドクター9,467人の想いを取材
クリニック・病院 160,461件の情報を掲載(2022年10月01日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 豊島区
  4. 新大塚駅
  5. ひいらぎクリニック
  6. 神谷 諭 院長

神谷 諭 院長の独自取材記事

ひいらぎクリニック

(豊島区/新大塚駅)

最終更新日:2022/06/30

195230 top

東京メトロ丸ノ内線の新大塚駅から徒歩2分ほどの住宅地に構え、在宅医療を中心に手がける「ひいらぎクリニック」を訪ねた。自宅療養を希望するすべての患者を対象に、24時間365日体制で医療面からサポート。訪問診療や往診、終末期の看取りまで、「家で起こることは何でも診る」という総合診療のスタンスを貫き、患者とその家族にとっての穏やかな療養生活を後押ししている。院長の神谷諭先生は、大学卒業後に臨床の現場に出た後、社会学の研究や政策に従事。医療システム全体を俯瞰するそうした視点が、社会の中で患者を支える在宅医療の現場においても役立っているという。神谷先生に、クリニックの特色や診療で大切にしていることなどについて、これまでの歩みも交えてじっくり聞いた。

(取材日2022年6月16日)

自宅療養をより安心できるものにしていきたい

ひいらぎクリニックでは在宅医療をメインに診療を行っているそうですね。

1

体力的理由や認知機能の問題などで通院が難しくなった方、難病やがんの治療中で自宅でもサポートがあることが望ましい方など、現在は10代から100歳台まで幅広く対応しています。病院と在宅とでの医療を切り分けて考える方もいらっしゃるのですが、大きな病院などに通院中で併診している方も多いです。病院は診断ツール、人員、治療選択肢など環境が整っていますから、通院したいという患者さんのお気持ちを妨げるようなことはしたくないと思っています。とはいえ、通院が負担になってしまう状況は誰にでも起こり得ることで、病院での医療がその時の状態に必ず合っているとは限りません。当院はこれまで通院されていた医療機関とも連携をしつつ、在宅での療養を24時間体制でサポートしています。必要に応じて高次医療機関への紹介もしています。患者さんの全体像を見て、本質的に必要な医療は何かといったことを意識して普段から診療にあたっています。

クリニックの特色を教えてください。

外来診療も行っていますが在宅医療の比重が重く、定期的な訪問診療や急な状態変化時の往診、終末期の看取りなど、24時間365日体制で診療にあたっています。「家で起こり得るあらゆる体調変化に対処する」というのが当院の信条です。在宅医療は個別の臓器にフォーカスするだけでは足りず、生活背景まで含めた患者さん全体で見なければいけないものです。患者さんご本人だけでなく時としてご家族のケアもしていることがあるのは、在宅医療の醍醐味の一つです。超高齢社会におけるニーズの高まりを受けて規模拡大をめざす訪問診療クリニックもありますが、私は手の届く範囲の患者さんたちに、なるべく手厚くケアをして安心していただけるよう、一人ひとりの個別性を踏まえた医療を提供していきたいと思っています。現在、当院の訪問診療は院長の私と女性医師の2人が対応し、主に外来を担当する医師と3人の医師が診療に従事しています。

診療にあたって先生が心がけていることはありますか?

2

まずは何でも相談できるホームドクターでありたいです。そのためには患者さんやご家族との対話が不可欠。まずは声に耳を傾けるようにしています。病院での外来診療では遠慮して聞きそびれてしまったり説明が理解できずだったのだけど、と改めて疑問を投げかけてくださることはよくあります。これまでの医療への疑問点やこれからの不安なども話していただければ、寄り添って一緒に考えていきます。療養生活を少しでも穏やかな気持ちでいられるようにしたいと考えています。

社会全体への俯瞰的視点から在宅医療の道へ

先生がドクターになられたきっかけや、開業以前のご経験についても少しお聞かせいただけますか?

3

父が医師でイメージしやすい職業だったというのが大きかったです。医学部卒業後は地元の関西で大学病院や地域の中核病院に勤務していました。臨床現場はやりがいがあったのですが、病院にいると患者さんを来院された時の状態で診るしか選択肢がなく、高い効果が望める治療の適応が過ぎてから来院される方に次々と会ったり、社会が求めている医療と病院側の提供できている医療体制にズレがあると感じたりすることも多かったです。一人の医師として目の前の現場に追われているだけでは手が届かない問題へのもどかしさを感じ、社会全体の医療システムや制度のありようを是正するために何かできないかと、大学院に進学しました。社会を俯瞰的視野から捉える公衆衛生学分野で学問を修め、医療資源の地域格差や医療の標準化などの研究や政策に携わりました。

在宅医療の道を選んだのはなぜですか?

社会学を学んでいる時に、訪問診療と出会いました。もともとプライマリケアと地域医療にはとても興味があったのですが、その頃の私は在宅医療について深く知らず、新鮮な驚きがたくさんありました。例えば在宅医療に期待される場面も多いお看取り。病院ではできる限りの医療処置を探す場合もあり、患者さんの最期がつらそうに感じることもありました。一方、在宅ではなるべく自然な最期に近づけていく選択肢をとることが多く、少し前まで水を飲んでいたとかご家族と会話を交わせていた方が、気がついたら穏やかに亡くなっていたというようなこともあります。住み慣れた環境でなるべく自然な形で穏やかに命を終えられるというのはご本人にもご家族にもかけがえのない体験だと思います。

在宅医療は病院医療と異なり、社会との関わりの中で患者を支える特殊なものでしょうか。

20220627 4

知られていない面が多いだけで、特殊なものとは思っていません。そもそも医療は決して万能ではないものです。病状に合う治療の選択肢が見つからなかったり、見つかってもそれが希望されるものでなかった場合でも、その方自身の人生は続いているため、社会がその方のケアを担う受け皿として機能を備えていないと安心して暮らせません。中心は患者さんとご家庭ですが、在宅医療を通じて医療、介護、行政、ご家族とで全体としてその意向に沿った地域でのケア体制を構築できるようめざしています。

最期まで家族と過ごす自宅での看取りには満足感も

自宅での看取りにはハードルの高さを感じるご家族も少なくないのでは?

20220627 5

確かに在宅医療には一定の覚悟が必要な場合もあります。病院ならナースコールで病棟内の看護師さんがすぐに見に来られますが、特にご自宅で独居の場合などは誰も見ていない時間帯が発生しますからね。ご家族が同居されていても、それぞれの日々の生活があるので、常時誰かが見ている状態とは違います。ただ、病院での看取りとは大きく違う良さはあります。ご本人が見慣れた環境で最後の時間を過ごすことはとても満足度の高いものです。そして、ご家族にとっても、患者さんと自宅で一緒に過ごすことができた時間そのものが、ご家族のその後の人生における死生観に影響を与える出来事になり得るのかなと。日々の様子の変化をそばで見守ることができたからこそ、亡くなった後、かけがえのない時間でした、とか、やりたいことをやりきりました、とかおっしゃってくださるのかな、と思います。

先生のもとには患者さんの急変時など、夜間も電話連絡が絶えないでしょうね。

緊急用携帯と連動しているスマートウォッチを常時着用しています。開院前は夜間の対応も相当大変だろうと覚悟していましたが、案外日中に連絡をいただけることのほうが多いです。何か足りないところがあって結果夜間のコールになるということがないように、結局は普段から真面目に向き合ってしっかりと安定化をめざすことが一番近道なのかなと。そして、お看取りや急変などで呼び出されることについては、不安がある方からの求めなので、不思議と苦に感じることはありません。

最後に、今後の展望と読者に向けたメッセージを一言お願いします。

6

これからも、患者さんにとって安心感のある医療を届けたいです。クリニックの規模拡大を目標にするつもりはありません。この先また同じ志を持った先生に出会えることがあれば、ぜひ一緒にやっていきたいという思いは持っています。老いや病という困難を抱えた方々のお気持ちを私がしっかり理解できているのかといったら、正直まだまだ学ばせていただいている面が多いと思います。まずは出会った一人ひとりの患者さんとしっかり向き合っていきたいです。また最近は、外来で当院を利用したいといったニーズも増えてきています。今のところは訪問診療が主軸であることは変わりませんが、外来もできる限り対応していきたいと思います。どちらの形にせよ、ホームドクターとして何でもお気軽にご相談ください。

Access