ナローバンドUVBで
アトピー性皮膚炎などの治療に次の一手を
フジ皮フ科クリニック
(横浜市青葉区/藤が丘駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
ナローバンドUVBという言葉をご存じだろうか。紫外線の中の特殊な波長であるナローバンドUVBは、専用の装置でわずかな時間だけ皮膚に照射することで、軟膏などの外用薬による治療で十分な治療結果を得られないアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬、掌蹠膿疱症をはじめとする皮膚疾患や円形脱毛症などの治療に役立つという。一方で、副作用も少なく効果的な治療を行うには、照射量を適切に調整することが必要だそう。そこで今回は、これまでの豊富な経験を生かしたナローバンドUVB照射療法に取り組んでいる「フジ皮フ科クリニック」の井上雄介院長に、その疑問点や治療の流れについて話を聞いた。
(取材日2020年6月15日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- QナローバンドUVB照射療法とは、どのような治療方法ですか?
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A
紫外線の中のナローバンドUVBと呼ばれる特殊な波長だけを照射することで、皮膚の炎症を抑え症状の改善をめざす治療方法です。この波長は、皮膚の深いところまで入っていきますので、塗り薬などで十分な治療結果が得られないような皮膚疾患の改善にも期待できます。治療は、全身照射の場合は、照射量によって1回1〜2分、部分照射の場合は、1箇所で1回10秒程度です。照射中は、痛みや熱さなどをほとんど感じません。当院では、ナローバンドUVBを用いた治療に全身照射用と部分照射用の両方の装置を用意し、治療する場所などによって使い分けています。
- Qどのような疾患や症状の治療に使用するのですか?
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A
アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの炎症性皮膚疾患や白斑、円形脱毛症の治療に使用されますね。当院では、主にアトピー性皮膚炎や掌蹠膿疱症などの治療に使用しています。アトピー性皮膚炎では、軟膏などによる治療が基本となることはこれまでと変わりませんが、ナローバンドUVB照射を併用することで、軟膏を使う量や回数を減らすことができる場合もあります。また、ただナローバンドUVBを当てれば良いのではなく、同じような症状でも患者さんによって照射量などを細かく調整する必要がありますが、大学病院や市中病院で培った経験や技術を駆使し、適切な量を照射することで症状を効率的に改善することをめざしています。
- Q副作用や治療の前後で気をつけたほうが良いことはありますか?
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A
副作用はほとんどありませんが、あるとすればナローバンドUVBを少し当てすぎてしまい、肌がヒリヒリしたり、いわゆる日焼けをしたような色素沈着が起きる場合があります。そのような場合でも、照射をやめれば元に戻っていきます。また、ナローバンドUVBは紫外線の一部ですので、発がん性がいわれることがありますが、現時点で人が発がんしたという明確なデータはありません。一方で、光線過敏症がある方や妊婦さん、前がん病変である日光角化症がある方は、できないことはありませんが、医師とよく相談することをお勧めします。年齢制限も厳密には決まっていませんが、全身照射について当院では、15歳以下の方はご相談となります。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診票への記入
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受付を済ませると問診票を渡されるので記入する。いつ頃からその症状があるのかやその場所、これまでに治療を受けたことがあるかなどの質問があるので、わかる範囲で詳しく記入する。UVBナローバンドを用いた治療は、副作用がほとんどない治療だが、アトピー性皮膚炎の治療で免疫抑制剤を飲んでいる人や日光を浴びるとすぐに肌が赤くなってしまう人などは適さないそうだ。
- 2医師による診察
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診察では、背中や腹部、足や腕などできる限り皮膚を診て、どこの部分の重症度が高いのかなどを把握する。患者本人がナローバンドUVBを用いる治療を希望をしていても、軟膏などによる治療で十分に対処できる場合や、逆に本人は軟膏による治療を希望していても、症状が重い場合は、ナローバンドUVBの照射を勧めることがあるという。同院では、初診当日にナローバンドUVBを用いた治療を受けることも可能だ。
- 3ナローバンドUVBの照射
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治療する場所が全身の広い範囲であれば、全身照射型の装置による治療を、体の一部分であれば、部分照射型の装置でナローバンドUVB照射を行う。全身型の場合は、服を脱いで装置の前に立った状態で照射を受ける。1回の照射は、1〜2分程度。体の前面と後面に照射をする場合は、体勢を変えて2回に分けて行う。部分照射の場合は、1回10秒以内。1回の照射で収まらない広さの場合は、場所をずらしながら複数回の照射を行う。
- 4経過観察
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再診では毎回、症状の改善具合や肌の色味や赤み、かゆみなど、前回の照射後の肌の状態などを確認。もし、前回のナローバンドUVB照射のあとに数日間、肌がヒリヒリしたなどがあれば、照射量を下げるなど、必要に応じて調整する。問題がなければ、肌質なども考慮しながら徐々に照射量を増やし、適切な照射量が決まれば、その量で定期的にナローバンドUVBの照射を行っていく。
- 5定期的にナローバンドUVBの照射を受ける
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症状が治まり安定するまでは、1週間に1〜3回など頻回に照射をしたほうが、早期の症状改善が見込めるそう。また、症状が落ち着いてきたら数週間に1回程度の照射で、肌を良い状態で維持できるようコントロールしていく。ナローバンドUVBを用いた治療は、1回で急激に良くすることを考えるのではなく、継続することで徐々に症状の改善をめざし、治療後の状態を保つことが大切だ。