耳鼻咽喉科の専門家が警鐘を鳴らす
小児の睡眠時無呼吸症候群
戸塚安行かみうら耳鼻咽喉科
(川口市/戸塚安行駅)
最終更新日:2025/04/15


- 保険診療
近年、子どもの注意力や集中力の低下や、「子どもがぼんやりしている」と不安に思う保護者が増えているという。「戸塚安行かみうら耳鼻咽喉科」の井出拓磨先生は日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医でもあり、大学病院でもさまざまな耳鼻科疾患の診療に従事。井出先生は、子どもの「ぼんやり」の原因の一つに睡眠時無呼吸症候群が考えられるという。大人と同様、症状が自覚しにくく、学習や行動、成長、健康に影響を与えるリスクがあるため、正しい知識の周知が必要だと語る。井出先生に、小児の睡眠時無呼吸症候群の原因や症状、治療法について聞いた。
(取材日2025年4月4日)
目次
子どもの集中力低下や成長の妨げを回避するために、睡眠時無呼吸症候群について正しく知ろう
- Qお子さんを診療する中で、気になっている症状などはありますか?
-
A
▲子どもの「ぼんやり」には注意が必要だという
最近、親御さんから「子どもが日中ぼんやりしている」「いびきがひどい」「睡眠時に息が止まっている」というご相談を時々受けます。また、アレルギー性鼻炎の低年齢化が進み、3〜4歳でも症状が見られるお子さんも増えています。鼻が詰まると口呼吸になりやすく、それによって扁桃腺やアデノイドが肥大し、いびきや睡眠時の無呼吸につながることがあります。睡眠の質が低下すると、日中の眠気や集中力の低下、さらには学習能力にも影響を及ぼす可能性があります。もちろん、ぼんやり考え事をしているだけのこともありますが、いびきがひどい、息が止まるといった症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科や小児科を受診されることをお勧めします。
- Q子どもでも睡眠時無呼吸症候群になることがあるのですね。
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A
▲睡眠時無呼吸症候群のリスクについて話す井出先生
はい。原因として多いのは、先ほどお話しした扁桃腺やアデノイドの肥大によって、気道が狭くなり呼吸がしづらくなることです。アレルギー性鼻炎による鼻詰まりや肥満も影響を与えます。症状としては、夜間にいびきや無呼吸が見られる場合、低酸素状態に伴って抗利尿ホルモンが分泌されにくくなり、夜尿症の症状が現れることもあります。このほか、日中にぼんやりしたり、集中力が続かなかったり、学校で眠くなったり、朝起きづらかったりなどの症状が現れることも。これらの症状を「成長のせい」と見過ごさず、小児科や耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。必要に応じて、睡眠検査を行うこともでき、早期に適切な対応をすることが重要です。
- Q気づかずに放置してしまうとどのようなリスクがありますか?
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A
▲早期に適切な検査・治療を行うことで改善を図ることができる
子どもの集中力や学習能力が低下し、記憶力や注意力の減少が見られることがあります。成長ホルモンの分泌が妨げられ、身長や体重の成長が遅れる可能性も。集中力の低下は学業や行動に影響を及ぼし、成績や学校生活にも支障を来すほか、睡眠の質が悪いため、疲れやすく免疫力が低下し、風邪や感染症にかかりやすくなる恐れもあります。さらに、無呼吸が続くことで心臓への負担が増し、高血圧や生活習慣病のリスクが高まる可能性があります。生活習慣病については、大人と比べるとその影響は少ないものの、完全にゼロではないため、症状が見られる場合は早めに専門家に相談し、状況に応じた治療や管理を行うことが望ましいです。
- Q早期発見のポイントや具体的な症状について教えてください。
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A
▲精密な検査結果をもとに、適切な治療法を提案する
子どもの睡眠時無呼吸症候群を早期に発見するためには、親御さんが子どもの様子を観察し、日常生活での変化に注目することが大切です。睡眠中に息が止まる、いびきをかく、口を開けて寝る、寝返りを頻繁に打つなどの様子がないかチェックしましょう。寝汗や起床時の頭痛、だるさがある場合は注意が必要です。睡眠が不十分だと、日中の集中力の低下や、落ち着きがなくイライラしやすくなりますし、学校の先生から授業中の居眠りを指摘されることもあるかもしれません。先述した症状に当てはまるものがあれば、医療機関を受診しましょう。ただ、風邪の場合も一時的にこうした症状が出るので、回復を見守りつつ症状が続くなら相談しましょう。
- Q診断の方法や治療について教えてください。
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A
▲気になる症状があれば、小児科や耳鼻咽喉科を受診しよう
鼻の検査や、アレルギーや中耳炎が原因かどうかを調べるためのアレルギー検査や聞こえの検査を行います。アデノイドや扁桃腺の腫れ具合を確認するためにファイバースコープによる診察を行うこともあります。その後、無呼吸の有無をチェックし、すべての検査結果をもとに診断します。治療方法は、原因により異なります。アデノイドや扁桃腺の肥大が原因の場合は手術が必要で、手術後は1週間ほど痛みが続くことがあります。アレルギーや鼻詰まりが原因の場合は薬で対処し、蓄膿症が併発している場合はその治療も行います。肥満が原因の場合は、食事管理や運動を生活に取り入れ、適正体重をめざします。患者さんの症状に応じた対応が求められます。