伊藤 陽子 院長の独自取材記事
上溝つつじ糖尿病内科
(相模原市中央区/上溝駅)
最終更新日:2021/10/12
「皆さんが必要とするものを提供でき、毎日勉強させてもらえ、患者さまと一緒に成長できる。医師になって良かったと思います」と語るのは、2020年4月に新規オープンする「上溝つつじ糖尿病内科」の伊藤陽子院長。これまで糖尿病の専門家として数多くの治療に携わってきた。糖尿病の治療は長く続くため患者との付き合いも深くなる。また、家族で糖尿病を患い、家族ぐるみで診療することもあるという。同院でも患者の話をよく聞くことはもちろん、毎回の治療を少しでも新鮮な気持ちで受けてもらえるようさまざまな工夫を考えている伊藤院長に、これまで取り組んできた糖尿病治療のこと、新しいクリニックでの診療に対する意気込みについて話を聞いた。
(取材日2020年3月16日)
充実した療養相談で、患者中心のチーム医療を強化
この場所で開業することになった経緯を教えてください。
当院は愛川町にある「愛川つつじ内科」、同じ相模原市にある「橋本つつじ糖尿病内科」を運営する医療法人芙蓉会の分院になります。糖尿病と一般内科を診療するのですが、糖尿病を中心とした生活習慣病の切れ目ない治療を行うため、糖尿病の専門クリニックが不足している場所を選択し、この場所で開業することになりました。これまでは地域の基幹病院である相模原協同病院で総合内科と内分泌内科で副部長として勤務していました。総合内科は初診で来院される方が多いので、検診や具合が悪い方のほか、がんの方、救急の方など非常に多くの患者さまに関わらせていただきました。とても充実していましたが患者さまの数が非常に多く、外来は2~3時間待ちになってしまうため、私がやりたい診療とはズレが生じてきたと感じておりました。もう少し患者さまの負担の少ない環境で、長く付き合える診療がしたいと思っていた時、当院の院長にと声をかけていただきました。
こちらのクリニックは待ち時間に療養相談を受けられるそうですね。
患者さまには医師である私の診察の前に、「カウンセリングルーム」という部屋で看護師や栄養士のスタッフと面談していただきます。糖尿病の療養指導に長けたスタッフが療養相談を行いますので、待ち時間をストレスなく有意義に過ごしていただけます。当院では糖尿病に関する検査はその日のうちに結果が出せるような設備を用意しており、当日の採血結果を反映した療養相談、診察を受けていただけます。血糖値、ヘモグロビンA1c、尿については当日結果が報告できます。
待ち時間に看護師さんや栄養士さんと話せるのは、時間を有効に使えて、患者さんにとってもうれしいですね。
毎回療養相談ができるクリニックは少ないので、その面からも患者さまに喜んでいただけるのではないでしょうか。糖尿病のような生活習慣病はその方のお仕事の内容や人生の時期によって関わり方が変わってきます。そのため、お話を聞くことはとても大切です。そういう意味でも、看護師、栄養士、医師がそれぞれ治療に関わり一緒に診察に携わることを意識することが必要です。患者さまも療養相談で話した後、診察が始まるまでの時間で思い出すこともありますので、ご自身の情報や知りたいことが整理できるという意味でも良いシステムだと思います。
食事指導中心の診療をわかりやすい言葉で
これからどのような診療を心がけていきたいですか?
患者さまのお顔を見ながらいろいろな話題でお話を伺い、治療へのモチベーションを保ってもらえるように工夫していきたいです。糖尿病の治療は淡々と長く続きますので、飽きることのないように診療では雑談も交えてお話しします。また、専門用語をできるだけ使わず、わかりやすい言葉で説明をしています。絵を描きながら説明することも多いです。そのほうが皆さん理解しやすいようです。
先生の治療では、食事についてのお話が多いそうですね。
糖尿病は食事療法が治療の半分以上を占める病気だと思います。お世話になった先生からも、糖尿病に携わるにあたり食事療法を熱心に指導していただきました。診療の際は、食事の内容や体重を必ず確認するようにしています。私自身、スーパーなど買い物に行った時は、お菓子やお弁当、総菜のカロリーを見るようにしています。外食が多い患者さまには、コンビニエンスストアで選ぶならこの食品がお勧めですよとアドバイスすることもありますし、高齢の一人暮らしの方に惣菜の選び方もお伝えしています。なかなか料理に取り組めない方には平日の夕方だけ宅配弁当を利用する提案をさせていただくこともあります。ただ、地区によって利用できるサービスが違うので、私も糖尿病の患者さまに役立つ情報をいろいろ調べています。
食事の指導は難しそうですね。
いつの間にか食べているというケースが多いので、間食に意識を向けるようにお伝えしています。それから、2つの選択肢から選ぶという指導もしています。間食は1日1回、寝る前3時間を外して80kcal相当という指導することが多いです。80kcalはお菓子の小袋程度なのですが、どら焼きやケーキが食べたい場合300kcalを超えてしまいます。その場合、食べるのを我慢するのか、明日と明後日の間食をなしにして「前借り」するのか、という選択肢を患者さまご自身が持つのです。煙草を吸っていた方の場合、煙草の代わりに無意識に食べ物を口の中に入れていることが多いです。歯磨きをしたりお茶などカロリーのないものに変えたり、食べた物の日記をつけたりなど、その方ができそうな方法を提案して生活に取り入れ、コントロールしていただくようお伝えしています。
印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
認知症の患者さまでどうしても間食がやめられない方がいました。ご家族の方に協力していただいて、食べる場所を決めたり発作的に出る食欲を抑える薬を提案させていただいたり、介護サービスの利用で間食をコントロールしたりと、いろいろな工夫をした結果、改善が見られた方がいて印象に残っています。認知症になってしまうと食事のコントロールも難しくなりますし、お薬の管理も難しくなりますね。ご家族や第三者のサービスの力も借りなくてはいけないので問診を複数の人数で行い、いろいろな視点から見たほうがきめ細かな治療ができると感じています。
患者が最初に相談できる場所になりたい
ところで、先生が糖尿病内科を専門にされたのはなぜですか?
大学卒業後に基幹病院で糖尿病の研究室にいた際、てんかんの発作を何回も起こされてだんだん筋力が落ちてきた若い方がいらっしゃったんです。てんかんを繰り返してコントロールが悪くなると記憶力が落ちてくることがあり、一番強い欲求である食欲に対して本人だけではコントロールが難しくなります。そのような場面でどう関わればいいのかとずっと考えていました。そこから糖尿病の治療に興味を持ちました。ただ、地方の病院にいたため糖尿病だけに取り組むことが難しく、糖尿病と並行して内科を総合的に診ていました。
こちらのクリニックも、総合内科と糖尿病内科を受診できますね。
まずは「どこに行けばいいかわからない」という方を最初に受けとめられる場所になれればと思います。もちろん、内科を受診された方で専門性が必要とされる病気であれば提携先の病院を紹介します。総合的に相談できる場所でありたいです。
休日や診療後はどのように過ごされることが多いですか?
掃除と庭仕事、そして読書です。ガーデニングと言えるほど立派ではないのですが、草花や樹木を育てています。子どもたちも楽しめるようブルーベリーやイチジク、イチゴなどを植えています。本は人情ものが好きですね。空き時間はできるだけ体を動かすようにしています。自分のためだけに体を動かすのは慣れていないので朝晩犬の散歩をしたり、アプリを使ったりします。あとは女性専用のジムに通い始めました。同じ器具でも膝や肩の痛みなど、体の状態に合わせて使い方をトレーナーが提案してくれるんです。とても参考になります。
今後の展望や希望、読者へのメッセージをお願いします。
糖尿病は自覚症状がないこともありますが、早期発見・治療により合併症を防ぐことも期待できます。1年に1回検診を受けていただき、異常があれば受診しましょう。ほかにも何か気になることがあれば気軽にお越しいただければと思います。何かあった時の入り口として、近隣のクリニックや基幹病院の助けを借りながら、慢性疾患の治療に継続的に役立てていただける診療所として、スタッフと一緒に育っていきたいです。