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石黒 秀行 院長の独自取材記事

いしぐろクリニック

(土岐市/土岐市駅)

最終更新日:2022/06/08

石黒秀行院長 いしぐろクリニック main

土岐市駅から徒歩5分、昔ながらの住宅街に立つ「いしぐろクリニック」。「町の保健室として、困ったら何でも相談に来てほしいですね」と温かな笑顔で語る石黒秀行院長の言葉からは、自身が生まれ育った地域への熱い想いがひしひしと伝わってくる。17年の長きにわたり名古屋市立大学病院で消化器・一般外科で研鑽を積み、准教授にまで地位を築き上げたが、育ててもらった地域への思いから、地域医療の道に進むことを心に決めたという。石黒院長に、開業までの経緯や地域への想い、コロナ禍において深まった開業医としての覚悟、またこれからの抱負などを聞いた。

(取材日2022年3月23日)

開業することで生まれ故郷を少しでも活性化したい

まず、医師をめざしたきっかけを教えてください。

石黒秀行院長 いしぐろクリニック1

私は建材屋の息子で、父の後を継ぐことも考えていました。ですが、小学生の時に病気をして入院していたこともあって、材木を担ぐといった力仕事はできないかもしれないと思ったんですね。そんな中、入院先の病院で、小児科の先生や看護師さんが優しく接してくれて、医師の仕事に憧れを持ちました。小学1年生はほとんど学校に行けてなかったのですが、その時の担任の先生が野口英世の伝記を持ってきてくれて、小さい頃に大けがを負って障害があっても、医師になった人がいるんだよと言ってくれたことも大きなきっかけです。さらに高校1年の担任の先生に進路について背中を押してもらい勇気づけられました。振り返ってみると、本当に周りの人に恵まれてここまできていると思います。

開業前、印象的だった出来事はありますか?

消化器外科の医師として17年間大学に在籍していましたが、医師になって3年目の地方の病院勤務時に、ご自宅で患者さんを看取ったことが強く印象に残っていました。家で最期を迎えたいと病院を出られて、在宅医療という言葉もまだ浸透していない時代に往診をしていました。その患者さんが亡くなる時に、ご家族が笑顔で見送られていたんです。ご本人も満足そうな顔をされていましたね。ご家族に号泣されながら病院で亡くなっていかれる方をずっと見てきましたから、そういう死を初めて経験したんです。大学に長くいて准教授にまでなってしまったので、そこから縁遠いほうへ進んでいってしまったんですが、そういった地域に根づいた一人ひとりの患者さんと深く関わる診療をしたいと心のどこかで思っていたんです。

なぜ、地元での開業に踏みきったのですか?

石黒秀行院長 いしぐろクリニック2

大学を辞めて、さあ次はどうしようか、と考えていた折に、同窓会があって地元に集まったんです。土岐市駅にも久しぶりに降りたんですが、昔のような活気がなくて少し寂しく思いました。その時、このまま地元の人たちに何の貢献もしないでいたら後悔する気がしたんです。残りの医師人生、後悔しない生き方をしたいと思いました。町の活性化に自分も何かできることはないか、と考えた末に、地元で開業しようと。まず開業医の先生のもとでゼロから勉強し直しました。親友の整形外科と小児科の医師に頼み込んで、外来を勉強させてもらったりもしました。開業するにあたっては、土岐市はなかなか借りられる場所がなかったんですが、想いを地主さんにお伝えして、快く了承していただきました。その後は友達、先輩、後輩をはじめ、本当に多くの方が親身になって協力してくれて、開業に至りました。ここまでのことを思うと、すべてつながっているんだなと感じます。

骨密度検査や胃内視鏡、PCR検査も導入

得意とされているのはどのような治療ですか?

石黒秀行院長 いしぐろクリニック3

一番得意なのは、がんの診断から治療です。しかし地域医療は基本的に窓口であって、がん治療のすべてを行うことはできません。それならば、がんにこだわらず、窓口を広くしたいと考えたんです。今は専門性に特化する傾向が強いですが、私としてはわからないから別のところに行ってください、ということはしたくなかったんです。それは自分一人で抱え込むということではなくて、まずは窓口になって、わからなければ専門の先生と相談し、必要であればすぐに専門の先生を紹介をするということです。そういう連携や医師同士のつながりも大切に考えています。自分自身も日々勉強で大変ですが、多くの診療科を掲げたのは、地域医療としての入口の役割を担っていきたいという思いも込めています。

検査機器も充実させているそうですが、骨密度検査機器や先生のご専門である胃内視鏡が特徴的ですね。

食道がんや胃がんは自分の専門分野ということもあり、検査機器である胃内視鏡は先進的なものを入れました。骨密度検査に関しても必要だと考えていて、訪問診療をしていた時に、訪問先の患者さんが寝たきりのお年寄りが多く、会話もできてお元気なのに、歩けなくて寝たきりになっていることが多いんです。原因としては骨折が多く、骨粗しょう症を予防することが必要だと痛感しました。骨粗しょう症の予防は、この近隣も高齢の方が多くいるので、力を入れたかったんですね。ですので、大きな病院に入っているような機器を入れました。

開業後、コロナ禍でPCR検査を開始されたそうですね。

石黒秀行院長 いしぐろクリニック4

一般の方より先にワクチンを接種した医療者として、できることはしたいと思ったんです。最初の緊急事態宣言下では情報やデータがあまりに少なく、対応していませんでしたが、その後、発熱のある方を専門的に診察する外来を設け、早期にPCR検査を始めました。不安に感じる患者さんの力になれたと思います。実はコロナ禍で開業前の内覧会もできず、地域の認知度が心配でしたが、そうやって必要とされる検査・治療に取り組んだことで、皆さんに知っていただけたと感じます。この経験を通じて、地域の人が求める医療を提供していこうという決意が深まりました。ワクチンの個別接種もでき得る限り進めていきました。コロナ禍で受診を控える方が多い中での開業でしたが、かえって開業医としての使命感も持てたかもしれません。

ニーズに合わせた診療で地域医療の役割を担いたい

訪問診療にも力を入れているとお聞きしました。

石黒秀行院長 いしぐろクリニック5

先にお話ししたとおり、在宅で末期がん患者さんを診た経験から、開業したらぜひともやりたかったことでした。今は個人宅や介護施設を中心に往診しています。市内は地形的に車がないと通院できない方が多いのですが、一人暮らしで通院の足もないなど、本当に困っている方はご自宅にいらっしゃると感じました。例えば加齢によって免許を手放した方に、とても感謝されたことが印象に残っています。また年老いた親と離れて暮らす働き盛りの子どもさんたちに安心して働いてもらうためにも、訪問によって普段の健康管理をすることの必要性を感じています。また最近は、がんの末期や老衰などで終末期を家で看取りたいという方も増えてきましたので、自分の体力の許す限り、そのニーズに応えられたら、と思います。

オンライン診療も対応しているそうですね。

初診や重篤な症状以外は、オンラインでも対応できるようにしました。この地域の現役世代は、名古屋など比較的遠方まで通勤していることが多く、なかなか午前午後の枠内だけでは通院が難しいことが問題だと感じていました。現役世代こそ、普段の健康管理が大切で、のちの10年、20年に影響してくるので、すこしでも診察する手段を増やしておきたいと思いました。そういった通院の場合、忙しい人にとってオンラインは非常に便利だと思います。さらにコロナ禍で感染を恐れて通院を控えている患者さんのためにも、オンライン対応ができたほうが良いなと。現状ではまだまだ活用されていないのですが、常に選択肢は用意しておきたいですね。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

石黒秀行院長 いしぐろクリニック6

医師として、人として、誰かに頼りにされることは本当にうれしいです。「何かあったら石黒さんのところに行けばいい」と思ってもらえたら、この土岐市に生まれ育った者としては一番の喜びです。育ててもらった地域に恩返しできるよう、自分のできることを尽くして頑張っていきたいですね。専門性はあえて強調せず、窓口として困ったらいつでも来てほしいと思い、「町の保健室」というキャッチフレーズを掲げています。病気の人も健康な人も誰もが気軽に立ち寄れる場所である「町の保健室」として、地域の皆さんの健康を守る窓口でありたいと思っています。

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