西脇 一朗 院長の独自取材記事
RICメンタルクリニック三軒茶屋
(世田谷区/三軒茶屋駅)
最終更新日:2023/03/31
三軒茶屋に位置する「RICメンタルクリニック三軒茶屋」は、心療内科・精神科の専門的な診療を行っている。仕事や人間関係のストレス、発達障害など、心に悩みを抱える人は多いが、まだまだハードルが高いと感じ受診を戸惑う人も多い中、西脇一朗院長がめざすのは、誰もが気軽に立ち寄り相談できるクリニックだ。外来診療のほか外出できない人のための訪問診療や、カウンセリング、ケースワーカーを中心とした就労支援など幅広く対応。「誰もが自分らしく、心身ともに健康で生きがいを持って暮らせるようにお手伝いをしたい」と穏やかな笑顔を見せる西脇院長に、日々の診療についてや患者への思いなどを聞いた。
(取材日2020年2月6日/情報更新日2023年3月31日)
誰もが気軽に悩みを相談できるクリニックに
クリニックを開業された経緯について伺います。
精神科・心療内科の診療にかかる人が増えているといわれる中、特に東京は人が多く、かつ、ストレス度が高い場所であり、うつ病や気分障害でお困りの方がたくさんいらっしゃいます。そういった方のお力に少しでもなれたらと思い、ここで開業することとなりました。開業する前には、名古屋、長崎、横浜で診療をしてきましたが、都心と地方では想定される患者層も違っていて、例えば長崎ですと、統合失調症などの精神病圏で長く苦しんでいる人の比重が高いのに比べ、ここではやはり会社、人間関係、学校などにおけるストレスによるうつ病、気分障害、適応障害の人が多く、改めて地域差を感じています。
クリニックのコンセプトを教えてください。
うつ病をはじめ精神疾患は年々増加傾向にありますが、まだまだ心療内科・精神科は受診に至るまでのハードルが高いため、なるべくハードルを下げた形で適切な医療を提供したいと考えています。クリニック名にローマ字を入れ重々しくないようにしたり、白衣を着用せず緊張感を与えないように工夫をしています。また、ビルの表には看板を出していないので、他の人の目を気にせずに受診していただけると思います。この地域は、企業や大学が多く、その中で日常生活や社会生活に支障を来す人も多い一方で、居宅の多いエリアでもあり、強迫性障害など不安障害、認知症で自宅から出られない人も一定数いらっしゃいます。そこで、当院ではそのような方に向けての訪問診療も行っています。適切なアウトリーチサービスを行うことでまずは外に出ていただき、日常生活の立て直しのお力添えができればと思っています。
診療の特徴はどんなことが挙げられますか?
外来診療を中心に、訪問診療、カウンセリングなど幅広い方法で対応しています。発達障害については心理検査を行い、必要であればご本人に特性を知ってもらった上でのカウンセリングにも力を入れています。また、3月からはオンライン診療も開始します。お薬での治療が必要な場合ある程度の期間を要しますが、忙しくて受診できず自己判断で薬をやめて状態が悪くなってしまう人もいるんです。オンライン診療を利用していただくことで、忙しい人も継続して治療ができればと考えています。就労支援については、ケースワーカーを中心に、さまざまな就労支援所とのパイプをつくって取り組んでいます。皆さん、病気が回復したら生きがいを持って生活をしたい、働きたいという希望をお持ちの人がほとんどですので、それぞれの特性に合った適切な対応へつなげていくことをめざしています。
疾患への理解を深め治療に臨めるよう丁寧な対応を
日々の診療で気をつけていることは?
治療において大切なのは治療の継続と人間関係の構築です。まずは患者さんの話を全面的にお聞きし、病気や治療への理解度を深めていただくための心理教育を行い、同意を得た上で、治療を開始しています。初診時にはケースワーカーや臨床心理士、看護師の事前面接の後に医師の診察に入っていただきます。2段階でお話を聞くことで、患者さん自身がどうなりたいか、どういう目的で来院したのかを明確にし、要望に沿った治療方針を立てていきます。心療内科・精神科の治療について、やはり良いイメージをお持ちでない人も多く、大都会でもまだその傾向が強いと実感しています。だからこそ、初診時には丁寧に説明をし、心療内科・精神科の病気は特別なものではないということを啓発することでハードルを下げていければと思います。
ご家族へのフォローで気をつけていることは何ですか?
どんな病気でもそうなのですが、特に心療内科・精神科の領域では、ご家族が患者さんへの対応に苦慮されるということがあります。そこで、当院ではご家族にも疾患について心理教育をさせていただくとともに、患者さんへの接し方もご教授しています。断片的な知識だけでは対応に苦労されると思うので、まずは病気の状態、なぜ起こっているのか、どんな治療法があって、どういう状態が望まれるのかを最初の段階で共有し、治療を進めていきます。認知症、引きこもり、統合失調症などはご家族が疲弊される例も多い中、患者さんの状態が快方に向かうとご家族も楽になったという声を聞くことがありますが、ご本人だけではなく周囲の人の一助になれると思うととてもやりがいを感じますね。ご家族も一緒に元気になって安心される、それが一番です。
日常生活の中でできる予防法はありますか?
一番は無理をしないということです。皆さん多かれ少なかれ無理はしていると思うのですが、限られたエネルギーの中で無理をしてしまうとどんどん症状に現れてきます。今、働き方改革が叫ばれていますが、長時間労働の実態があらわになる中で、自分の適正な活動量を知った上で行動することが大切だと思います。これは個人の問題だけでなく、人を雇う側の企業にもきちんと病気を知っていただきたいですね。企業もだんだん個人の働き方に目を向ける方向に向いてきていると思うので、今後は働く環境が改善されていくことが期待できるのではないかと思っています。
健康的でやりがいのある生活を送れるようにサポート
どのようなタイミングで心療内科・精神科を受診するのがよいのでしょう?
日常生活を送る中で、誰もが良いことがあれば喜び、悲しいことがあれば落ち込むことがあると思いますが、それがいつもの落ち込みや喜びと違う、毎日のように続く、泣けてくる、意欲が湧いてこない、仕事の効率が下がるなど、日常生活や社会生活に何かしらの支障を来していると感じる段階で、受診していただくのがよいと思います。うつ症状や精神科の病気は客観的には見えにくい部分もあるので、すべて自己判断で構いません。落ち込みや泣けてくるなどの症状のつらさは肉体的な痛みのつらさと同様だと思います。早く気分が楽になれば、その後の経過も良い方向に向かうと考えられますので、早めに受診することをお勧めします。
先生が精神科を選んだ理由は?
もともと、精神科の症状の原因がはっきりとはわかっていないということに興味が湧いたのと、統合失調症の妄想や幻聴など非日常的なことがなぜ起こるのか、そういった疾患を治せたら、本人はもとよりご家族にもたいへん貢献できるのではないかという思いがあり、精神科を志しました。精神科の病気は目に見えないことが面白くもあり難しくもあるのですが、心の状態が悪いと体にも症状が出ますし、うつ病に関して言えば、身体疾患を持っている人の合併率やうつ病の人の身体疾患の合併率も高いとされています。うつ病を治すことによって身体疾患の治療がうまく進められる場合もありますから、心と体の両方にアプローチできるのが理想ですね。精神科では認知症にも対応していますので、若い人からご高齢の人まで、広い年齢層を診られるのも魅力の1つだと感じています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
早期治療を行うことで、長い人生の中で日常生活に支障を来すようなつらい症状から早く回復していただいて、充実した人生を自分らしく生きられるようにお力添えをしていきたいです。世代に関わらず、自然に笑顔が出るような状態を維持できるように早期にアプローチできたらと思います。繰り返しになりますが、やはりまだまだ心療内科・精神科は敷居が高いと感じている人が多くいらっしゃいます。受診のために一歩を踏み出すのは勇気がいるかもしれませんが、心療内科・精神科の病気は誰しもがかかる病気です。悩み事がある際は、ご相談いただき、適切な医療情報や治療を提供させていただいた上で、健康的でやりがいのある生活を過ごせるようにお手伝いさせていただきたいと思います。