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井垣 俊郎 院長の独自取材記事

サンポート高松クリニック

(高松市/高松駅)

最終更新日:2021/10/12

井垣俊郎院長 サンポート高松クリニック main

高松駅から徒歩5分の場所にある「サンポート高松クリニック」は井垣俊郎(いがき・としお)院長が2019年に開業した糖尿病・生活習慣病のクリニックだ。井垣院長は金沢大学医学部在学中は野球にも打ち込んだスポーツマン。卒業後は、複数の医療機関で研鑽を積み、康生会武田病院では糖尿内科部長、まるがめ医療センターでは糖尿病部門長を歴任したベテランドクター。患者一人ひとりの声に耳を傾け、寄り添う医療に注力する井垣院長。生活習慣病の改善には、看護師・管理栄養士・薬剤師たちコメディカルスタッフと患者との相互理解・信頼関係も欠かせない、と力を込める。「これまでのドクター人生でのさまざまな出会いが今につながっていることに感謝している」という井垣院長に幅広いテーマで話を聞いた。

(取材日2021年6月19日)

人が好きだから、トータルで診られる糖尿病診療の道へ

開業して2年だそうですね。開業のきっかけや、めざしたクリニックのイメージをお聞かせください。

井垣俊郎院長 サンポート高松クリニック1

開業のきっかけは大きく2つあります。勤務していた大規模病院では、膨大な業務に追われていて、患者さんのバックグラウンドをゆっくり聞く時間もありませんでしたので、一人ひとりに寄り添った診療をしたいと思ったこと。そしてもう一つは、ある薬剤師さんの存在です。彼女は高校生の時に1型糖尿病を発症して、その後糖尿病の方の役に立ちたい、という志を持って薬剤師を志したそうです。彼女に開業の考えを伝えたところ、当院で勤務すると言ってくれました。そのことも開業を後押しした大きなきっかけでした。クリニックの内装に関しては、私の思っていることを皆さんにダイレクトに伝わる造りにしたいと考えました。院内には掲示板がありますし、院外にも黒板を2つ設置しました。1つの黒板には私が、もう1つにはスタッフがその時々に伝えたいことを手書きで書いています。

先生が糖尿病を専門とされたきっかけは何でしたか?

私が大学を卒業した頃に、心臓のカテーテル治療が始まりました。それまでは救急車で運ばれても、命を落としたり重い心臓機能低下を残したりしていた心筋梗塞が、うまくいけば歩いて退院できる病気になったのです。そのため当時、循環器科はダントツ人気でした。ただ私には何故かしっくり来ませんでした。一方で糖尿病はまだ患者数もそれほど多くないし、良い治療法もないパッとしない領域でした。内科医になろうとは決めていたものの専門を決めかねていた時に、研修医で赴任していた高松日赤病院で糖尿病教室に関わらせてもらうことがあり、テーマが運動療法だったのでそれについて調べてみると、今まで知らなった知識を得ることができました。それでうれしくなりさっそく講義で伝えたところ、患者さんにも好評でした。人をトータルで診ることができる糖尿病内科は、人間が好きな私には向いているのでは、とその時に思ったのがきっかけです。

患者さんはどのような方がいらっしゃいますか?

井垣俊郎院長 サンポート高松クリニック2

当院は患者さんの平均年齢が50歳を切っていて、若い方が多いのが特徴です。糖尿病には、1型と2型がありますが、1型糖尿病というのは、インスリンを作る自分の細胞を攻撃してしまうことで起こる病気で、何かをしたからなる、という因果関係がないことから、なかなか理解されにくい疾患です。当院では、下は小学生くらいからみえます。小学生で糖尿病を抱えるというのは、大変なことです。例えば、治療のためとはいえ、体育の授業の前に一人だけ間食を取ればクラスメイトから心ない言葉をかけられることもあるでしょうし、自分でインスリンを打つというのもつらいことだと思います。そんなとき、患者さんには「あなたは何も悪くないですよ。インスリンを打つことは、視力の悪い方が眼鏡をかけることと同じです」というお話をして、心理面でのフォローも心がけています。

糖尿病治療は「聴く・続ける・待つ」姿勢が大切

患者さんに寄り添うことを大切にされているんですね。

井垣俊郎院長 サンポート高松クリニック3

はい。たとえ大人であっても、検診で異常を指摘されて初めての病院に来るというのは勇気がいると思うんです。糖尿病の病院には合併症を抱えた重症患者さんがたくさん来ています。その方たちに比べると軽症に見えてしまって、医師の中には診察に時間をかけずに投薬して終わり、となってしまうケースもあるのが現状です。2型糖尿病の場合、初期で異常を発見できて適切な治療をすれば、重症化を防げる確率も高くなると考えます。ですから、患者さんの重症度に関係なく、一人ひとりに寄り添うことを私は大切にしています。

そのほかに、普段の診療で心がけていることはありますか?

奈良県立医科大学の石井均先生が仰られた「糖尿病治療には、聴く力・続ける力・待つ力が大切」という言葉はそのとおりだと思っていました。当院の患者さんの中にも、薬さえ処方してくれたらそれでいいという考えの方もいます。本当は、私から伝えたいことがあったとしてもご本人に聞くつもりがない場合には、待つことにしています。こちらにも我慢が必要ということです。その後、身近な人の病気などがきっかけで、考えが変わり、話を聞きたいと思ったときに、「そういえば、あの先生に聞いてみようかな」と気づいてもらえるように、院内にもうけた掲示板などを通してメッセージを伝え続けることを大切にしています。

勤務医時代に印象に残っている出来事はありますか?

井垣俊郎院長 サンポート高松クリニック4

ひと昔前の糖尿病の治療といえば、教育入院をして生活を立て直して食事もすべて一から細かく指導をするというものでした。実は私の祖父が糖尿病患者なのですが、もし自分も糖尿病になったら、こんな指導どおりの生活ができるのだろうか、という疑問をずっと抱えていました。勤務医時代に、とある栄養士さんのお話を聞く機会が持てたんです。その方の指導法は、今までのそれとはまったく違いました。まず、旬の食べ物を使うと味や栄養価も良く経済的であること。そして、患者さんの家族構成も聞いた上で、調理工程のここまでは一遍に作って、その後患者さんとほかの家族とで調理法を分けたら手間が少なく済みますよ、という実践に即したわかりやすいアドバイスをされていて、感心すると同時に非常に驚きました。患者さんの反応もとても良く、コメディカルスタッフの可能性に気づかされた出来事でした。

じっくり向き合い、患者との信頼関係を築いていきたい

先生がやりがいを感じるのはどのような時でしょうか。

井垣俊郎院長 サンポート高松クリニック5

出産をきっかけに1型糖尿病を発症した患者さんなのですが、運動をしなければ、と乳飲み子を抱えながら一生懸命歩いているのに、一向に改善しないとのことでした。成人してから発症したケースにありがちなのですが、その方も2型糖尿病に対する知識で対応しようとしていたんです。正しい知識をこちらからお伝えすることで、理解してもらえた結果、「楽になりました。先生に相談して良かったです」と言ってもらえたときは、うれしかったですね。

診察室が3つあることも、先生の想いを反映されているのですよね。

開業前に勤務していたまるがめ医療センターでは、3つ診察室があって、コメディカルスタッフがそれぞれの部屋に一人ずついました。そこへ患者さんが入っていき、10分間一対一でお話をします。その後、私が診察室へ入っていってさらに5分話をする、という診察スタイルを取っていました。スタッフと私を合わせたら1人の患者さんにつき15分、向き合うことになります。最初は硬い表情だった患者さんも回数を重ねるごとに「実は……」という感じで、いろいろとお話をしてくださるようになるんですね。そうなると適切なアドバイスもできるので、より良い治療につながっていきました。患者さんとの信頼関係を築くことの重要性を感じたこの経験から、当院も同じように診察室を3つ設けています。今はまだ使っていない部屋もありますが、今後は3つの診察室を私が行き来するようになると思います。

今後の展望について教えてください。

井垣俊郎院長 サンポート高松クリニック6

1型糖尿病の方のご苦労と長年向き合ってきた私だからこそできる診療をこれからも続けていきたいです。そして、2型糖尿病に関しては、早期に医療介入することで、投薬なしでの治療や通院の卒業を一緒にめざしていきたいです。そのためにも糖尿病でお悩みの方に、もっと当院のことを知ってもらえるよう発信を続けたいですね。人生100年時代、患者さんの健康寿命を少しでも延ばせるお手伝いをこれからもしていきたいと考えています。

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