齋藤拓実院長の独自取材記事

桑名COCO歯科・矯正歯科

(桑名市／穴太駅)

最終更新日：2021/10/12

桑名市北西部、地元のショッピングセンターやホームセンターの密集したエリアに立つ「桑名COCO歯科・矯正歯科」は今年11月に開院したばかりだ。齋藤拓実院長は口腔外科と一般歯科の治療を行う一方、矯正歯科、麻酔・鎮静担当、審美歯科それぞれの歯科医師も在籍。4人体制で診療に取り組む。四日市市出身で地域医療への想いも深い齋藤院長は、患者とのコミュニケーションを大切にしており、そのやわらかな三重弁が親近感を感じさせる。子どもから高齢者まで幅広い人々の健康を考え、貢献している齋藤院長に、地域医療への思いやクリニックの診療について話を聞いた。

（取材日2019年12月12日）

未来を見据え、地域のニーズに応えられる医療を
大切なのはカウンセリング＆コミュニケーション
人と人との関係を丁寧に積み重ねる

未来を見据え、地域のニーズに応えられる医療を

開業の経緯を教えてください。

愛知医科大学病院で9年勤めた後、縁あって桑名に開業することができました。僕は地元が四日市で、桑名もよく存じ上げておりますので、地元に帰ってくることができて良かったです。今は歯科医院が多く、歯科医療事態も細分化していますので、歯科医師一人でなんでもやる時代ではないと考え、開業するのであれば専門性を突き詰めた先生が集まって治療できる場所をつくりたいと思いました。僕自身は口腔外科が専門ですので、僕が外科と一般歯科を、妻の齋藤夏季副院長が矯正歯科を担当します。また、一緒に手術や研究をしてきた友人の宮本泰周先生は歯科麻酔に従事し、日本歯科麻酔学会歯科麻酔専門医の資格を取得しており、麻酔・鎮静を担当します。静脈内の鎮静法もカバーできるようになったことで、院内で手術も行えますし、治療が極端に苦手な方の鎮静法も提案できると思っています。さらに審美歯科の伯田雅史先生も合わせ4人でやっていく形をとっています。

四日市も候補地ではあったのでしょうか。

四日市では父親が開業していまして、歯科衛生士学校の教員も務めているので、四日市で父の後を継ぐことも考えました。ただ、新しい地域で開業すると、将来的に訪問診療のカバー範囲が広くなるというメリットがあります。郊外とか田舎と言われる地域は、医療の空白ゾーンになりやすく、開業前に高齢者施設にごあいさつに伺うと、歯科医師には月に1回ぐらいしか来てもらえないとの話でした。そこにある要望をくむことで、需要と供給がマッチするのではないかと。それで桑名に決めたんです。もともとは訪問専門で開業することも念頭にあったんですよ。僕の強みは、口腔外科にいたので全身疾患や薬にも詳しいことだと思うんですよね。それで訪問医療を検討していたんですけど、まずは認知された歯科医院を築き、そこを足がかりに広げていくのが大事ではないかと気づいて……。当院が落ち着き次第、訪問診療も始めるつもりです。

開業までに、いろんな想いがおありだったんですね。

高齢化率を比べると都会のほうが急激に上がっていくので、そちらにニーズも高まると思いますが、残されたエリアをほったらかしにはできません。もうすぐ3人に1人は60歳以上になりますし、そういう方々にとって当院が救いになればと思っています。実は開業までに3年かかり、内覧会後には「終わった」という感じになってしまって。これからが始まりなんですけどね（笑）。患者さんはイメージとして高齢者が多いと思っていたんですけど、蓋を開けてみると若い方やお子さんも来てくださっています。内覧会の来場数もかなりの数に上りましたので、効果は感じています。船出としては上々ですね。

大切なのはカウンセリング＆コミュニケーション

めざす医療や歯科医師像はありますか？

当院の内装に関わってくれた友人に「お前の強みは何？」と聞かれたことがあるんですよ。開業にあたり、ほかの人に勝てるものは何なのかと。身近には自費治療専門やインプラント専門でやっている歯科医師もしますし、料金を安価にして人気の歯科医院もあります。でも、そういうことでないとすれば、僕の長所は話すことかなと。話すことはほかの先生より秀でていると思ったんです。歯科治療には「これが正しい」とされる教科書的な答えがありますが、経済的あるいは身体的な理由など、患者さんの事情によってそれが困難な場合もあります。そういった場合、治療の選択肢は教科書的なことの他にもあるはずなので、そこをすくい取れる歯科医師になりたいと思っています。それで「counseling and communication（カウンセリング＆コミュニケーション）」の頭を取って、「COCO」というちょっと変わったクリニック名にしたんです。

NBM（ナラティブ・ベースド・メディスン）、「物語に基づいた医療」を重視されているそうですね。

EBM（エビデンス・ベースド・メディスン）、「根拠に基づいた医療」とも併せて「根拠と対話に基づく医療」をめざしています。例えば、大学病院で患者さんの話を聞いていると、本音を語ってくださることがあります。クリニックで受けた治療について、歯を抜かれたとか、自費ばかり勧められたとか、押しつけられたイメージが強い場合が多いんですね。そんなことをする先生は絶対いないと信じていますし、誰も好きで歯を抜くなんてことはしません。患者さんにとってメリットがあるから歯科医師は歯を抜くわけであって、そう考えると、足りないものは説明だと思うんです。同時に、患者さんからどんどん情報を得る、つまり患者さんの話を聞くことが重要になります。人としゃべるのは好きなので、口だけだと言われないよう頑張ります（笑）。

得意な治療についても教えてください。

僕の専門は口腔外科ですが、非常勤で一般歯科にもたくさん行って、その先々の先生からも多くを学びましたから、一般治療と外科治療が得意ではありますね。研修後すぐ開業歯科医院で勤めると、その先生の癖を受け継いでしまうこともありますけど、僕は大学病院にいたので、逆に平均的なところからレベルアップするためには他の先生のやり方も知っておく必要があったんです。おかげで治療方針も揺らぎません。いわゆる“神の手”は、治療、特に歯科治療には必要ない。患者さんが求めているのは、治らない歯を治してくれる先生ではなく、話し合いで答えを見つけてくれる先生。そういう歯科医師が、今後より重宝されるんじゃなかと。医療全体にとってもそれが大事だと考えています。

人と人との関係を丁寧に積み重ねる

患者さんと接する時に気をつけていることは？

やはり話し方ですね。最初の印象が悪いと患者さんも嫌悪感を抱いてしまいます。まずは患者さんの意見を出してもらうことを心がけていますね。こういったことはほかの3人の先生方とも頻繁に話し合っていて、共有できています。特に宮本先生はいろんな医療機関で同じように勤めてきたので治療方針が似ていて、あうんの呼吸で反応が返ってくるので楽ですね。伯田先生もずっと一緒に勤めたてきた間柄なので、タッグを組むには良いと感じた存在。妻の夏季副院長はもちろん、信頼できる2人の先生は僕にとって大きな支えになっています。

人に恵まれていらっしゃいますね。

そうですね。宮本先生は、歯科麻酔の専門家として当院にとって貴重な人材です。歯科医師なのに歯を削らないという、めずらしい道を選んだ面白い先生ですよ。スタッフは14人採用しました。スタッフが足りなくなると、患者さんへの対応にも限界が出てきてしまいますから。人材は宝なので、たくさん入ってもらって、みんなで同じスタートから向上していければいいなと考えました。そのほうが楽しいし、いろんな意見が出てこれば、より良く改善されていくとも思います。

今後の展望をお聞かせください。

ゴールのある世界ではないので、真面目にコツコツと治療に励み、10年後も20年後も、患者さんを最後まで診られるようにしていきたいですね。また、医療関連書も積極的に執筆してきましたが、例えば睡眠時無呼吸症候群は歯科とも関係します。いびきが原因でよく眠れずに日中の眠気が交通事故を引き起こしたり、呼吸が止まるので心臓がドキドキして高血圧になり、脳梗塞などにつながる。最近そういった傾向が子どもにも見られるんですよ。鼻の病気に起因することもありますが、噛まない食事が増え、顎が小さくなってきていることも原因に考えられます。そこで歯の矯正や矯正治療をする前の体操など紹介して改善できるよう努めているんですが、もっと知らしめていかなければ。歯科医院だけで完結できることは少なくなってきているので、今後は多職種の方々とも連携して、ネットワークを広げていくことが大事だと思っています。