春木 篤 院長、黒田 浩正 先生の独自取材記事
春木レディースクリニック
(大阪市中央区/心斎橋駅)
最終更新日:2021/10/12

大阪・心斎橋のにぎやかな一角、ビルの7階にある「春木レディースクリニック」は、不妊治療と体外受精を専門とするクリニックだ。院長の春木篤(はるき・あつし)先生が「病院らしさを排除することを徹底した」という院内は、大きく窓が広がり、患者同士が目が合わないようプライバシーへも配慮されている。「エビデンス(根拠)にはじまり、ナラティブ(対話)におわる医療」をコンセプトとし、患者との信頼関係を何より重要と捉えている春木院長と、大学病院で手術、研究経験が豊富な黒田浩正先生に、診療方針や内容について話してもらった。
(取材日2019年11月9日)
大学病院から不妊治療専門医をめざしての転身
春木院長が医師をめざしたのはいつ頃ですか。

【春木院長】祖父、父ともに消防士で、「人助けが春木家の家訓」という環境で育ちました。医師をめざしたのは祖父の急逝が大きく影響しています。小学2年生の時、人生で最初に接した悲しい出来事でした。そのときに、人命を奪う病気に立ち向かおうと子どもながらに決心しました。後に医師になるのはこれほど大変だったのかと思い知るのですが、今はまったく後悔していません。
どの診療科に進むか、とても悩まれたそうですね。
【春木院長】医学部の卒業時には科を決められなかったんです。そこで、さまざまな科で研修ができる大学病院に進みました。産科での研修時、産後出血の患者さまが搬送されてきました。応急処置で止血後、ICUで輸血を開始しました。一緒に当直していた上司の体調が悪かったため、術後管理を一任されました。ところが、輸血後も血圧は低く脈拍数だけ上昇するのを見て、「まだどこかで出血している」と考えました。研修医の身でしたが、自己判断で超音波検査をしたところ、発見困難な後腹膜の出血を見つけ、緊急手術に至ったことを今でも鮮明に憶えています。
そこで、産婦人科、そして不妊治療の道へ進まれたのですね。

【春木院長】術後に手術を担当した上司から、「今消えかけている命を救うことも大事だけれど、未来につながる若い命に向き合うことが君には合っている」と言われ、産婦人科へ進むことに決めました。大学病院での産科勤務では救急搬送の患者さまが多く、どうしても出産前後の短期間にしかご家族に関わることができませんでした。大学での勤務が5年たった頃、もっと長い期間患者さまと向き合い、信頼関係を築ける診療をしたいと思い始め、自分の持つ技術、知識を最大限に生かせる不妊治療専門医をめざすことに決めました。
黒田先生が、大学病院からこのクリニックに移られたのはなぜですか?
【黒田先生】僕は、大阪市立大学を卒業後、大阪大学に入局し、関西労災病院や兵庫県立がんセンターなどで勤務していました。大学に戻ってからは、生殖医療もしていましたが、主に婦人科腫瘍の臨床と研究をしていました。婦人科腫瘍では子宮や卵巣を失う方がいましたが、最近では温存できる場合もあります。ただ、温存したとしても、抗がん剤や放射線治療を行う場合もあります。子宮がんや卵巣がんは若い世代にも少なくなく、今後の妊娠の可能性に大きな影響を及ぼします。妊孕性といわれる「妊娠する力」を残すにはどうすればいいのか、また、妊娠が難しい患者さまにできることはないのか、と考えるようになり、不妊治療、生殖医療を専門とする春木先生のもとで、研鑽したいと考えるようになったんです。
「根拠にはじまり、対話におわる医療」で築く信頼関係
このクリニックの開業に至った理由を教えてください。

【春木院長】産婦人科から不妊治療専門のクリニックに移り、副院長を務めていました。数多くの経験を積み、精力的に発表を行ってきました。そんな中、僕の診療を受けたいと思われる患者さまが増え、開業を期待する声も多く聞かれるようになりました。もっと多くの患者さまに僕が考えるベストの不妊治療をより少ない負担で提供したいと一念発起し、開業を決意しました。開業にあたり、たまたまアクセスの良い場所が見つかり、優秀なスタッフが協力してくれたことも大きな要因でした。
春木院長をはじめ、複数のドクターが診療されていますね。
【春木院長】開業当時は僕一人ですべての患者さまを担当していたのですが、予約が殺到したため初診予約が取れなくなったんです。念願の開業がかなったのに、患者さまを待たせてしまうジレンマに悩みました。やはり僕だけでは診療できる患者さまの数には限界があると悟ったのです。そうした中で、当院は多くの患者さまの診療をしながら、同時に不妊治療を行う医師を育成していく社会的使命もあると考え、医師の採用を決めました。
不妊治療にはどのようなプロセスがありますか。

【春木院長】まず重要なのは、妊娠しにくいのかどうかの診断です。1年間避妊をしなければ9割の方が妊娠するとされています。この段階で妊娠しなければ、年齢問わず、妊娠しにくい原因が何かあると考えるべきです。まずは専門的な検査を行い、原因を特定していきます。卵管に問題があれば卵管鏡下卵管形成術を実施し、排卵が難しい場合には排卵誘発を行います。それでも妊娠に至らなければ、体外受精へ進みます。また、週に1度は医師全員でカンファレンスを行い、なかなか結果が出ない患者さまの治療方針を決定しています。
患者との「信頼関係」を大切にされていると伺いました。
【春木院長】「エビデンス(根拠)にはじまり、ナラティブ(対話)におわる医療」をコンセプトとしています。年齢が高いから体外受精、精子の状態が少し悪いから顕微受精、ではありません。エビデンスに基づいて診断し、複数の治療方法からご夫婦に選択していただけるようにします。そして重要なのは、患者さまとの信頼関係です。患者さまと真摯に向き合いながら対話をし、ご夫妻の状況を伺います。また、「痛くない」治療や検査、手術をスタッフ全員が心がけており、寄り添うような治療が信頼関係を高め、治療にも良い影響を与えてくれると確信しています。
不妊治療・生殖医療の発展に貢献したい
患者さんと接する際、心がけていることはありますか。

【春木院長】まず目を見て対話をしながら、患者さまのお話を引き出せるよう心がけています。患者さまのお話を真摯に聴くこと、そして誠意を持ってわかりやすい言葉で十分に説明することがとても大切なことだと思います。
【黒田先生】患者さまが不安や悩みを話しやすいような雰囲気を大切にし、不安を取り除き、妊娠に近づける診療ができるよう努めています。科学的な根拠に基づいた医療を行い、対話を大切にする。大きな病院では、そういったことが難しいこともあります。今はそれが実践でき、とてもやりがいを感じています。
スタッフの方も皆さん親身に接しているように感じました。
【春木院長】看護師、培養士、診療室に隣席する医療クラークなど当院にはスタッフ約60人が在籍し、全員が不妊治療に関する教育を受け、外部講師による接遇研修などにも熱心に取り組んでいます。卒業される患者さまからは「いつも丁寧で親切に対応してくれて感謝している」との声が多く寄せられています。とても頼りになる、優秀なスタッフ陣を僕は誇りに感じています。
今後、取り組んでいきたいことはありますか。

【春木院長】僕が最も望んでいるのは、全国で妊娠される方が増えていくことです。精神的、肉体的、経済的に少ない負担で短期間での妊娠につなげていくという当院のスタイルを全国で展開したいという目標があります。
【黒田先生】春木院長とともに、診療と同時に研究も行っていきたいです。どういう手術や治療が、どんな患者さまに効果があるか。患者さまが最短距離で妊娠できるよう研究を進め、不妊治療、生殖医療を発展させていきたいです。加えて、手術での痛みをさらに軽減できるよう技術を磨いていきます。
受診を考えている方にメッセージをお願いします。
【春木院長】不妊治療と聞くと、痛い検査や治療、そして高額なイメージがあると思います。当院では、患者さまの負担をできるだけ最小限にするようにスタッフ全員で取り組んでいます。半年間、あるいは一年間妊娠されない場合には、何か原因があるはずです。手遅れにならないよう、不安や悩みがある方は、勇気をもって、われわれを信頼して、小さな一歩を踏み出していただければと思います。
【黒田先生】僕自身、実は患者として病院へ行くことが得意ではありません。しかし皆さまには、病院へ行くというより、相談しに行くという気持ちで、当院を気軽に受診していただきたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とは・人工授精/2万円
・体外受精・顕微授精/19万円~
(方法などによって金額の変動あり)
※あくまで目安のため、詳細はクリニックへお問い合わせください。