佐竹 良樹 院長、佐竹 千絵 さんの独自取材記事
こころからだクリニック
(名古屋市千種区/千種駅)
最終更新日:2021/10/12
「心療内科と漢方内科、両方の視点からの治療を提案したい」。そんな思いで佐竹良樹院長が2019年10月、千種駅近くに開院した「こころからだクリニック」。佐竹院長は愛知県内の病院やクリニックで精神科医師として研鑽を積む中で、西洋薬よりも漢方薬のほうが治療がうまく進むケースが一定数あることに気づいたという。そこで、漢方についても学びを深め、心療内科、漢方内科両面から心身の不調を診療するスタイルで開院した。慎重に言葉を選びながら、穏やかに話す佐竹院長。その姿から患者の心と体を真っすぐな目で見つめて診療にあたっていることがうかがえた。今回は、佐竹院長と妻で漢方が専門の薬剤師である佐竹千絵さんに、開業までの経緯や診療方針、診療の際心がけていることなどについて聞いた。
(取材日2020年4月1日)
心療内科、漢方内科双方の視点から心身の不調に対応
こちらはどのようなクリニックなのでしょうか。
【佐竹院長】当院は心療内科と漢方内科のクリニックです。私は大学卒業後、愛知県内の病院やクリニックで精神科医師として勤め、繰り返しの入院が必要な重度の精神疾患の方から軽度の症状の方まで幅広く診療させていただきました。日々外来診療を行う中で、標準的な治療よりも漢方の方が合う方が一部おられること、処方薬依存を防ぐために漢方薬が役立つことを体感しました。それに加え、漢方専門の薬剤師である妻の影響もあって、本格的に漢方の勉強を始めました。そうして、このような心療内科と漢方内科を二本柱とする当院の開院に至りました。心療内科ではうつ病、各種の不安障害、双極性障害、ADHD、統合失調症などを中心に、疾患や症状によっては漢方での治療を行っています。漢方内科では自律神経失調症、月経に関連した不調、更年期症状、冷え症、胃腸の不調から、ときにはニキビなどまで幅広く診ています。
先生が精神科を専門に選んだ理由を教えていただけますか。
【佐竹院長】大学時代には心理学や神経科学に関する本をよく読んでいましたが、その頃は読み物として面白かっただけで仕事にするなどとは考えたことはなかったですね。精神科への興味が大きく膨らんだのは、大学の臨床実習でした。患者さんのお話を1日中飽きずにお聞きして、「どうしてこのような症状がでてくるのか」「どのように声をかけ、どうやって治療するのだろう」と、次々と疑問が湧いたのを昨日のことのように思い出します。友人の精神疾患がわかったことや、私の実家はお寺でしたので仏教哲学への興味などもあって、精神科へいざなわれていったようにも思います。最近の新しい認知行動療法の中核的な要素であるマインドフルネスというのがあって、私は日課として実践しているのですが、実はこれは仏教に起源があるんですね。他にもいろいろありますが、今ではこの道を選んだ必然のようなものを感じながら、日々診療をしています。
漢方の医師としても診療するようになり、開院に至った経緯をお聞かせください。
【佐竹院長】十数年前から妻の漢方の話を聞いていたものの、当初はかなり懐疑的でした。が、精神科の診療を行う中で漢方薬がとても合う方が一定数おられることに気づき、漢方への興味が徐々に湧いてきました。本格的に勉強するようになり、精神科の薬物治療が漢方薬だけで十分なケースが増え、精神科診療に漢方を取り入れるだけではなく、漢方の専門家として幅広く漢方内科の診療に携わりたいと思うようになりました。尊敬する漢方の師との出会いがあり、中医学理論と生薬への理解が深まりました。それによって漢方内科の診療がさらに楽しくなり、自分の診療スタイルができたことにより、心療内科と漢方内科を融合したクリニックを開院するに至りました。
複数の視点とともに、患者に温かく寄り添う
心療内科では、精神科と漢方内科の二つの視点から治療をされているんですね。
【佐竹院長】精神科と漢方内科の両方の専門家であり、それぞれの守備範囲がわかっていることが、私の一番の強みだと自負しています。さまざまな体や心の症状を訴えておられる患者さんに「この疾患は西洋薬の治療をする方がよくて、これらの不調はきっと漢方薬が合いますよ」、「この症状だと西洋薬よりも漢方薬のほうがよいですよ」と、患者さまお一人お一人の不調に向き合い、治療を提案しています。特に、女性は漢方薬が適した不調が混ざっていることが多いので、この両方の視点から診るメリットは大きいと思います。また、処方薬依存と多剤投与の社会問題は漢方を勉強しはじめた理由でもありましたが、今では漢方薬をうまく使うことで、西洋薬が増えにくい、依存に至りにくい治療を実現できています。西洋薬と漢方薬の双方のメリットだけでなく、デメリットも重々心得ているので、その点でも安心して治療を受けていただけるのではないかと思います。
患者さんの良き相談相手の一人でありたいという想いについてお聞かせてください。
【佐竹院長】患者さんは皆不安を抱えて来られますので、いつも安心できるクリニックであり、診察室であるように心がけています。症状の程度とご本人の苦痛や苦悩というのは比例しません。だから、どんな症状であっても初診の患者さんには、「よく勇気を振り絞って、来てくださいました」とねぎらい、治療をさせていただけることをいつも感謝しています。通院中に、人生の岐路に立つ患者さんも多くおられます。精神科医師として臨床心理士として、良き助言者であるだけでなく、同じ時代を生きる者として、人生や仕事、家族のことを一緒に考えていける、良き相談相手として感じていただけるように心がけています。
世間的な評価は捨てて二人三脚で歩むとはどういったことなのでしょうか。
【佐竹院長】人は社会の中で生きていると、知らず知らずのうちに世間の常識にがんじがらめになっていたりするじゃないですか。勇気を振り絞って来院したのに、診察室でも同じような世間的な評価をされたらたまったもんじゃない。だからこそ、診察室では、世間的な評価は完全に捨て去って、ありのままの患者さんを理解する姿勢がとても大事だと思っています。それがないと、良い関係なんて築けない。不調の背景に、今置かれている環境があって、だけれどもさまざまな事情でそこから抜け出すことができないことも結構多い。そういうときこそ、特に二人三脚でなんとか現状を乗り越えていこうとする熱意は欠せませんね。性格的にあまり表には出さないというか出せませんが(笑)。
漢方の医師として、未病の不調全般に対応
こちらでは漢方の医師としてどのような診療をされているのでしょうか。
【佐竹院長】メンタルクリニックの漢方の外来と異なるのは、いわゆる漢方内科の方、つまり未病レベルの体の不調のみの方も診療しているところです。心療内科で西洋薬を処方している方で、たまたま漢方が得意とする不調を発見したときにも漢方薬を処方します。詳しい問診である程度の漢方的な見立てをし、身体診察によって漢方的な推論が合っているかをチェックし、お一人お一人に合った漢方薬を選びます。漢方は多成分複合薬なので、方剤のベクトルが合っているかを各種診察で慎重に見極めています。
漢方専門の薬剤師としての経験をどう生かしていきたいですか。
【千絵さん】漢方相談を通し、女性がより心も体も健やかに美しく凛と生きていくお役に立てる存在でありたいと思って患者さまと接してきました。漢方相談の薬剤師としての十数年の経験を今後はクリニックで生かし、カウンセリング業務、また漢方や薬膳などのセミナー、食養生のアドバイスなどを通し、患者さまのお役に立てればと思っています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
【千絵さん】子育てが一段落したら、漢方を専門にする女性薬剤師が在籍していることをもっとお伝えしていければと考えています。女性薬剤師だからこそできることがあると思うんです。漢方は日々の体調管理や体のメンテナンス、それから産前産後の体調管理にも役立ちます。妊娠中や子育て中のお母さんの相談窓口になりたいので、お子さん連れでも気兼ねなくお越しください。
【佐竹院長】当院の一番の強みは、心療内科と漢方内科の両方から診れることです。ご自身の症状が漢方内科にあたるのか心療内科にあたるのかわからないこともあるかもしれませんが、そこはきちんと交通整理して適切な治療を提供させていただきます。「こんなことで受診してもいいのかな」と思われるようなことでも構いません。お気軽にご来院いただければと思います。