骨粗しょう症合併の可能性も
ひざの痛み、腫れは早めに受診を
そうえん整形外科 骨粗しょう症・リウマチクリニック
(神戸市東灘区/岡本駅)
最終更新日:2025/02/04


- 保険診療
年齢を重ねるとともに膝の痛みを訴える人は多い。60代以降で膝の痛みや腫れがある場合、最も可能性が高いのは「変形性ひざ関節症」だと話すのは、リウマチと骨粗しょう症のエキスパートである「そうえん整形外科 骨粗しょう症・リウマチクリニック」の宗圓聰院長。変形性ひざ関節症は軟骨がすり減ることで痛みや腫れを引き起こす病気だが、早い段階で受診すれば早期の回復が期待できるという。また、軟骨がすり減りかけている患者が骨粗しょう症を合併しているケースでは、骨粗しょう症への治療介入で、軟骨のすり減りの抑制をめざすという。転倒による骨折や寝たきりになるリスクを減らすためには、骨粗しょう症を診断する骨密度検査も重要だ。変形性ひざ関節症と骨粗しょう症の関連性、それぞれの症状や治療方法について、宗圓院長に詳しく聞いた。
(取材日2025年1月8日)
目次
骨粗しょう症の合併が軟骨のすり減りを進行させる可能性も。ひざ関節の痛み、腫れは早めの受診を
- Qひざの痛みで考えられる病気にはどのようなものがあるのですか?
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A
▲骨粗しょう症について話す宗圓聰院長
早い人では50代、主に60代以降で多くなるのが変形性ひざ関節症です。症状のメインは痛みですが、立ち上がった時や歩き始めなど、体勢を変えた時に痛みが生じます。初期症状では歩いているうちに痛みが軽減していきますが、進行すると歩けば歩くほど痛みが強くなります。最初に行う治療は筋肉の強化指導です。筋力が落ちてくると、軟骨のすり減りが進行するため、筋肉の強化でその進行の抑制を図ります。体重と筋力のバランスも重要なので、肥満の程度が強い方には減量を勧め、治療には消炎鎮痛剤やヒアルロン酸注射も用います。軟骨のすり減りが少ない段階であれば、痛みの緩和もスムーズに進むことが期待できるので、早めの受診が大切です。
- Q早めに受診したほうがいい理由について教えてください。
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A
▲骨密度を測定するためにDXA法を導入している
長く痛みを我慢して受診してみたら、すでに軟骨の隙間がない状態、極端に言うと人工関節手術しか治療方法がないという事態になりかねません。また、軟骨がすり減りかけた方が骨粗しょう症が合併していると、軟骨のすぐ下にある骨の強度が落ちている状態ですから、当然、軟骨がすり減りやすくなります。早い段階で骨粗しょう症の治療介入をすれば、ある程度、軟骨のすり減りを抑制することが期待できます。骨粗しょう症は、骨の強度が落ちて骨折の危険性が高くなった状態です。骨が弱くなる機序にはいろいろありますが、一番多いのが女性の閉経後骨粗しょう症で、女性ホルモンの減少が関与しています。男性の場合は加齢に伴い発症します。
- Q骨粗しょう症には何らかの症状があるのですか?
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A
▲骨密度について丁寧に教えてもらうことができる
骨の強度が落ちただけで症状が出ることはありません。サイレントディジーズ(静かなる病気)という言葉がありますが、骨粗しょう症は骨折しない限り症状が出ない疾患です。そのため、本来は検診で骨密度を測っておくことが大切なのですが、検診率は5~10%程度です。閉経後の女性だけでなく、男性も70歳以降急激に骨粗しょう症が増えることがわかっていますから、一度は骨密度検査を受けることをお勧めします。大腿骨の骨密度は20歳をピークに落ちていきます。10代の間に運動や栄養に気をつけることが一番大事ですが、30代、40代でも運動や良い生活習慣を心がければ骨密度が上がりますから、将来を考えて取り組むことが大切です。
- Q骨密度検査について教えてください。
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A
▲早めの検診を呼びかけている宗圓聰院長
骨密度を正確に測る、あるいは治療を開始した後に、骨折リスクが減っているかどうかを判断するためには全身用骨密度検査DEA法を用いることが理想的です。大腿骨近位という場所の骨密度が一番骨折リスクとの関連が高いことから、全身用測定器で腰椎と股関節の2ヵ所を測ります。女性の場合、閉経を迎えて1年経過したら、男性も70歳を過ぎたら、一度は全身の骨密度検査を受けましょう。骨粗しょう症の治療は、薬と栄養と運動が基本です。栄養に関しては、魚類やキノコなどビタミンDが多く含まれる食品の摂取を心がけましょう。運動に関しては、体重が骨にかかることで骨密度が上がるので、歩くことが一番良いですね。
- Q骨粗しょう症の治療の流れについて教えてください。
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A
▲検査をしている光景
まず骨密度を測り、数値が70%以下になると骨粗しょう症と診断されます。すでに骨折があるなど、決められた基準に合致した場合は薬による治療を開始します。開始する際は、血液検査で骨の成分であるカルシウムやリン、ビタミンD濃度などを測り、骨を溶かしている速さ、骨を作る速さの確認が必須となります。骨粗しょう症の治療薬は、カルシウムやビタミンDなどを補充するための薬、骨を溶かすスピードを抑え込むための薬、骨を作るスピードが落ちている、あるいはすでに重症で背骨が何箇所も折れている人に対して使う骨を作るための薬、の大きく3種類あります。採血をしてどの薬が適しているかを見極めることがとても重要です。