高田 弘幸 院長の独自取材記事
たかだこどもクリニック
(海部郡大治町/春田駅)
最終更新日:2024/06/07

国道302号西之川交差点近くにある「たかだこどもクリニック」。パステルカラーと木目調のデザインが程良く調和した建物が目印となっている。優しさがにじみ出る高田弘幸院長は長年にわたり、名古屋第一赤十字病院や津島市民病院などで子どもたちと向き合ってきた小児科医療のスペシャリストだ。特に小児神経疾患のてんかん治療に多くの経験を持つという。「私たち医療スタッフはどんなときでも子どもたちの味方です」と語る高田院長に、医師としてのこだわりや小児科医療について話を聞いた。
(取材日2021年6月3日)
地域に密着した小児科医療の必要性を感じ開院
まずは、先生が医師をめざしたきっかけを教えてください。

実は私、一度工学部を卒業しているんです。でも、自分がやりたいことと少し違うな、という気がしまして……。そんな時、もともと小さな頃から「自分の病気のことを知りたい」「家族の病気を自分で治したい」と医学への興味があったことを思い出し、直接的に人の役に立ちたいという思いから一念発起。医学部を受験し、合格することができました。少し遠回りをしましたが、医療業界一辺倒ではなく工学部を経由したことで、一般的な感覚を強く持てているのではないかと思っています。
小児科を選ばれたのはなぜですか?
研修医になった当初は外科医になりたいと思っていましたし、自分に一番遠いと思っていたのが小児科でした。それまで子どもと接する機会もありませんでしたしね。でも、いろいろな診療科をローテーションし、小児科で子どもたちと接するうちに「かわいいな!」「楽しいな!」と思う時間が増えていきました。とても充実感があったのも覚えています。そして幸運なことに多くの恩師に巡り合い、小児科の楽しさや奥深さ、難しさを教えていただいたことで今があると思っています。
長年、勤務医として活躍されていましたが、開院に至った経緯を教えてください。

小児神経疾患を専門としており、入院しているお子さんの治療にじっくり取り組む必要性が高かったこともあり、長く病院に勤めてきました。一方で、てんかんをはじめとする小児神経疾患は、大人になるまで治療を続けなければならない症例が多く、地域密着型の診療の必要性を感じていました。ちょうどそんな時、親御さんから「開院して引き続き診てくれませんか」という声をいただいたのです。自分の力が発揮できて、皆さんのお役に立てるならと思い、開院を決めました。多くの不安を抱える親御さんが、ずっと私に診てほしいと思ってくれていたことに喜びを感じましたね。
どのような点で勤務医との違いを感じていますか?
勤務医時代は小児神経疾患が専門でしたし、目や鼻の病気は眼科や耳鼻科に任せていました。一方開院後は「何でも」診ていますね。発熱や下痢などの一般的な小児疾患、喘息やじんましんなどのアレルギー疾患が多いですが、打撲や骨折なども含め主訴は多種多様です。医療は日々進歩しますので、今も毎日が勉強だと思っています。乳児健診や予防接種の重要性を理解されている親御さんも多く、おかげさまで乳児から小学生まで幅広く診させていただいています。
子どものペースに合わせた「丁寧な診療」を
医師としてのモットーや大切にされていることはありますか?

「どんなときでも子どもたちの味方」がモットーです。目の前にいる子どもに、できるだけのことをしてあげたいという気持ちを大切にしています。言い換えると「丁寧な診療」ですね。ただ丁寧な診療はどうしても時間がかかってしまい、患者さんをお待たせしてしまうこともあります。ここにジレンマを感じていますが、丁寧さは譲れませんね。愛情が伝わればわかってくれると信じていますし、人と人とのつながりを大事にしています。また、若い頃に恩師から「親が緊急だと思ったら、緊急なんだ」と教えられました。私も研修医に「まず親御さんの言うことに耳を傾けなさい」と語ってきました。医師が元気そうだと思っても、親御さんから見ると違うこともある。そんなちょっとの違いに病気が隠れていることも多いのです。ですから少しでも不安があれば、遠慮せずに来院してください。一番長くお子さんを見ていて、理解しているのは親御さんなのですから。
診療の際の工夫や心がけていることは何ですか?
意外かもしれませんが、目を合わせると泣く子どもが多いので、初診では注視しないようにしています。しかし、診察前は「どこが痛い?」、診察後は「どうだった?」と子どもに直接話しかけることが大切です。来院時は警戒していても、コミュニケーションを取り続けると、最後にハイタッチしてくれるなど少しずつ心を開いてくれます。そういう関係になれば、次回からは楽な気持ちで来てくれる子どもが多いと思います。また、喉を見せるのを嫌がる子どもも多いですね。ですから、「あーんして」「べーして」といった声かけを工夫しています。小さな子どもでも、痛くないことがわかれば口を開いてくれるようになるものです。いずれにしても、子どもたちのペースに合わせて気長に待つことが大切です。
医師としての喜びや患者さんとのエピソードがあれば教えてください。

私が専門とする小児神経疾患は、一生患者さんとお付き合いしていったり、医師として悔しい思いをたくさん経験したりする分野です。その分、治療を終えられそうだとなったときは達成感に満たされます。医師になって本当に良かったと思える瞬間ですね。脳炎や脳症など重い病気に何年も悩まされ、親御さんとの相談を繰り返しながら治療したような子どものことは今でも顔を覚えています。また、開院するからと他の先生に診療を託したお子さんもいるのですが、今でもどうしているか気にしていますね。
健康状態で重要なのは元気があるか、ないかだと考える
こちらのクリニックならではの強みを教えてください。

スタッフ全員が「子どものため」を一番に考えていることですね。スタッフの多くは勤務医時代に一緒に働いていた仲間で、私が開院しているのを聞きつけて来てくれた者もいます。長年の付き合いで気心の知れた仲なので、アットホームな雰囲気だと思います。「どんなときでも子どもさんの味方」ですし、子どもの扱いはさすがだと思いますね。やはりスタッフあってのクリニックだなと思い、感謝しています。また、機能性を重視した空気清浄機やウイルス除去を図るオゾン発生装置を設置するほか、発熱患者専用ルームを設け動線を分けるなど衛生管理を徹底しています。発熱患者用の部屋がふさがっている場合はお車で待っていただくなど、他のお子さんへの感染がないよう工夫していますので、小さなお子さん連れの方も安心して来院いただけると思います。
開院してから約5年がたちましたが、何か思うことはありますか?
開院して約5年たった今、地域の方々からの信頼を得ることができたのか、ありがたいことに患者さんの数が増えているんです。近隣にお住いの方に限らず、隣の市からも足を運んでいただきうれしく思っています。一方それによって待ち時間が発生したり、予約が取りづらかったりしてしまい、申し訳ない気持ちも抱いています。しかし、これからも患者さん一人ひとりを丁寧に診療することを大切していきたいと思っていますので、ご理解いただけますと幸いです。また、再診の方で同じ症状の診療をご希望される方で、ウェブ予約が取れなかった場合は、お電話いただければ可能な限り対応させていただきますので、遠慮せずにお問い合わせいただればと思っています
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

子どもの健康状態については「熱があるか、ないか」を気にされる方が多いと思いますが、一番重要なのは「元気があるか、ないか」だと考えています。多くの小児科医師が提唱しているのですが、なかなか浸透していかない印象がありますね。どうしても熱を基準にしがちですが、ぜひ今後は意識を変え、元気の有無を重視していただきたいです。だから私はいつも「熱がなくても元気がなかったら必ず来てください」とお伝えしています。数値で測れる熱と違い、元気があるかないかは親御さんにしかわからないと思いますので、少しでも気になることがあれば、「これくらい……」と思わずにすぐにご来院ください。診察して何もなければ、それに越したことはありませんので、どんなに小さなことでもお気軽に。友達感覚で来ていただけるクリニックが私の理想ですからね。