睡眠時無呼吸症候群と
家族性高コレステロール血症の治療
さわやま内科・総合診療クリニック
(福岡市南区/西鉄平尾駅)
最終更新日:2024/03/15
- 保険診療
その名のとおり、寝ている時に無意識に呼吸が止まる状態を繰り返す睡眠時無呼吸症候群。少し呼吸が止まるくらいなら、大したことではないと安易に考える人は少なくないのではないだろうか。一方で、生活習慣病の一つに挙げられる高コレステロール血症もよく耳にする病名だが、「家族性」とつくと病気の性質が一変する。「さわやま内科・総合診療クリニック」の澤山泰典院長は、「どちらも早期発見が重要で、ほぼ自覚症状がないだけに、病気に気づかずに放置してしまうと命に関わる合併症を引き起こす原因となるので注意が必要です」と警鐘を鳴らす。これらの治療を専門的に行う澤山先生に、病気の特徴やリスクなどについて詳しく聞いた。
(取材日2022年3月6日/情報更新日2024年3月8日)
目次
病気の向こう側にある合併症の防止をめざし、早期発見・早期治療に力を尽くす
- Q睡眠時無呼吸症候群は肥満などの体型に関係があるのですか?
-
A
確かに肥満の方はなりやすい傾向にありますが、それよりも骨格の遺伝が原因で発症するケースが多いのが実情です。睡眠時無呼吸症候群の大半は、鼻腔や喉を含む上気道の閉塞によって起こりますが、家族に既往歴がある方は骨格が似ており、この閉塞を起こしやすいため、発症しやすいことがわかっています。代表的な症状は、睡眠中の「喉いびき」や 日中の強い眠気。一般的な「鼻いびき」とは区別されます。睡眠時無呼吸症候群は自分では気づきにくく、家族の指摘がきっかけで受診される方がほとんどですが、放置すると高血圧症や心筋梗塞、不整脈、脳卒中といった合併症を招き、場合によっては突然死につながる危険性もあるので要注意です。
- Qこちらでの専門的な機器による検査や治療法について伺います。
-
A
まずは問診で症状を確認後、閉塞を起こしやすい上気道であるかを診察します。その後、専用の機器で鼻の通り具合を客観的に測定する鼻腔通気度検査のほか、携帯型の装置で睡眠中の呼吸状態や心拍数、酸素飽和度などを調べる自宅での簡易検査とアンケートによるセルフチェックを実施。これらの結果を総合的に判断し、疑いの強い方は院内での精密検査を行います。治療方法は2通りです。軽度の患者さんには気道を確保するためのマウスピースによる処置を実施し、重度の方には鼻から空気を送り込んで気道を広げるため、CPAP(シーパップ)療法を行います。この際、当院では睡眠の質に考慮し、専門の技師による空気圧の精密な調整を行っています。
- Q精密検査の流れや検査後の対応について教えてください。
-
A
睡眠時無呼吸症候群には、閉塞性、中枢性、混合型の3種類があります。それぞれ治療法が異なるため、種類の特定が精密検査の目的の一つです。また、周期性四肢運動障害やブラキシズム(歯ぎしり)といった睡眠障害を併発している場合もあるので、当院ではこれらの有無も同時に調べています。検査時間は夜8時から朝6時まで。高級セミダブルベッド、バス、トイレ、テレビを備えた院内の個室で1泊し、各検査装置をつけて眠った状態で実施します。睡眠中は技師が別室のモニターを見ながら検査の状態や安全性を厳密に管理しています。検査後は前述の治療と併せて、当院では合併症を予防するための定期的な胸部や腹部のエコー検査を行っています。
- Qご専門である家族性高コレステロール血症の特徴は何ですか?
-
A
家族性高コレステロール血症は、遺伝によっていわゆる悪玉といわれる「LDLコレステロール」が増加してしまう病気です。両親のどちらかが、この病気を招く遺伝素因を持っていると高い確率でその素因を受け継いでしまうとされています。家族性高コレステロール血症は、動脈硬化の進行を早めたり、心筋梗塞のリスクを高めたりする原因となるため、注意が必要です。特に若年期は症状がなく、血液検査で見つかるケースがほとんどです。また、一般的な高コレステロール血症の方は、不健全な生活習慣が大きな原因と考えられ、糖尿病や高血圧を併発する可能性があるので、栄養のある食事や適度な運動といった生活改善を心がけましょう。
- Q家族性高コレステロール血症の治療や注意点について伺います。
-
A
家族性高コレステロール血症の診断のポイントは、血液検査の数値異常、家族の既往歴、各部の黄色腫の3つ。これらの検査や診察で病気が見つかれば、投薬治療が有用です。早期発見・早期治療を行うことで、合併症のリスクの軽減も見込めるため、少しでも早く特定することが何より重要です。一般的な高コレステロール血症と違って、10代で診断がつくケースも珍しくなく、特に家族歴がある方は、まずは近くの医療機関を受診することをお勧めします。家族性高コレステロール血症は生活習慣病ではないですが、アルコールはLDLコレステロールの増加に影響するので、飲酒は控えたほうが良いでしょう。