上杉 達也 院長の独自取材記事
おとなとこどもの仙川泌尿器科
(調布市/仙川駅)
最終更新日:2025/05/16

京王線仙川駅から徒歩4分。メディカルモール1階にある「おとなとこどもの仙川泌尿器科」は、大学病院で研鑽を積んだ日本泌尿器科学会泌尿器科専門医である上杉達也院長が2019年に開業した。その名のとおり老若男女、さまざまな泌尿器科疾患の悩みに対して専門的な診療を提供する。特に夜尿症については、院長自身が悩んだ経験を生かし、患者の気持ちに寄り添った診療を実践。「泌尿器科を受診するのはハードルが高いと感じる人もいるでしょうが、日常生活に悪影響が出る前に、早めに相談してほしいですね」と話す。気さくで話しやすい上杉院長の人柄や、明るく開放感のある院内は、訪れた人の緊張をほぐしてくれそうだ。同院の診療のポリシーや上杉院長の思い、夜尿症への取り組みなどを聞いてみた。
(取材日2025年4月10日)
泌尿器科専門医が、経験を生かした診療を提供
大学病院で長年にわたり研鑽を積んだそうですね。

大学卒業後は地元である岡山大学病院やその関連病院の泌尿器科に長年勤務してきました。大学病院勤務時代には、密封小線源治療の研究にも携わり、博士号を取得しています。密封小線源治療とは放射性物質を病巣に当てることで、体の内側からじわじわと治療していく治療法です。泌尿器科領域においては、前立腺がんの治療にも用いられます。ご縁があって2017年に東京都の久我山病院に勤務することになり、たくさんの手術をこなしていたのですが、次第に「もっと早い段階で患者さんを救える外来診療に取り組みたい」と考えるようなりました。たまたま久我山病院にも比較的近い仙川で良い物件が見つかったこともあり、開業を決意したのです。
泌尿器科全般を幅広く診療しているそうですが、どのような患者さんが多いですか?
近隣にお住まいの方が来院されることが多く、患者さんの年齢層は小さなお子さんから高齢の方まで幅広いです。また専門的な泌尿器科診療が当院の特徴ですので、インターネットでリサーチして来院される方もいらっしゃいますね。私が得意としているのは前立腺肥大症などの前立腺の病気ですが、その他にも腎臓・膀胱に生じる泌尿器科疾患、女性の急性膀胱炎、頻尿や尿漏れ、お子さんの包茎、尿失禁、夜尿症など、さまざまな症状を診ています。
先生が日々の診療で大切にしていることをお聞かせください。

患者さんにリラックスしていただけるように、なるべくフランクに話しかけるようにしています。特にお子さんには怖がられないように気をつけていますね。「泌尿器科は受診しづらい」というイメージを少しでも払拭できるように、クリニックのネーミングも優しい雰囲気になるように工夫しました。当院では性別や年齢を問わず、患者さんのプライバシーにも配慮して診察していますし、どんな検査が必要かは事前にお伝えしますので、安心して来院してほしいですね。
患者の気持ちを重視した夜尿症の治療
夜尿症とはどういった疾患ですか?

夜尿症、つまりおねしょの原因は諸説ありますが、確定的なものはまだわかっていません。私自身は、他の疾患が隠れているケースを除けば、夜尿症は膀胱機能の発達の過程で起こる疾患と考えています。赤ちゃんがハイハイを始めたり、言葉を発したりする時期に個人差があるように、おねしょをしなくなる時期もお子さんによって異なるのです。成長とともに自然治癒する場合が多いですが、おねしょはお子さん自身の自尊心が傷ついてしまいますし、不安を抱く親御さんも多いですので、放置すべきではありません。成長して夜尿症を卒業するまでの間に、少しでもおねしょの頻度を減らすことが、お子さんの自尊心を守るためにも大切だと考えています。一般的には、5歳を越えても週に1回以上おねしょをしてしまう場合は夜尿症の治療対象といわれています。しかし、そういった定義にしばられず、少しでも「どうにかしたい」と感じたら受診してほしいですね。
夜尿症にはどのようなアプローチをするのでしょうか?
当院では、抗利尿ホルモン療法といって、尿を濃縮させるためのホルモンを補うことで夜間の尿失禁を抑えることをめざす治療や、アラームトレーニングを取り入れています。アラームトレーニングとは、少しずつ尿意覚醒の感覚を身につけていくために、おねしょをした瞬間にアラームを鳴らしてお子さんを起こす、といった訓練方法です。このトレーニングにはおむつのようなパッドにセンサーとアラームが取りつけられた専用装置を使用します。当院ではお子さんや親御さんの生活、おねしょの頻度に合わせ柔軟に対応しています。親御さんには、夜尿症はあくまでも疾患である点を念頭に置いてほしいとお話ししています。もしおねしょをしても叱らないであげてくださいと。夜尿症は先ほどふれたように発達過程で起きる疾患でもあり、適切な処置をすることで発達の促進につながるといわれています。あまり深刻になりすぎず、気軽に受診していただきたいですね。
国内製のおねしょアラームの開発にも携わったとか。

大学病院に在籍していた当時、アラーム療法の装置は海外製が主流でした。海外製品となると、オンオフの切り替え一つとっても、どうしても操作性が日本人になじまないんですね。また、コード式でしたので、寝る時にコードが体に当たって気になるという声も患者さんから聞いていました。そこで、操作がわかりやすくてコードレスな国産のアラームを作ろうという話になったのです。その際ヒントになったのが、人工透析で使用されるアラームです。透析中に針から血が漏れるとアラームが鳴る装置があるのですが、そのメカニズムをおねしょアラームにも応用できると考えました。そして、透析出血感知センサーを製造している企業さんと協力して、アラームを開発したという経緯です。当院をはじめ、現在もさまざまな医療機関で使用されています。
大人の夜尿症にはどのような治療を行っているのでしょうか?
大人の夜尿症の要因はさまざまですが、中でも睡眠時無呼吸症候群が原因のケースが多く見られます。睡眠時無呼吸症候群は、10秒以上の無呼吸状態が1時間に複数回起こる疾患です。正常に呼吸ができていない状態で寝ているので、睡眠自体が重労働になります。そのため尿がたまっても尿意覚醒に至らず、また膀胱の無抑制収縮が妨げられて正常に尿をとどめておけなくなり、失禁につながるのです。夜尿症に何かアプローチするというよりも、原因となる睡眠時無呼吸症候群の治療を通じて、夜尿症の改善をめざします。大人の夜尿症は、原因となっている疾患の見極めが重要となります。
地域のかかりつけ医として患者をサポートしたい
専門のクリニックを受診する重要性は、どういったところにあるとお考えですか?

例えば膀胱炎はよく知られた病気ですが、膀胱炎とよく似た症状を引き起こす別の疾患も多く存在します。自己判断や一般の内科での診察により「膀胱炎」と診断されたものの、実際は膀胱炎ではなかったということも珍しくありません。また前立腺がんでは、ずっと検査を受けずに発見が遅れ、腰が痛いと思って受診してエックス線を撮ったら、既にがんが腰の骨まで転移していたというケースもあります。こうした誤解や病気の発見の遅れを防ぐためにも、専門の医師に診てもらうことがとても大切です。体内の不調はまず内科を受診するケースが多いと思いますが、症状が治らない、なんとなく不安ということがあれば気軽に泌尿器科へお越しください。
今後の展望をお聞かせください。
今後は夜尿症の治療にもっと力を入れていきたいですね。夜尿症は他人に相談しづらく、また「だらしない」「水分を取りすぎるからだ」など、周囲の理解を十分に得られないケースもまだ多く見られます。先ほども述べましたが、お子さんの成長の仕方にはそれぞれ個性があり、多様なパターンがあります。夜尿症の卒業までの道のりもさまざまです。励ましながら治療を行い、お子さんや親御さんがうまく疾患と付き合っていけるよう、サポートしたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院は老若男女問わず泌尿器に関する検査と治療を丁寧に行い、患者さんが快適な生活を送るためのお手伝いをさせていただきます。地域の皆さんのかかりつけ医となれるよう、これからも一人ひとりの患者さんに合わせた治療を柔軟に行っていきたいですね。泌尿器科疾患は早めに対処すれば、大がかりな治療は不要なケースも多くなっています。夜尿症や排尿障害など、気になる症状がある方は、恥ずかしがらず気軽に相談してみてください。