川添裕子院長の独自取材記事

眼科クリニック大久手

(名古屋市千種区／今池駅)

最終更新日：2025/01/22

活気あふれる今池駅と吹上駅のちょうど真ん中辺り、環状線に面した医療ビルの3階に「眼科クリニック大久手」がある。白木の明るい内装に、やわらかなオレンジとグリーンがあしらわれた院内は、ほっと心和む雰囲気だ。川添裕子院長は「患者さんの気持ちがほぐれるように温かみのある院内にしました」と話す。トラブルなく手術ができるように、清潔度にも徹底的にこだわったという。白内障や緑内障の手術をはじめ、視力維持や回復のために常に新しい方法を取り入れている川添院長に、クリニックの特徴や「見える」ことの素晴らしさについてなど語ってもらった。

（取材日2021年11月18日／情報更新日2025年1月6日）

「手術」に憧れ、物心ついた頃から医師をめざす
白内障や緑内障の治療に力を注ぐ
「見える」ことで、人生を豊かにしたい

「手術」に憧れ、物心ついた頃から医師をめざす

医師をめざしたのはいつ頃からですか？

物心がついた頃にはもう医師になりたいと思っていました。普通は体を切ったら傷つくものなのに、それで病気を治すなんてすごいなと素朴に感じていたのを覚えています。そこから迷うことなく医学部へ進みました。特に眼科手術は鮮やかで、患者さんが感動してくださるんです。見えることで行動が積極的になり、行動によって考え方や性格も変わる方を何人も見てきました。お年を召した方であれば、見えることは認知症の予防にもなるのではないでしょうか。眼科の治療は直接命を救うものではないけれど、生活の質を上げて豊かにするものだと感動し、それで眼科医の道を選んだのです。

どんな想いで開業されたのでしょう？

「自分の手で手術をしたい」という想いです。関東や名古屋の病院などで勤務医や院長として経験を積み、たくさんの患者さんに向き合ってきました。そこから、この仕事の奥深さに気づくとともに、きちんとした設備や体制で手術のできるクリニックを作りたいと思ったのです。特に術後の合併症のリスクを極限まで減らし、トラブルなく手術を終えられるよう、清潔度にはこだわりました。手術室を陽圧にする設備を整え、微細な埃などを取り除くHEPAフィルターも設置。大学病院の手術室と同等レベルの清潔度だと自負しています。それでも合併症感染のリスクをゼロにできないのが現実の臨床ですから、もし合併症になってもフォローできる体制を敷いています。また、お子さん連れで来院できるよう、広めのキッズスペースも設けました。

先生の診療におけるモットーは何ですか？

白内障や緑内障の手術はもちろん、他の診療でもトラブルが起きないことをめざしています。そのためには正確かつ最新の知識も必要でしょう。患者さんと意思疎通する上で行き違いや誤解がないよう、すべてのトラブルをなくすべく注意しています。看護師や視能訓練士、医療事務スタッフとしっかり連携し情報共有しているのもその一環です。スタッフ一同で勉強会などに参加し、新たな知識・技術の習得に努めています。知見を患者さんに還元して、より質の高い医療を提供できたらと考えています。診療では患者さんのお話をよく伺い、誤解がないよう状況を正しく把握することも大切にしていることですね。当院のスタッフは皆非常に優秀で、患者さんへの心配りも素晴らしいです。私には話せないこともスタッフになら話せる場面もあるでしょう。ちょっとしたことにも丁寧に向き合い、どんなトラブルも起こさないようにと思っています。

白内障や緑内障の治療に力を注ぐ

白内障の手術に力を入れてらっしゃいますね。

基本的に年を取れば皆白内障へと向かっていきますから、誰にでも症状が現れる可能性があります。物がかすんで見えるといった理由でご来院いただく方が多いですね。残念ながら何もせずにいれば症状が良くなることはないので、手術をするのであれば体力的な面からも決断は70代までが良いと思っています。手術自体は10～30分ほどで終わる日帰り手術です。準備を含めても1～2時間ですので、体への負担は少ないでしょう。当院ではリカバリー室を設けており、術前・術後にお休みいただくことも可能です。手術後はご自宅での点眼と通院が必要です。日帰り手術とはいっても不安はあると思いますので、合併症のリスクやフォローについても事前にきちんと説明し、少しでも安心していただけるよう気を配っています。

白内障の治療で使われる多焦点眼内レンズについて教えてください。

多焦点眼内レンズは、遠距離と近距離、遠距離と中間距離と近距離など、複数の場所にピントを合わせる機能を持ち、単焦点の眼内レンズより裸眼で見える範囲が広がることが見込めます。近年では老眼が始まる50代～60代の方の選択が多いですね。多焦点眼内レンズの白内障手術は2020年から選定療養となりました。手術自体は健康保険が適用され、多焦点眼内レンズの費用の自己負担額も減るので、より選択しやすくなったのではないでしょうか。術後の見え方の選択肢が増えたともいえるでしょう。診療の際は患者さんのご希望をよく聞くことを大切にしています。術後にどういう人生を送りたいのか一緒に考えた上で、その方に一番合ったレンズをご案内できるように努めています。お困り事があればなんでもご相談ください。

緑内障の新しい手術にも対応されていると伺いました。

そうなんです。そもそも初期の緑内障はほとんど自覚症状がなく、少しずつ視神経の障害が進み、視野が狭まっていきます。障害された視神経の機能回復は難しく、治療せずにいれば失明する可能性が高まりますから、早期発見・早期治療がとても大切です。緑内障の進行抑制には眼圧を下げることが重要で、治療では点眼薬や手術が選択肢になります。近年は体への負担が少ない低侵襲の手術が登場し、当院でも早期から積極的な治療法が選択できるようになりました。特に白内障もある方の場合、白内障手術の際に小さく切開する場所から眼内ドレーンと呼ばれる非常に小さな医療機器を挿入する方法で、眼圧を下げることが期待できます。この方法は従来の低侵襲の緑内障手術よりさらに負担軽減が見込め、毎日必要な点眼薬の種類が減らせる場合があることもメリットでしょう。早期発見のためにまずは検査を受けていただきたいですね。

「見える」ことで、人生を豊かにしたい

弱視の子どもの視力回復について教えてください。

適切なタイミングで適切な訓練をすれば、ある程度まで視力の回復が期待できるでしょう。具体的には、小学校の低学年ぐらいまでの時期に、弱視のほうの目だけで物を見るトレーニングを行います。当院には視能訓練士がおりますので、弱視などのご相談もお受けすることができます。ただ、そもそも幼少期の子どもの視力を測定するのはなかなか難しいという問題があります。きちんと見えているか確認できないと検査にならないですからね。そこで親御さんに気にかけていただきたいのが、普段のお子さんの物の見方や目の使い方です。横にある物を首を振って見る、遠くで手を振っても気づかないといった症状があれば、視力の異常を疑ってもいいかもしれません。不安に思うことはぜひご相談いただけたらと思います。

近視治療にはどういう方法がありますか？

治療法の一つとして、特殊なコンタクトレンズを夜間就寝時に装着し、昼間の裸眼視力を一定時間回復させることをめざす「オルソケラトロジー」という方法を行っています。自費診療ではありますが、通常のコンタクトレンズを昼間に着けるか、専用レンズを就寝時にするかの違いともいえますので、ご検討いただきやすいのではないでしょうか。近年、近視人口の増加や近視の程度の悪化が問題になっており、病的近視の進行を防ぐ意味でも早めの対処が有用です。患者さんの選択肢が増やせるよう、新しい薬の情報など常にキャッチアップしながらさまざまな方法を取り入れていきたいと思っています。今後は小児の近視治療にも力を入れていきたいですね。

先生にとって「見える」とは？

普段意識することは少ないと思いますが、「見える」というのはとても素晴らしいことです。見えないことで苦しみ、生きづらくなっている患者さんをたくさん見てきました。治療を受けられて喜んでいる姿もたくさん思い出せます。いろいろな治療や方法で患者さんを少しでも見えるようにできたら、私にとってこんなにうれしいことはありません。眼科は命に直結するような治療はそうありませんが、目がよく見えることで人生の豊かさは大きく変わります。「見えない、不便、困っている」とぜひ口に出してください。眼科医として、見える世界を取り戻すお手伝いを続けていきたいです。